2020年9月16日水曜日

2020.09.13 アンサンブル ディマンシュ 第87回演奏会

 府中の森芸術劇場 ウィーンホール

● クラシック音楽の演奏会については満席にして実施することを容認する方向で,政府が検討中であるらしい。着々と正常化に向けて舵が切られている。
 いずれ,コロナウィルスについての知見が確定し,ここまでの対策や防御方法についての検証がなされるはずだが,飛沫感染にのみ注意すればよく,皮膚感染についての対策は無用であったとされるのではないかと,愚察している。
 まぁ,対策案の決定者と検証者が同一になるだろうから,自身の決定について完全否定するような文章にはなるまいが。

● しかし,現時点ではまだ中止や延期が普通だ。催行を決定するには少々の勇気が必要だろう。それ以上に手間が必要になる。体温測定だの,ホールの座席に着座不可の印を付ける作業だの。
 そうした勇気と手間をかけても催行するというのだから,こちらとしても行かざるべからず。っていうか,生演奏があるなら聴きたいということなんですけどね。4~7月はまったく聴けなかったわけだから,仇を取るといった気分がないわけでもないのだ。


● というわけで,東京は府中市にやってきた。オーケストラ ディマンシュなら二度ほど聴いたことがあるけど,こちらのディマンシュは初めてだ。
 開演は午後2時。入場料は1,000円。当日券もあるにはあるが,できれば前売券を購入してくれとのことだった。さもありなん。が,前売券の購入の仕方がわからなかった。
 で,どうしたかといえば招待券をもらっちゃうことにしたのでした。ので,今回は無料で入場している。

● 曲目は次のとおり。
 バッハ 管弦楽組曲第3番 ニ長調
 ファランク 交響曲第3番 ト短調
 ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調。
 指揮は平川範幸さん。まだ33歳か。指揮者の33歳は若いと言っていいんでしょうね。 

● 4月から毎日が日曜日になったのと,演奏会が軒並み中止になったのとで,CDを聴いてる時間が確実に増えている。
 ベートーヴェンとバッハがメインで,時々,ブラームスとモーツァルトを聴く。その外に出ることはほとんどないようになった。チャイコフスキーもマーラーも絶えて聴かなくなった。
 いいんだか悪いんだかわからないが,グレン・グールドに親近感を覚える。


府中の森芸術劇場
● で,バッハの管弦楽組曲第3番。CDはカール・リヒターのものが多くの支持を得ているようだけれども,ぼくは鈴木雅昭&バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏で聴いている。
 理由があってそうしているわけではない。何もわからないで入手したのがそれだったからだ。他のCDと聴き比べることもしていない。たぶん,これからもしない。


● この第2曲を,後世,アウグスト・ウィルヘルミがヴァイオリン独奏のために編曲したものが「G線上のアリア」として有名になっている。ハ長調に移調するとG線のみで演奏できることからその名が付いたらしいのだが,東日本大震災のあとに「G線上のアリア」が鎮魂歌としてしばしばオーケストラによって演奏された。
 この場合に演奏されたのは,ニ長調の第3番第2曲ではなくて,ハ長調の「G線上のアリア」だったというわけですか。初歩的な疑問で申しわけないのだが,「G線上のアリア」というタイトルはそこまで厳密に用いられているものなのだろうか。第3番第2曲を「G線上のアリア」と呼ぶこともある,ということではなく。


● ファランクという作曲家の名前は初めて聞く。フランスの女性作曲家。プロブラムの曲目解説に彼女の経歴と業績が整理されている。
 その曲目解説によると,第1楽章はシューマンの,第2楽章はメンデルスゾーンの香りがする,とある。ぼくは全体的にチャイコフスキーに近いと感じた。
 もっとも,この曲がパリで初演されたのは1849年だそうだから,そのときチャイコフスキーはまだ9歳だ。

● この楽団では2014年にもこの曲を取りあげており,それが日本初演だろうとのこと。ぼくが知らないのは当然だったわけだ。
 CDはAmazonやタワレコのオンラインストアで手に入るが,巷のCDショップには置かれていないだろう。売れないはずだから。
 そういうものでも2~3日で手に入るんだから,インターネットは素晴らしい。ネット以前には,こういうときはどうしてたんだろう。海外のレーベルに手紙を書くか,ショップに取寄せを依頼するか。それはそれで,届くのを待つ楽しさがあったんだろうかな。

● ベートーヴェンの4番。ベートーヴェン生誕250周年の今年,久方ぶりにそのベートーヴェンを聴けた。文句なしの華でしょうねぇ。交響曲1曲で世界遺産千個に匹敵する。
 この曲はもっぱらカルロス・クライバー&バイエルン国立管弦楽団のCDで聴いている。それで何の不満もないのだが,こうして生で聴けると,得られる情報量がまるで違う。一回性の生演奏に立ち会うことでしか得られない臨場感と視覚情報。
 加えて,コンサートホールは音楽を聴く環境として最上であること。こういうホールで聴くんだったら,然るべき装置でCDを再生するのでも,相当な生感というか,録音音源であることを忘れさせるような臨場感に包まれて聴けるのでしょうね。

● アンコールは「G線上のアリア」。さて,これはニ長調の原曲なのかハ長調に編曲されたものだったのか。

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