2021年12月9日木曜日

2021.12.04 第12回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 国立音楽大学・洗足学園音楽大学

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 今年の音大フェスも今日が最終日(4日目)。通し券を買って皆勤することができた。毎日が日曜日になった爺さまの,大いなる余録というやつでしょうなぁ。
 全席使用で観客を入れている。前方の左右のバルコニー席(厳密にはバルコニー席とは言わないのだろうが)にもお客さんが入っている。おそらく,今回が最高の入りになったのではないか。それでも当日券があるにはあった。

● まず,国立音楽大学。プログラムが異色。何が異色なのかといえば,このフェスではベートーヴェンやブラームス,ブルックナー,マーラー,チャイコフスキーの交響曲など,正統派クラシック楽曲が選ばれてきたからだ。
 ところが,今年の国立はアメリカの近現代を持ってきた。次のとおり。
 レブエルタス センセマヤ
 バーンスタイン 「ウエスト・サイド・ストーリー」より “シンフォニック・ダンス”
 コープランド 「ロデオ」より 4つのダンスエピソード

● 指揮は原田慶太楼さん。選曲にあたっては原田さんも噛んでいたんだろうかね。
 「センセマヤ」は初めて聴く。こういう曲があること自体,知らなかった。今どきだからネットで聴くことはできるとしても,名前を知らないんじゃ検索もできないわけでね。
 ニコラス・ギレンの詩に基づく「蛇殺しの唄」と知って,何となく納得。レブエルタスは芸術家の鏡と言いたくなるほどに後先を考えない生き方をした人なんですねぇ。こういう生き方しかできないから芸術家になった(なるしかなかった)ということですかねぇ。

● コープランドの曲は “「ロデオ」より 4つのダンスエピソード” となっているんだけども,ぼくは “ロデオ=4つのダンスエピソード” なのだと思っていた。
 「4つのダンスエピソード」を部分集合とする「ロデオ」というバレエ音楽があるんですか。CDを探してみるかな。

● 選曲だけではなく,曲間に原田さんのトークが入った。トーク自体はこれまでにもないわけではなかったけれども,これまでのトークは何というかオフィシャルなもので,半分は形作りのためだった。
 客席サービスのトークは初めてではないか。陽性が徹底している人だ。地なのか,心がけなのか。和製バーンスタイン候補の面目躍如。
 学生の気持ちも掴んでいるだろう。といって,学生の気持ちを掴もうとしてこの選曲をサジェストした(と決めつけている)わけではないだろう。そんな下心を持っていては学生に見透かされる。

● こちとら,不協和音を駆使されると現代的と感じてしまう幼稚な感性しか持ち合わせていない。それを畳み込んでくるようにして差しだされると,たとえばストラヴィンスキーを連想してしまう。現代音楽は北米も南米もロシアも似たようなものだな,となってしまう。ストラヴィンスキーが現代かどうかは考えないことにして。
 音楽はすべからく慣れの問題かもしれなくて,何度も聴いていると身体に入ってしまう。

● 洗足学園はサン=サーンスの3番「オルガン付き」。国立のアメリカも楽しかったけど,正統派は落ち着ける。
 いくらぼくでも,この曲はCDを含めて何度も聴いている。ぼくはカラヤンで聴けるものはカラヤンで聴く(例外はあるが)というつまらない男なので,この曲もカラヤン+BPO で聴いているのだが,カラヤンのCDが生演奏に勝ることはあり得ない。
 生の場合は視覚から入ってくる情報があるからだとずっと思っていたのだけれども,たぶんこちらの集中度,入れ込み具合が違うからだ。CDに集中するのは難しいのだ。視聴環境によるとは思うのだけれども,いかに機材を揃えようとCDから流れてくる音に集中できる度合いは限られるような気がする。

● 生演奏だとお金を払っている。会場までの電車賃もかかる。自分の身体を運んでいく面倒さもある。北関東の在から川崎まで行くとなれば,それ相応の時間も要する。
 でもって,同じ目的を持ってやってきた大勢の観客と一緒に聴く。集中するための道具立てが揃っている。ライヴの魅力を支える,それも大きな要素だろうな。

● それなのに,聴いている最中に寝てしまうことがあるのはどういうわけかね。かなり贅沢な睡眠になるよね。お金と手間暇をかけて作りあげた睡眠だな。
 今日は寝ませんでしたよ。聴きましたとも。プロの演奏よりいいんじゃないかと思いますよ。そう思わせるものは何なのか。一期一会感が強いということか。演奏者が込めている “気” が多いということか。

● 指揮は秋山和慶さん。80歳のダンディズム。体型も80歳とは思えないし,服装への気配りも年寄り臭くないし,何より指揮ができるわけだから。洗足学園で若い学生と接しているのも若くいられる理由のひとつですか。
 年齢のせいだろうが何だろうが,いかに赫々たる実績が過去にあろうと,機敏な指揮ができなくなればお払い箱にされる世界にいるわけだろう。その世界でなお第一線に立ち続けているのだから,これはもう怪物でしょうよ。壮年世代の指揮者は何をやっているのかということにもなるんでしょうかねぇ。

● というわけで,今年の音大フェスも終わってしまった。来年3月に9音大の選抜オーケストラの演奏会がある。チケットは買ってある。
 外に出れば冬の短い日は暮れてしまっている。その分,イルミネーションがはえるのだが,日は長い方がいいかなぁ。

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