東京芸術劇場 コンサートホール
● 栃木の鬼怒川温泉は東京の奥座敷と言われたりするんだけど,こういうのって相対的なものでさ。ぼく的には東京が栃木の奥座敷だと思ってるわけね。東京を後背地として持っているのが栃木の強みだな,と。
奥に座敷があるんだから,必要に応じて使えばいいんだよね。奥にあるものを全部,自分のリビングに持ってこようとしちゃいけない。散らかるだけだから。こちらから奥に出向くのが効率的。
東京っていう奥座敷は,じつにどうも使いでがあってね。便利なものだ。
● ともあれ。音楽大学オーケストラ・フェスティバルの2回目。今回は武蔵野音楽大学と昭和音楽大学。開演は午後3時。
● まずは武蔵野音楽大学。演奏するのはショスタコーヴィチの交響曲第10番。
生で聴くのは初めて。っていうか,恥ずかしながら,CDでも聴いたことがなかった。ショスタコーヴィチの15曲の交響曲の中でも,かなり評価が高いものであることは承知しているけれども,ほんとにぼくが聴いてるのは真砂のひと握りにすぎない。
でも,初めて聴いたのが,今回の生演奏だったことは,むしろラッキーだったかも。
● さすがは音大で粒が揃っている。この粒が揃ってることの心地よさを味わえた。
フルート,ピッコロ,オーボエ,クラリネット,ファゴットの木管陣とホルン。何気に出番が多いんだけど,すぐに安心して聴いていられることがわかった。ホルンに不安がないことが大きい。
● 指揮は北原幸男さん。指揮者って体力も要るし,運動神経,特に反射神経,が優れていなくちゃいけない。音楽や楽曲の勉強だけしてたって,ダメなんでしょうね。カラヤンもクライバーもスピード狂だったってのを思いだした。それくらいじゃないと務まらないのかも。
というようなことを,彼の指揮を見ていて感じました。北原さんもたぶん,身体の鍛錬を怠っていないんでしょうね。
● 演奏が終わると20分の休憩。この間に,交代の準備をする。終わった武蔵野音大は撤退。楽譜や打楽器を片づける。当然,学生がやる。
女子学生が上体を反らしてコントラバスを運んでいく。そんな様子がなんだかいじらしくてねぇ。
● 昭和音楽大学はチャイコフスキー。交響曲第4番。
第2楽章冒頭のソロをはじめ,オーボエが重要な役割を担う。その2楽章のソロにしても,単純に息継ぎをどうしてるんだろうと思った。循環呼吸? ではないと思えたけど。
で,このオーボエが際だっていた。重責を担うに充分。
ファゴットの茶髪の女子も存在感を放っていた。彼女,一緒に酒を呑んだらとても楽しい子じゃないかと思えたんだけど,外見で判断するなと叱られるかなぁ。
● 指揮はマッシミリアーノ・マテシッチ氏。若く見えた。実際の年齢は40代の半ば。
これなら文句なしに女性にもてるだろうと思わせる風貌ってありますよね。たとえば,ベッカムとかさ。マテシッチ氏はそうした風貌の持ち主。
● 清新で熱いチャイコフスキー。熱いだけでいいなら,たいていのアマチュアオーケストラはやってのけると思う。そこに確かな技術の裏打ち。
これ,プロのオーケストラにやってみろといっても,たぶんできないんじゃないか。若い彼らにしかできない演奏だ。
2階席で,至福ってこういうことかもなぁ,と思いながら聴いていた。750円の至福。
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