那須野が原ハーモニーホール 大ホール
わが家からだと,黒磯文化会館は少し霞がかかった距離にある。ハーモニーホールに行くのとさほど違わないといえば違わないんだけど,その “さほど” が心理的に大きいんだな。
● 開園は午後1時。入場無料。
吹奏楽部のグリーンコンサートとは言いながら,実際には箏曲部と合唱部の合同開催のような感じ。
最初は箏曲部。演奏したのは次の2曲。
吉崎克彦 祭花
黒うさP(渡辺泰子編) 千本桜
● 洋楽は残響を前提とする。修道院も教会も貴族の館も石でできているのだから,残響が生じる。自ずとそれを踏まえた発達過程をたどることになるだろう。
対して,日本の家屋は木と紙でできている。音の一部は自身が吸収したうえで,残りはそのまま通過させる。上に上がった音は上がったきりで降りてこない。
そうした残響とは無縁な世界で和楽器は育まれたと思うのだが,ハーモニーホールで聴くと,和楽器にもアコースティックはあった方がいいことがわかる。ホールも楽器のひとつという言い方がされることがあるけれども,それをもっともわかりやすく感じられるのは,邦楽をこうしたホールで聴くことかもしれない。
ひょっとすると,残響があたりまえのホールで聴くことに慣れてしまったゆえで,本当はそうじゃないのかもしれないんだけどさ。
● 次は合唱。久しぶりに男声合唱の「いざ起て戦人よ」を聴いた。レガートな戦人だった。
「鷗」は曲も詩もスケールの大きな曲だと思うのだが,三好達治の詩の勢いを味わうものですかねぇ。自らを拠り所とできることこそ自由というものだ,というね。ブッダが臨終前に弟子たちに諭したとされる「自灯明」を思い起こさせますな。
● いよいよ吹奏楽。まず,クラシックステージ。演奏曲目は次のとおり。
和田 信 希望の空
オリヴァドーティ バラの謝肉祭
ドイツ民謡 山の音楽家
リード A Festival Prelude
● 吹奏楽は高校生の演奏で聴くのが一番いい。吹奏楽といぶし銀の相性はあまりよろしくないと感じるのは,ぼくだけではないと思うのだが,それも固定観念というものですかねぇ。
「山の音楽家」は楽器紹介を兼ねるわけだが,誰でも必ず聴いたことのある曲だし,箸休めに中間に持ってくるのは聴く側としても助かるかな。
曲としてはやっぱり「A Festival Prelude」ですかねぇ。直訳すれば音楽祭の前奏曲ってことなんだろうけど,艶があるし,喜怒哀楽のうち怒を除いた3つが入っている。哀もかすかにあって,それが曲に深みを与えているような気がする。
● 次はポップスステージ。
とちぎベリーヒットメドレー
「千と千尋の神隠し」メドレー
岡田実音 Happiness
ラファエル・エルナンデス エル・クンバンチェロ
● これはもう高校生のぼくらに対する懸命なサービスであって,そのサービスが良かったか悪かったかを云々してはいけない。サービスを受ける一方の人間がサービスする側に対してアレコレ言う資格はないとしたものだ。反対給付を求められているなら別かもしれないけどね。
そう言いながら云々してしまうのだが,「とちぎベリーヒットメドレー」での合唱は相当な味わいがあった。「乱れ髪」なんかジーンと来るものがありましたよ。
● 最後は県北地区数校の合同演奏。曲目はグリエール「青銅の騎士より」。石津谷治法ではなく森田一浩の編曲によるもの。
結局,これが最も印象に残った。アンコールは「宝島」だったが,「青銅の騎士」の方に惹かれた。
元の管弦楽版も聴いてみたいものだが,CDを見かけたことがない。生で演奏される機会もないと言い切ってしまっていいだろう。「青銅の騎士」といえば吹奏楽ということになっている。
● 場内アナウンスがよく通る声で聞き取りやすかった。こうした黒子のファインプレーが全体を締めることもある。
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