2013年7月14日日曜日

2013.07.13 宇都宮大学管弦楽団第75回定期演奏会

宇都宮市文化会館 大ホール

● この楽団の演奏会に来る人の多くは,招待状を持つ人たちだ。多くのアマオケがそうしているように,アンケートに答えると,次回から招待状が送られてくる。タダで入場できるんだから,わざわざお金を払ってチケットを買う必要はない。
 ぼくも長らく招待状で入場してたんだけど,今回はチケット(当日券)を購入した。

● 大学オケだとカンパ制のところも多い。最初から無料にして,終演後にカンパを募る。それだと安心してタダで聴けるんだけど,ここではカンパ箱などは置いていないのでね,どうしたものかとちょっと落ち着かないでいた。タダで聴くのって,あまりいい気分のものじゃないんだよねぇ。
 かといって,せっかく手間ひまかけて送ってくれた招待状を使わないのも,申しわけないかなぁと思うし。どうしたものか,と。
 が,今回は,チケットを購入してみましたよ,と。聴いている間,この方が据わりが良かったですね,やはり。

● ということで,開演は午後6時。チケットは800円(悩むほどの金額じゃなかった?)。
 プログラムは,チャイコフスキーの「スラヴ行進曲」とラフマニノフのピアノ協奏曲2番,それにベートーヴェンの5番。

● チャイコフスキーの「スラヴ行進曲」を生で聴くのは,今回が二度目。低弦部隊の何事ならんと思わせる響きから始まるわけですね。
 音楽大学ではない普通の大学の学生が,学業のかたわらの部活で(実際には部活のかたわらの学業なんだろうけど。当然,それでいいとぼくは思ってますけど)ここまでのレベルで仕上げてくるんだからね。堅い言葉でいえば,敬意を表しますってことね。

● 緊張過多だったかと思われるところもないではなかった。でも,それによってかえって清新さが強調されることがある。音が損なわれる度合いと清新さが表現される度合いとを天秤にかけたら,さてどちらが大きいか。
 ここは聴く人によっても意見が分かれるだろう。ぼくはこれもありだと思うんだけど,そういうことも含めて,ライヴは演奏する側にとっても生きものなのだろう。
 ミスが結果的にミスにならないことがある。あるいは逆に,巧いがゆえに何かが欠けてしまうこともあるかもしれない。だからこそのライヴだ。
 間違いのない安定した演奏を聴きたいのであれば,1千万円程度を用意して,オーディオ環境をそれなりに整えたうえで,ゆったりとCDを聴くのがいいだろう。

● ラフマニノフのピアノ協奏曲2番。ソリストは犬飼まおさん。武蔵野音大の2年生だから,まだ19歳か。赤いドレスで登場。
 腕前については,ぼくが語る範疇を超えている。感心したのは終演後の所作だ。何度かお辞儀をしてから舞台の袖に去っていく。そのタイミング,逡巡のなさ。
 去って行くときのドレスを摘んで歩くその歩き方。こうすれば最もきれいに見えると知っているかのような。おそるべき19歳。
 って,あれですか,女性はみんなそんなものですか。

● メインはベートーヴェンの5番。ゆっくり目のテンポで(いや,これが普通か)丁寧に曲を表現しようとしていた,という印象。
 宇大OB・OGオーケストラでコンマスを務めていた石堂さんが,OB賛助でステージ上にいた。他にも,OB・OGの俊英がアシストしていたようで,弦にはちょっとやそっとではビクともしないと思わせる安定感があった。
 木管もそれぞれ出番があって,それぞれが健闘していた。その中でしいて勲一等を選ぶとしたら,今回はオーボエの1番。できるんだねぇ,ここまでねぇ。

● なんだかんだいっても,ベートーヴェンの5番は途方もない曲だ。人類共通の財産だと思う。そういうことをわからせてくれる演奏だったということ。
 弓の角度が一斉に変化するところなど,オーケストラって見た目にも美しいものだと,感じさせてももらった。そうしたことも含めて,聴く側(のひとり)としては,かなり満足度の高い演奏だった。

● 指揮は北原幸男さん。貴族的な顔立ちですな。冷静沈着が服を着て指揮棒を振っているという感じね。実際のところは,冷静沈着だけで指揮者が務まるとは思えないので,ぼくには窺えないいろんなものがあるはずだけどね。
 派手なパフォーマンスをまじえて,大向こうの受けを取りに行くなどということは,彼には無縁。きっちりと指揮を詰めていく。玄人感濃厚。っていうか,玄人も玄人,大変な玄人であるわけですが。

● アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第5番。ここでもきっちり盛りあげて締めた。
 その後に,北原さんが犬飼さんをステージに呼んで最後のご挨拶。彼,武蔵野音大の教授でもあるから,学生である犬飼さんに,終わるまで着替えないで待ってろよ,と言い含めておいたんでしょうね。いかな指揮者といえども大御所のソリストにそんなことは言えないだろうけどね。
 それとも,終演まで着替えないでいるのがマナーというか,そういう慣わしなんですか。

0 件のコメント:

コメントを投稿