2023年5月6日土曜日

2023.05.06 第21回黒磯高校吹奏楽部グリーンコンサート

那須野が原ハーモニーホール 大ホール

● 黒磯高校吹奏楽部のグリーンコンサートを初めて拝聴。なぜ初めてかと言うと,那須野が原ハーモニーホールで開催されたからだ。同校のフランチャイズである黒磯文化会館は改修工事中で使えなかったらしい。
 わが家からだと,黒磯文化会館は少し霞がかかった距離にある。ハーモニーホールに行くのとさほど違わないといえば違わないんだけど,その “さほど” が心理的に大きいんだな。

● 開園は午後1時。入場無料。
 吹奏楽部のグリーンコンサートとは言いながら,実際には箏曲部と合唱部の合同開催のような感じ。
 最初は箏曲部。演奏したのは次の2曲。
 吉崎克彦 祭花
 黒うさP(渡辺泰子編) 千本桜

● 洋楽は残響を前提とする。修道院も教会も貴族の館も石でできているのだから,残響が生じる。自ずとそれを踏まえた発達過程をたどることになるだろう。
 対して,日本の家屋は木と紙でできている。音の一部は自身が吸収したうえで,残りはそのまま通過させる。上に上がった音は上がったきりで降りてこない。
 そうした残響とは無縁な世界で和楽器は育まれたと思うのだが,ハーモニーホールで聴くと,和楽器にもアコースティックはあった方がいいことがわかる。ホールも楽器のひとつという言い方がされることがあるけれども,それをもっともわかりやすく感じられるのは,邦楽をこうしたホールで聴くことかもしれない。
 ひょっとすると,残響があたりまえのホールで聴くことに慣れてしまったゆえで,本当はそうじゃないのかもしれないんだけどさ。

● 次は合唱。久しぶりに男声合唱の「いざ起て戦人よ」を聴いた。レガートな戦人だった。
 「鷗」は曲も詩もスケールの大きな曲だと思うのだが,三好達治の詩の勢いを味わうものですかねぇ。自らを拠り所とできることこそ自由というものだ,というね。ブッダが臨終前に弟子たちに諭したとされる「自灯明」を思い起こさせますな。

● いよいよ吹奏楽。まず,クラシックステージ。演奏曲目は次のとおり。
 和田 信 希望の空
 オリヴァドーティ バラの謝肉祭
 ドイツ民謡 山の音楽家
 リード A Festival Prelude

● 吹奏楽は高校生の演奏で聴くのが一番いい。吹奏楽といぶし銀の相性はあまりよろしくないと感じるのは,ぼくだけではないと思うのだが,それも固定観念というものですかねぇ。
 「山の音楽家」は楽器紹介を兼ねるわけだが,誰でも必ず聴いたことのある曲だし,箸休めに中間に持ってくるのは聴く側としても助かるかな。
 曲としてはやっぱり「A Festival Prelude」ですかねぇ。直訳すれば音楽祭の前奏曲ってことなんだろうけど,艶があるし,喜怒哀楽のうち怒を除いた3つが入っている。哀もかすかにあって,それが曲に深みを与えているような気がする。

● 次はポップスステージ。
 とちぎベリーヒットメドレー
 「千と千尋の神隠し」メドレー
 岡田実音 Happiness
 ラファエル・エルナンデス エル・クンバンチェロ

● これはもう高校生のぼくらに対する懸命なサービスであって,そのサービスが良かったか悪かったかを云々してはいけない。サービスを受ける一方の人間がサービスする側に対してアレコレ言う資格はないとしたものだ。反対給付を求められているなら別かもしれないけどね。
 そう言いながら云々してしまうのだが,「とちぎベリーヒットメドレー」での合唱は相当な味わいがあった。「乱れ髪」なんかジーンと来るものがありましたよ。

● 最後は県北地区数校の合同演奏。曲目はグリエール「青銅の騎士より」。石津谷治法ではなく森田一浩の編曲によるもの。
 結局,これが最も印象に残った。アンコールは「宝島」だったが,「青銅の騎士」の方に惹かれた。
 元の管弦楽版も聴いてみたいものだが,CDを見かけたことがない。生で演奏される機会もないと言い切ってしまっていいだろう。「青銅の騎士」といえば吹奏楽ということになっている。

● 場内アナウンスがよく通る声で聞き取りやすかった。こうした黒子のファインプレーが全体を締めることもある。

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