彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
● この日はミューザ川崎で開催される,「ヴァールシャインリヒ シンフォニカー」の定演に行くつもりでいた。ブラームスのドイツレクイエム。この時期にこの曲をやるのか。予約入場制というので,チケットを取っておいた。
が,18日に中止することが発表された。こういう状況なのだから,致し方がない。退くも地獄,進むも地獄。どちらを選んでも厳しい。その中で,退く方を選んだということだ。
● しかし,困ったことになった。翌日も東京で開催される演奏会を聴きに行く予定なのだ。しかも,その演奏会は正午開演なのだ。ので,今夜は東京に泊まるつもりで宿も予約してしまっている。
代わりに何かないか。ネットで探してみたらこのピアノ・リサイタルがあった。すぐに “ぴあ” でチケットを買った。
ので,この演奏会に行ったいきさつには,わりと身も蓋もないところがある。申しわけない。緊急措置的なところがあったわけだ。
彩の国さいたま芸術劇場 |
大宮で埼京線に乗り換えて与野本町。家を出るときには降ってなかったんだけども,あいにくの雨だ。マツキヨで傘を買った。傘をさして歩くくらいなら,このまま帰ってしまいたい。そこを押して,着いたところがさいたま芸術劇場。
当日券もあった。空席が目立つのは,こういう時期だから仕方がないだろう。
● 曲目は次のとおり。
バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第18番
リスト バッハのカンタータ「泣き,嘆き,悲しみ,おののき」とロ短調ミサ曲の「十字架に付けられ」の通奏低音による変奏曲
チャイコフスキー 18の小品より “即興曲” “ヴァルス・ブルエッテ” “5拍子のワルツ”
チャイコフスキー ロマンス
ラフマニノフ 幻想的小曲集より “エレジー” “前奏曲《鐘》”
スクリャービン 3つの小品
スクリャービン ピアノ・ソナタ第9番「黒ミサ」
リスト アレルヤ
リスト 超絶技巧練習曲第11番「夕べの調べ」
寺根さんはロシアで勉強されたようで,ロシア産(?)の楽曲が多くなっている。すべての曲に聴かせどころがあるのだろうけど,まずはスクリャービンの9番。
● ウィキペディア教授によると,「黒ミサは,ローマ・カトリック教会に反発するサタン崇拝者の儀式」のことをいうらしいのだが,7番の「白ミサ」はスクリャービンが付けた副題なのに対して,9番を「黒ミサ」と呼ぶのは彼の友人が付けた通称であるとのこと。
「ピアノの難曲の1つとしても有名」というのだけれど,寺根さんが弾くのを聴いて,それを意識できる人はそんなにいないだろう。名手は超絶技巧を超絶技巧に見せないで,軽々とやるから。
● もっとも,超絶技巧を超絶技巧として見せてもらっても,それが超絶技巧である所以をぼくらが,いや,ぼくが,と言い直そう,わかるかといえば,いささか以上に自信がない。
たとえば,辻井伸行さんが「ラ・カンパネラ」を演奏する動画を複数,ネットで見ることができる。指使いを間近に眺めることができる。あれを見てどこまでその凄さに気づけるかという問題。
● そのリストの「バッハのカンタータ「泣き,嘆き,悲しみ,おののき」とロ短調ミサ曲の「十字架に付けられ」の通奏低音による変奏曲」も,今回初めて聴いた。CDも含めて,だ。
リストはそもそもがほとんど聴かない。こうした機会に,少し体系的にリストの音源を揃えてみようか。最近,弦楽四重奏曲は少し聴けるようになってきたと思うのだが,ピアノ曲はこれからだ。
● この曲を録音で聴きたいというのであれば,寺根さんが出したCD「MISSA」を買ってしまうのが話が早くすむ方法かもしれない。
けど,生演奏に2,000円出すのは何とも思わなくても,CDに3,000円を出すのはちょっと躊躇しちゃうケチ根性。少し,ネットをチェックしてみることにする。
● 寺根さん,着席してから演奏に入るまでの間をあまり取らない。横山幸雄さんほどではないけれど。
終わるとさっと袖に消える。あまり思いを残さずに,次に動くタイプのようだ。サバサバした人なのでしょう。
しかし,リサイタルじたいは,しっとりとした演奏会になった。
● 美形が際立つ人だ。「大学院在学中にミス・インターナショナル&ミス・ワールド2012ファイナリストに選出」というのだからハンパない。モデルとしても活動していた時期があるらしい。
これほどの美貌を与えられてしまうのは,ピアニストとして得か損か。あるいは,ピアニストという枠を外して,女性として損か得か。
細節や細々節を切り捨てて,ざっくり言ってしまうと,“やや損” というのがぼくの見立て。「娘は器量が良いというだけで 幸せの半分を手にしている」というのは本当ではない。美人はけっこう大変なのじゃないかと思う。
● こうした演奏会に来る男性が増えた。かつては女性が圧倒的に多かったものだが,最近はそうでもない。
しかし,それにしても。このリサイタルはお客の8割が男性だったのではないか。音楽ファンではなく寺根ファンが集っていたのかもしれないと思いたくなるほどだった。
女性が来ていないという言い方もできる。男性よりも女性を呼べた方が乗数効果は大きいはずで,この点でも “やや損” かなぁ,と。
ちなみに,男の場合。イケメンは損か得か。これは “はっきりと損” というのがぼくの見立てだ。その理由は省略するが,イケメンから遠い相貌でラッキーだったと思ってますよ。
ぼくの地元の栃木県では県立図書館がこの種の催しを実施していて,それらがなかなかの水準であるのはさいたま芸術劇場と同じなのだが,今年はすべての開催を取りやめている。
栃木県では・・・・・・大島清次さんが栃木県立美術館の館長にとどまって長く務めてくれていれば,今とはまったく違う美術館になっていたろうになぁ,と思うことがある。大島さんが辞めた(詰め腹を切らされた)ときには,事の重大さに気づいていなかったけど。
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