栃木県総合文化センター メインホール
● 宇都宮シンフォニーオーケストラの定演はこれが15回目。もっとやっているように思えるんだけど,年に2回開く演奏会のうち,1回はベートーヴェン・チクルスだったり秋季演奏会だったりする。定期演奏会と銘打って開催するのは,この時期の1回だけなんだな。
● 開演は午後2時。チケットは1,000円。当日券を購入して,2階左翼席の最右翼に陣取った。実質1階席になりますかね。総文センターだとここが自分の定席だと勝手に決めている。
ちなみに,いつだったか,指定席のコンサートでここを取ったことがあるんだけど,SではなくてA席だった。
● 今回のプログラムは次のとおり。指揮は石川和紀さん。
ボロディン 歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」
チャイコフスキー 序曲「1812年」
チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調
● “だったん”とは韃靼のこと。韃靼とはざっくりとモンゴルのことだと思っていた。それでいいんだろうけど,この「だったん人の踊り」からはモンゴル的な響きは特に感じないですよね。
おまえの言うモンゴル的な響きとはなんぞやといわれると困るんだけどさ。まさかホーミーのあのしわがれたような響きのことだ,と答えるわけにもいかないし。
● この歌劇は,「キエフ大公国の公,イーゴリ・スヴャトスラヴィチによる,遊牧民族ポロヴェツ人(韃靼人)に対する遠征を描いた」ものらしい。
ここでいうポロヴェツ人とはキプチャク人のことで,であればモンゴルが建国したキプチャク汗国のことかとなるわけだ。
が,初期の支配層はモンゴル人だったとしても,その領域の文化の基層までモンゴル色に染まるなんてことはありえないわけでね。
● で,この「踊り」はいたって東欧的なものだというのが,ぼくの受けとめ方。ま,そんなのはどうでもいいかなとも思うんですけどね。
● 序曲「1812年」を生で聴くのは,これが4回目。気宇壮大だけれども,わりと投げやりな感じも受ける。
チャイコフスキーが嫌々ながら作曲したはずはないと思うけど,さほどに力をこめたようにも思えない。
● 出だしのヴィオラとチェロが奏でる,この世のものとは思えない典雅な調べ。ひょっとすると,ここのところがこの曲の一番の聴きどころではないか。「神よ汝の民を救い」という正教会の聖歌らしいんだけど。
これを木管が引き継ぐあたりから,緊張感が混じりこんでくる。その緊張感がだんだん大きくなる。風雲急を告げる。
「ラ・マルセイエーズ」の旋律も登場し,それがやがて消え入るように終わる。わが軍,勝てり。このあたり,あざといといえばあざといよなぁ。
● メインが第4番。5番でも6番でもなく,4番。
といっても,この曲の演奏機会が少ないということもない。直近では,2013年に昭和音楽大学管弦楽団の演奏で聴いているし,その1年前にも宇都宮市文化会館で東京フィルハーモニー交響楽団の演奏を聴いている。2010年には栃響も取りあげている。
● 同じ旋律をオーボエが奏で,ファゴットに引き継ぐ。さらに弦が引き継いで演奏する。ベートーヴェンチック。
この手法は,ぼくのような聴き手としての初心者(けっこう聴いていると思うんだけど,聴き手として一皮むけるってところになかなか到達できない。もどかしさを感じる)に対しても効果的にアピールする。
● もちろん,演奏がダメならダメだけど。どこかでこけちゃうと,ハイそれまでよ,ってことになる。
この楽団は,もちろんそんなことはない。っていうか,たいていのアマチュアオーケストラはここでこけることはない。
そんなの普通でしょ,って言われるのかもしれないんだけど,すごいことじゃないのか,これ。
● アマチュアのオーケストラ活動が日本ほど盛んな国は,世界中さがしてもひとつもない。これはもう常識になっているだろう。
であればこそ,栃木のザイに居住していても,生のオーケストラを聴く機会はふんだんにある。正直,聴ききれない。県南にはぜんぜん行けていないし。
そのうえで,個々の演奏レベルがかなり高いように思われる。このあたりは,日本の凄みのひとつに数えていいんじゃないかと思う。よその国のことは知らないんだけどさ。
● ところで。今回のコンミスは高木早紀さん。ずっとこの楽団のコンミスを続けてくれると,聴きに行く楽しみがひとつ増えることになるんだけど,どうもそういうことではないようだ。
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