なかのZERO 大ホール
もちろん,若い人もいるんだけれども,歩行者の平均年齢はだいぶ高い。ぼくも平均年齢を引き上げている一人だけどね。東京でこうなんだから,日本ってほんとに年寄りの国になったよね。
● というようなことを感じながら,会場に到着。Nishi Graduate Orchestra は「都立西高等学校卒業生によるオーケストラ」ということだが,この楽団の演奏を聴くのは,今回が初めて。
都立西高というと,日比谷高校などと並ぶ名門(偏差値が高い)というザックリとした印象しかないが,ウィキペディアによると「校則のない自由な私服校であり,学問を探究するアカデミックな校風である」。この解説は卒業生が書いているんだろうね。
● 開演は午後2時。チケットは1,000円。当日券で入場した。
曲目は次のとおり。ニ長調の曲を並べた。
ベートーヴェン 交響曲第2番
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
指揮は寺岡清高さん。こういう人を指揮者に迎えるほどなのだから,かなりの腕前なのだろうなと思ったのだが,寺岡さんも西高の卒業生であるらしい。
高校で管弦楽部に属し,大学でもオケ活動に明け暮れたとしても,卒業して社会人になってしまえば,使える時間は減るだろう。卒業時の腕前を維持するのは相当以上に難しいのではないかと思うのだが,そういう理屈はあてはまらない人たちなんですかねぇ。それとも,維持するだけなら簡単だよ,ってことなんですか。
● 2番になるとはっきりとベートーヴェンが立ち現れている。他の誰でもないベートーヴェンが,奏者に過重な負荷を強いることなど歯牙にもかけないベートーヴェンが,そこにいる。
そのベートーヴェン像がくっきりと見えるような,そういう演奏だった。という雑駁な印象を記して,次に行こう。
● チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ソリストは金子芽以さん。
彼女はなんと西高の現役生。同時に桐朋のソリスト・ディプロマコースの1年生(特待生)。2年前に全日本学生音楽コンクールの高校の部全国大会で第1位。
● それだけならまぁまぁ,さほどには驚かない(音大の付属校ではなく,普通の高校に通っている生徒が1位を取るのはきわめてレアなケースだろうな,とは思う)。いや,とんでもないことには違いないんだけど。
それだけではなくて,サントリー芸術財団から JEAN-BAPTISTE VUILLAUME を貸与されているという。ここがね,破格ですよねぇ。
● ステージ上の彼女はすでにして完成された一個の淑女。後ろの方の席に座ったので,遠目にはということね。近くで見れば,そりゃ高校生のあどけなさも残しているに違いないけれども,ステージでは神聖にして犯すべからずの淑女感を発している。
他方で,終演後の退場のタイミングを測りかねているような初々しさも発揮したものだから,客席は彼女にKOされまくりだった。
● 若い頃の華々しい活躍がそのままその後を保証するとは限らない厳しい世界ではあるのだろうけれども,そうはいっても,数年後にはしばしば彼女の名前を目にすることになるのだろう。
次々に新しい才能が登場してくる。その才能がわかりやすい形で披露されるから,この世界は百花繚乱の趣に染まる。