小金井 宮地楽器ホール 大ホール
● 東京五美術大学管弦楽団とは,「武蔵野美術大学,多摩美術大学,東京造形大学,女子美術大学・女子美術大学短期大学部,日本大学芸術学部の5つの大学を中心に構成された学生オーケストラ」であるらしい。その存在を知ったのは最近のことだ。
知ると俄然,興味がわく。というのも,二宮敦人『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』によると,藝大の美術学部(美校)と音楽学部(音校)ではだいぶ気質が違うらしいのだ。たとえば時間感覚。美校はルーズなのに対して音校はパンクチュアリティであるらしい。美校と音校は道路を挟んで向かい合っている2つの大学,と考えた方がしっくりくるとぼくなんぞも思っている。
● では,美大の学生が発する音楽はどういうものなのか。聴いてみたくなるではないか。つまり,そもそもの興味はこのような下世話なものだ。
しかし,今回の演奏会は現役生ではなくて,OB・OGが演奏するようだ。指揮は諸岡範澄さん。開演は午後5時。チケットは1,000円。当日券で入場。
● 曲目は次のとおり。
J.シュトラウス 喜歌劇「こうもり」序曲
シベリウス アンダンテ・フェスティーヴォ
アンダーソン シンコペイテッド・クロック/タイプライター/ワルツィング・キャット
諸岡範澄 マーチQ
ブラームス 大学祝典序曲
ショスタコーヴィチ 交響曲第10番 ホ短調
● 聴衆も多くが5つの美術大学のOB・OGのようだった。ステージに登場する奏者に客席から手を振る人あり,客席に知り合いを見つけて笑顔を向ける奏者あり。
終演後は,三々五々飲みに行く人たちがけっこういそうだ。そちこちでプチ同窓会が開かれるのではないか。
ということで,何となく自分は場違いなところにいるような気になってきた。
● 「こうもり」序曲を聴いて,巧いのに驚いた。弾むところはポンポンと弾み,流れるところは流麗に流れている。もし「こうもり」を見に来たとして,この序曲を聴けば,このあとに展開する本編を想像してワクワクするだろう。
昔取った杵柄といっても,杵柄を持っているだけではこうはならない。その杵柄を使い続けているのでなければ。卒業後も何らかの形で演奏活動を継続している人たちが集まったのだろうか。
● シベリウスは充分にしっとりしている。ショスタコーヴィチの10番を聴いて,いよいよ驚いた。楽器を操る動作が様になっているという以上にカッコいい。
小さい頃から楽器もやっていて,でも絵も天才的に巧い,と。でもって,音大にするか美大にするか迷った末に美大に進んだ,という人が相当数いるのかね。
● というわけで,かなり巧いアマオケということになるんだけども,美大ならではの演奏というのは,あたりまえなんだと思うけど,特に感じるところはなかった。
アンダーソンの演出が美大的ってことじゃないしね。楽譜を精密に読めるというわけでもないだろうし。つーか,美大的って何だよ,オレよ。
● 唯一,不満が残ったのは,当日券の販売だ。サイトでは16時からとあったので,それに合わせて行ったのだが,実際には16時30分からだった。
30分遅らせた理由がわからない。当日券を手当した後,開演までに1時間あれば,それに合わせた動きを用意できる。30分のロスを強いられると,それが狂う。さらに,その30分を立ったまま待つとなると,その間にできることは限られる。
こういうことに関して,ぼくはかなり不寛容だ。心が狭くて申しわけないのだが。
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