栃木県総合文化センター メインホール
● この日は宇都宮市の大通りでJBCF宇都宮クリテリウムが開催された。宇都宮市内で開催されるイベントとしては,メインの位置に登りつめた感がある。
何気にバスに乗ったら,大通りを走れないので遠回りするよ,というアナウンスがあった。すべての車が大通りを締めだされるわけなので,迂回路になる道路も混む。総合文化センターくらいだったら,歩いた方が速かったね。
● 自転車に乗る人,ずいぶん増えたと思う。その大半は自転車で通勤したり,休日にサイクリングに出かけたりする程度のライトな自転車乗りだろう。ジャパンカップなんか観戦しても仕方あるまいと思うんだけど,そこはそれ,自分とは隔絶した世界の人たちが競う様を生で見る感動というものがあるだろう。
で,思うんだけど,音楽を聴く人と自転車に乗る人はけっこうかぶるんじゃないか。自分がそうだから尚更そう思うのかもしれないけれども,音楽と自転車ってけっこう相性がいいように思う。
● 自転車を趣味にしている人って,学校の体育の成績は悪かった人が多い。自転車と山歩き(トレッキング)のふたつは,ウンチ(運動音痴)でも楽しめる。
でもって,音楽ファン(聴く方の)もウンチが多いんじゃないかと思ってるんだけどね。
ともあれ,宇都宮シンフォニーオーケストラとクリテリウム,両方を見たい。が,どちらかひとつしか選択できない。となれば,ためらいなく前者を取るわけだが。
● “ベートーヴェン・チクルスvol.5”と銘打たれている。途中,ブラームスやブルックナーを演奏したこともあるので,チクルスというには少々時間がかかりすぎているかも。
とはいえ,順調に回を重ねて,そろそろ次は第九をやるのかなと思わせる。
● この楽団の演奏は2009年から聴いている。途中までわりと距離を感じたというか,遠い存在だった。理由はわからない。
が,聴く回数が増えるにつれて,その距離感がとれてきた感じ。そこは自ずとそうなるものだろうけどね。
● 開演は午後3時。チケットは1,000円。当日券を購入。
曲目は次のとおり。当然,オール・ベートーヴェン。指揮は石川和紀さん。
歌劇「フィデリオ」序曲
ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」
交響曲第6番 へ長調「田園」
● コンミスは今回も高木早紀さん。賛助という形なんだけど,彼女がいるといないとではだいぶ違う(ように思える)。
「フィデリオ」序曲でまずはお披露目。市民オーケストラって,国内にどれほどの数で存在するのか。そのすべてを聴くなどとは,冗談でも言ってはいけない数だろう。
したがって,市民オケのアベレージがどのくらいのものなのか,ぼくにはわかりかねる。あくまで自分が聴いたことのあるわずかな数しか踏まえない発言なんだけれども,この楽団はその水準を抜いていると思われる。
しっかりとした安定感がある。これが「フィデリオ」の序曲なんだよ,わかった? って言ってるようなね。
● ピアノ協奏曲の5番。ソリストは栗田奈々子さん。若き見目麗しいピアニスト。現在はドイツに留学中。
若いだけじゃない。見目麗しいだけじゃない。本当に自分にわかっているんだろうかと不安を抱えながら申しあげると,才能が迸るような演奏を見せてくれる。生まれてくるのがあと30年か40年も早ければ,ビッグネームとはいかないまでも,すでにミドルネームにはなっているのではないか。
● しかるに,毎年毎年,若い才能が登場するのに,年寄りがなかなか引退しない。したがって,席が空かない。滞留が生じる。流れが悪くなる。若い演奏家は明らかに割を喰っている。
だからぼくらは,若い演奏家を応援しようではないか。栗田奈々子,憶えておくに値する名前だろう。
● 「田園」はベートーヴェンの9つの交響曲の中では,わりとつまらない1曲ではないかと思っている(ベートーヴェンの9つの交響曲の中では,だよ)。
5楽章という破天荒な構成を採用した。「田園」とは言いながら,単純な風景描写ではないのかもしれない。けれども,退屈を感じることがあるんだよね。おまえだけだよ,って言われるかもしれないんだけどさ。
● もっとも,聴き手からすればそうでも,奏者側,特にオーボエ奏者に言わせれば,絶対につまらない曲ではないんだろうな。
ここでも安定した演奏で(とはいえこれだけの曲なんだからノーミスはあり得ない),こちらとしては「田園」に遊ぶことができた。
● で,最初に戻るんだけれど,交響曲は9番しか残っていないのじゃないか。たぶんそうじゃないかなぁ。交響曲なしの演奏会はちょっとないだろうから,次はやはり第九かねぇ。
合唱団とソリストはどう手当てするのか。それを含めて楽しみだぞ。
0 件のコメント:
コメントを投稿