約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2010年11月30日火曜日
2010.11.23 東京大学第61回駒場祭-東京大学ブラスアカデミー・東京大学音楽部管弦楽団
東京大学駒場Ⅰキャンパス900番教室(講堂)
● 23日も東大の駒場祭へ。
この日の演奏会は2つ。東大ブラスアカデミーと東大音楽部管弦楽団。
駒場祭のプログラムは立派な冊子になっているが,これを無料で配っている。この日が駒場祭の最終日。どんどん配らないと余ってしまう。余ったプログラムなどゴミになるだけだ。だから,入場者にどんどん配る。
のだが,学生さんたち,ぼくにはくれる気配を見せないのだった。声をかければくれるんだろうけどね。ぼくの目的は音楽のコンサートだけで,それ以外には興味がない。それゆえ,プログラムは要らないものなんだけど,やっぱり自分は場違いなところにいるのかなぁと感じさせられて,少し気落ちした。
● 12:45からブラスアカデミーの演奏会。吹奏楽である。東大吹奏楽部が少数の東大男子学生と多数の非東大女子学生で構成されているのに対して,こちらのブラスアカデミーは東大純正。五月祭では聴く機会がなかったので,今回が初めてになる。
吹奏楽と管弦楽は楽器編成が違う以上にまったくの別物ですね。吹奏楽は軍楽隊がルーツですか。管弦楽は古代ギリシアの演劇の伴奏に発するらしいんだけど,中世の宗教音楽の流れも汲んでいる。そこから現在の管弦楽につながっているんだろうから,出自が違いますよね。
ステージと客席の距離も吹奏楽の方がずっと近い感じ。客席側もノリを要求されるところも管弦楽とは大きく違う。ジャンルが違うという感じ。
● ブラスアカデミーでは演奏会ごとにテーマを決め,それによって演出を考えるのだそうだ。今回のテーマは「世界旅行」。それゆえ,取りあげた曲目は,Made in Europe,At The Mambo Inn,The Lion King,We're all alone,Orient Expressの5曲。演奏は間違いなく高位安定。安心して聴いていられる。
ブラスアカデミーの演奏会で初めて立ち見客が出た。吹奏楽ってぼくが思っている以上に人気があるんですねぇ。
● 次は音楽部管弦楽団なんだけれども,2時間の空き時間がある。駒場キャンパスをウロウロするのはちょっと抵抗がある。っていうか,ぼくがウロウロしては申しわけないかもっていう思いがある。大学祭は若者の祭典。ロートルは目立たなくしているべし。
で,近辺を歩いてみた。近代文学館や日本民藝館が近くにある。この辺は戦災を免れたのだろうか,車が何とかすれ違えるくらいの道路に駒場通りという名前が付いている。地名でいうと,駒場3丁目,4丁目あたりですね。
道の両側には立派な邸宅が並んでいる。閑静な住宅街と形容される場所がらなのだろう。お金持ちが集まっているようだ。BMWが無造作に置かれていたり。
でも,凄いなとは思ったけれど,羨ましいとは不思議に思わなかった。ここに住むかと訊かれたら,答えはノーだ。なぜかと言われると説明に窮するんだけど,何とはなしに住みづらそうな感じといいますか。
● 15時半から東大音楽部管弦楽団の演奏会。これだけは通常のコンサートと同じ時間が確保されていた。特別扱いという感じがする。15時ちょうどの開演だと勘違いしていたもので,14時半には駒場キャンパスに戻った。
ら,すでに長蛇の列ができていた。ディズニーランドの人気アトラクションよろしく,蝶ネクタイの男子団員が「最後尾」と書かれた立て札を手にして立っていた。その最後尾に付いたが,果たして入れるだろうかと不安になってきた。ぼくの後にも次々に並ぶ人がやってきて,列は長く長く延びた。
● ぼくは何とか座れたが,当然にして立見客も現れた。しかも大勢。女子団員が声をからして前から順に詰めて座るようアナウンスしていた。皆,知っているんだと思う。この楽団の演奏は立ち見であっても聴くに値する,と。
● ただ,駒場祭では1~2年生の団員だけで演奏するのが習わしになっているらしい。下級生のデビューコンサートというわけだ。
コンマスは理科Ⅱ類の男子。いわゆるイケメンに属する。芸能人を思わせる無造作な(しかし,手入れはきちんとしている)長髪。もちろん眼鏡なんかかけちゃいない(コンタクトはしているに違いないが)。細心の身体にヴァイオリンがよく似合うこと。弾く姿勢も良い。体を動かすその動きも様になっている。
頭が良くて,容姿が良くて,小さい心から楽器を習えるほどに裕福な家に生まれて,自分を知って流行を追う余裕があって。持てる者はすべてを持っているのだ。これじゃぁ,持たざる者は救いがない。自分を納得させる引っかかりすら見つからない。
● セカンドヴァイオリンのリーダーは理科Ⅲ類の男子。受験の頂点に立つ男。そのくせ,パートリーダーを取るほどにヴァイオリンを弾きこなす。おまえたち,色んなものを持ちすぎじゃないのか,と僻みたくなってくるなぁ。
女子団員もしかり。美人で屈託がない。陽気で明るいんじゃないかと思われる。東大に合格できたうえに美人なんだよ。東大オケで演奏できるほどに楽器も旨いんですよ。それで只今現在も無邪気に人生を謳歌しているようなんですよ。
● 曲目は次のとおりだった。
ベートーヴェン 「エグモント」序曲
シベリウス 「カレリア」組曲
ブラームス 交響曲 第2番ニ長調
1~2年生の演奏ではあっても,しっかりと東大音楽部管弦楽団のDNAが受け継がれているようだ。
巧いオーケストラは見た目も美しい。この東大オケ・ジュニアも美しかった。若い生命力の躍動を感じさせてくれた。
拍手を惜しまないことが客席のマナーのアルファにしてオメガだとぼくは心得ているが,そうした心得がなくてもここは拍手が涌き起こったはずだ。
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