2010年10月31日日曜日

2010.10.03 ピアノデュオリサイタル 栃木県立図書館ホール

● 3日(日)は県立図書館のミニコンサートがあった。他のコンサートとかち合わなければだいたい聴きに行っている。
 特にこの日の演奏会は大岡律子さんのもの。昨年も,年に10回程度開催されるこのミニコンサートの中で(ぼくが聴いたのは半分にも満たなかったけど),最も充実した演奏だったのは,彼女の回だった。
 今年も充実の内容。芸大で共に学んだ岡田真実さんとピアノ・デュオ。ピアノの連弾を聴く機会ってあまりない。というより,ぼくは初めてだったのだけど,ピアノの潜在能力をググッと引きだせる奏法なのかもしれない。

● 岡田さんは勝ち気というか,気が強そうな印象。ピアノがとにかく第一で,この軸がぶれることはなさそうだ。自分のやってきたことに確信を持っている。ここを突いてくる人は許さないって感じかなぁ。
 栃木県出身の大岡さんは,穏やかな性格。好きになった人に音楽をやめてくれと言われると,ほんとにやめちゃいそうな感じっていうか。ま,外見と声質からの印象ですけどね。

● 曲目は前半が,モーツアルト「4手のためのソナタ 変ロ長調」,シューベルト「ロンド」,ショパン「ムーアの民謡風主題による4手のための変奏曲」。後半は,シャブリエ「狂詩曲スペイン」,フォーレ「組曲ドリー」,ラヴェル「ラ・ヴァルス」。
 アンコール曲が2つあって,ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」とモーツアルトの「フィガロの結婚」の前奏曲。
 ピアノは比較的短時間でお腹がいっぱいになりやすい楽器だと思うのだが,奏者の腕がいいとずっと食べ続けることができますね。すべて終わったあとも,もっと聴いていたいとの思いが残った。

● 終了後は奏者のふたりが出口に立ってお見送りという,サービス精神たっぷりの演奏会だった。
 こうまでのサービス精神を発揮してくれた理由のひとつは,彼女たちがアンケート用紙を配っていたからだ。アンケートに御協力くださいというわけだが,訊いている項目はごく普通のもので,このコンサートを何で知ったか。演奏時間は適当か,長すぎるか,短すぎるか。演奏に満足したか,不満か。聴きたい曲があれば教えて。
 ぼくもそうだけれど,客席側はよほどのことがない限りは,適当だった,満足した,と答えるはずだ。つまり,アンケートで本音を吸いあげられるとは限らない。実施する側は,そんなことは百も承知で,それでも使い道があるから実施していると言うのかもしれないんだけど。
 ぼくはこの種のアンケートは無駄だと思っている。そもそも,そういうことを客席に訊いているようじゃいかんのじゃないかと思う。

● 彼女たち,来月13日にすみだトリフォニーでコンサートを行う。小ホールでこちらは2千円のチケット制だ。演奏曲目は,今日のとまったく同じ(だから,ぼくらはとてもラッキーだったと言える)。
 彼女たちにしても,今日は模擬試験のようなものだったろう。本番に向けて感触を確かめながら演奏したのだろう。アンケートはその結果を知りたいがためだと思う。

● ふたりとも芸大の院を修了した(岡田さんは院に在籍中にポーランドに留学した)。小さい頃からずっとピアノ漬けの生活を続けてきたに違いない。
 何とか今度のコンサートを成功させたいと思うだろう。その思いはぼくにも理解できるものだ。

● 音楽家への道は厳しい。お金も時間も投入してこの道を進んできたけれども,その投資を回収するのは難しい。そのお金と時間を,たとえば勉強に振り向けていれば,医師でも弁護士でも学者でも,なりたい者になれていただろう。けれども,音楽家をめざしてしまった。
 そうまでして音楽に打ち込みたくなる才能があった。

● そういう人たちがいてくれるお陰で,ぼくらは音楽のライブを楽しむことができるのだ。だから,ぼくらにはそうした人たちを応援する義務がある。でも,ではどうやって応援すればいいのか。コンサートに足を運ぶか,CDを買うか。

● こうした無料のコンサートには,普段は音楽と無縁な生活をしている人たちも入りこんでしまう。ぼくにしたってにわか音楽ファンにすぎない。だから,たとえば寝ている人も出てしまう。
 けれど,終演後,見送る奏者に言葉をかけるのは,こういう人たちのようなんだよね。オバチャンたちなんだけどね。愛想がよくて,奏者に言葉をかけていく。
 嬉しいよね。お客さんから言葉をかけられると。オバチャンたちは言葉によって,奏者を応援している。ぼくに限らず,たいていの男性はこれができない。

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