2013年7月17日水曜日

2013.07.15 山岸淳子氏講演会-「第九」その魅力と歴史

宇都宮市文化会館 小ホール

● 山岸さんは,芸大楽理科を卒業して,日フィルに入団。スタッフとして日フィルの運営に携わってきた人。
 その彼女が「第九」についての講演をするというので,聞いてきた。

● 主催は宇都宮第九合唱団事務局。毎年,年末に宇都宮市文化会館で「第九」演奏を催行している。最近は,というかだいぶ前から,オーケストラは日フィルが務めている。その縁で,彼女に話をしてもらうことになったのだろう。
 一般開放されていたのでぼくも聞くことができたんだけど,聴衆の多くは宇都宮第九合唱団のメンバーだったようだ。山岸さんも,「聴衆=宇都宮第九合唱団のメンバー」の前提で話をした。

● 開演は午後6時半のところ,10分ほど遅れて始まり,8時前に終了。レジュメ等の配布資料はなし。VAIOのノートパソコンでパワーポイントを使用。
 ベートーヴェンの一生を簡単に振り返り,「苦悩」から「歓喜」に至るその至り方を説明。ドミソの短長和音をピアノで聴衆に聞かせながら,話を進めた。音楽構造の話ってことになりますか。
 スライドには同主調だとか平行調なんていう用語も載ってたんだけど,その辺はごくサラッと。難しい話はしない方針だったようだ。こちらとしてはありがたい。聞いてもたぶんわからないから。

● ぼくの歳になると,話の中身もさることながら,話し手の声質がまず気になる。耳障りな声だと,いくらいい話でも,聞かなくてもいいかと思ってしまうっていうか。声じたいに反発してしまうっていうか。
 年寄りは何かと我慢が効かなくなるものなんですかねぇ。これから自分の心身で実験していくことになるんだけどね。
 山岸さんの声は聞きやすいんでした。これならOK。声をはじいてしまうっていう反応はしなくてすんだ。

● はるかな昔,岩波文庫の『ベートーヴェンの手紙』を読んだことがある。まったく何もわからなかった。あたりまえだね。ベートーヴェンの生涯について知識皆無,楽曲もほとんど聴いたことがないという状態で読んだんだからね。
 今読めば,多少は染みてくるところがあるのかもしれないんだけど,読む気にならない。はるか昔の無味乾燥だった記憶が残ってしまっているので。
 ものごとには順序というものがありますな。順序を間違うと後々までひびくということね。

● 講演が始まる前に,事務局のスタッフが聴衆に対して,「第九」を1楽章から通して聴いたことがある人はどのくらいいるか,ベートーヴェンの9つの交響曲をすべて聴いたことがある人はどのくらいいるか,と訊ねた。挙手を求めたんだけど,こういうのに正直に答える人はどのくらいいるものか。
 という前提でなんだけど,両方とも少なかったんですよねぇ。意外なほど少なかった。合唱団として「第九」のステージに立てば,少なくとも「第九」については自動的に全楽章を聴くことになると思うので,これは別にしても,9つの交響曲をすべて聴いた人は,実際,あまりいないのかもしれない。
 交響曲以外のピアノソナタやヴァイオリンソナタ,協奏曲や弦楽四重奏曲になると,さらに少なくなるんだろうね。だからダメってことにはならないはずだけどさ。

● 宇都宮第九合唱団による演奏会は,今年も年末に開催される。管弦楽はもちろん日フィル。指揮は高関健さん。ソプラノが森麻季さん,テノールが錦織健さんという豪華版。
 ぼくは一昨年に飯森範親さんの指揮のときに聴く機会を得た。わりと早めにソールドアウトになるようで,なかなかチケットが入手できないという印象がある。特に,西本智実さんが指揮するときは,はなから諦めることになる。
 ぼくが聴いた前の年には,ピエタリ・インキネンが指揮者だった。2009年から日フィルの首席客演指揮者に就任している人で,若手ながら将来はベルリン・フィルの指揮者になるかもしれない逸材だとは,山岸さんの弁。

● 合唱団の皆さんは,講演終了後に練習をするという。今回は33回に及ぶ練習を重ねて本番に臨むのだとか。うーん,たいしたもんだ。33回のすべてに参加できる人は,そうはいないのかもしれないけどね。

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