● 今年最初の演奏会は,すみだトリフォニーで迎えた。アウローラ管弦楽団の演奏会を聴くのは二度目。
一昨年の9月に「第5回室内演奏会」に行っている。ロシア音楽に特化した,若い奏者で構成されている楽団という印象だった。
● 開演は午後1時半。チケットは1,000円。当日券を購入。
曲目は次のとおり。今回もすべてロシア。
リャードフ 交響詩「魔法にかけられた湖」
スクリャービン 法悦の詩(交響曲第4番)
リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」
● 指揮は田部井剛さん。一昨年10月の足利市民交響楽団のマーラー2番の指揮も田部井さんだった。昨年7月のル スコアール管弦楽団も。田部井さんの指揮を見るのは,それに続いて三度目。
● プログラムに掲載されている代表者あいさつによると,「結成以来の5年間で,団員として在籍して去って行ったメンバーは実に70名を越えてい」るとのこと。
「今回の定期演奏会のメンバーで演奏するのは本日が最後の日です」「練習でなかなか上手くいかなかったソロが近づくにつれ緊張で表情がこわばる,演奏後に指揮者に立たされて感極まる・・・,そういった一つ一つの表情の裏に,私たちなりに頑張ってきた「過程」が詰まっています」と書いている。
そうだろうなぁと思う。競争激甚な東京で,ひとつのオーケストラを結成,維持していくのは,大変なことだろう。その程度の想像はぼくにもできる。ゆえに,こうして感傷にひたる自由は当然認められるべきだ。
その感傷もドップリベッタリではなく,きちっと抑制が効いているので,充分以上に読ませる文章に仕上がっている。
● スクリャービンといえば,神秘主義かぶれという言葉がついて回る。Wikipediaには「ニーチェ哲学に心酔し,とりわけ超人思想に共鳴する。その後は神智学にも傾倒し,この二つから音楽思想や作曲に影響を受ける」とある。今回のプログラムの曲目解説でも,その方向から詳しく解説されている。
が,それらの知識を持たないで,かつまた「Le Poème de l'extase」という曲名を知らないで,この曲を聴いたとしたら,果たして法悦なるイメージを自分が持ったかどうか。「神との合一」あるいは「性的快楽にトリップしていく様」をこの音楽から感じとれたかどうか。ぼくにはまったく自信がない。
● プログラムには「スクリャービンの残したノート」と題するコラムが掲載されているんだけど,ここに掲載されているスクリャービンの発言は,密教の教義を連想させるもので,さほどに唐突だとも思えない。
● 曲目解説に,「第4番「法悦の詩」に至って,彼の神秘主義傾向は決定的になり」「最後の第5番「プロメテウス」は,もはや通常の人間には理解不可能な領域」とある。
で,その第5番を帰宅後,CDで聴いてみた。まぁ,理解できないわけだ。けれども,これって「理解」の定義による。
何が言いたいのかというと,この曲が理解できないのと同じように,ぼくにはストラヴィンスキーもマーラーもベルリオーズも理解できないもんだからね。理解するって,そもそもどういうことなんだか。曲を聴くのに理解が必要なのかなとも思うし(理解しないと味わえないか)。
● 「シェエラザード」はコンマスのヴァイオリン・ソロがやっぱり大きいですよね。何せ命がかかっているわけだから気を抜いてはいられない。かといって,王をその気にさせるトークじゃないといけないんだから,固くなってもダメだ。
そこは楽譜になっているわけだろうけど,今回のコンミスは切なく歌って,情感にあふれていたという印象。
● あと,タンバリンが記憶に残ったんですけどね。何気にかっこよかったしね。
タンバリンとかトライアングルとか,誰が叩いても同じはずがないもんなぁ。ひねりの余地はそんなにないと思えるんだけど,深さってあるんでしょうね。それと姿の良さってあるよね。
● にしても。千夜一夜物語からこうした音楽を紡ぎだす作曲家の想像力というのは,まぁすごいものだなぁというね。異能だよなぁ。脳内の神経ネットワークが常人とは違いすぎると思うなぁ。
● 演奏会には必ず一人で出かけている。誰かに一緒に行ってもらいたいと思ったことなどない。やむを得ず一人なのではなく,一人がいいと思っている。感想はこのブログに書けばいいので,一緒に行った誰かと語らう必要もない。そんなことは時間の無駄と心得ている。
が,今回は友人と来た。ほとんど唯一といっていい友人。隣の席に知り合いがいるというのは初めての経験。たぶん,これが最初で最後になるはずだ。
その友人は,コンミスを評して体が柔らかいと言っていた。なるほど,大事な指摘かも,と思った。
● 一人のときは,東京に出ても,ピンポイントで演奏だけを聴いて帰るのが常だ。けれども,今回はホールのバーコーナーでワインを飲んだ(友人のおごり)。
まぁ,しかし,休憩時間にアルコールを入れなくてもいいか。
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