約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2010年5月31日月曜日
2010.05.09 那須室内合奏団第3回演奏会
那須野が原ハーモニーホール大ホール
● しばらく生演奏に接しないと禁断症状が出てきますね。気持ちが落ち着かなくなってくる。何でもいいから聴かせてくれって感じになる。
9日(日)に那須室内合奏団の定期演奏会があった。これを知る契機になったのは,前日の8日に地元の図書館に行ったところ,ロビーにおいてあるチラシやパンフレットの中に,この演奏会のチラシがあったこと。招待チケットがセットされていた。
● 場所は久しぶりの那須野が原ハーモニーホール。昨年9月以来だ。来てみれば,このホールの素晴らしさが毛穴から入ってくるような気がする。ホールの力ってあると思う。
演奏する側にとってはもちろんのことだと思うが,観客にしてもいいホールだと拍手がしやすいのだ。長く拍手を続けても疲れない。したがって,奏者に届く拍手の量が多くなる。これがあなどれないホールの力だ。
● 例によって電車ででかけた。お客さんのほとんどは車で来る。わが家からも車で行くことに何の問題もない。車のオーディオ装置がぼくの場合は最も充実した音楽環境になっているので(どんだけ貧弱な環境に甘んじているんだよってことですよねぇ),通勤は音楽を聴きながらの優雅で楽しい時間になっているのだけれども,通勤以外ではあまり運転しない。
最近の若者は車離れが進んでいるという。車にこだわりを持たないらしい。こだわりどころか,そもそも興味がない。車を運転して遠くまで行きたいなんて気持ちもない。助手席に彼女を乗せてドライブに行こうなんて望まない。
ひょっとすると,ぼくは時代を先取りしていたのかなと思うね(そういうことじゃないだろうけど)。
● 西那須野駅からホールまでは往復とも歩いた。片道25分。往復で50分。ちょうどいいというか,もっと長くてもいいかも。音楽を聴きに行くついでに散歩までできてしまう。
● 那須室内合奏団に関してはまったく知らなかった。合奏団のホームページがない。塩原の「彩つむぎ」という宿屋の女将さんが合奏団でヴァイオリンを弾いているらしく,自身のブログで合奏団のPRをしているのが目立つくらい。
で,実際にステージとプログラムからの情報になるのだが,女性を中心にした20人程度の集団だ。今年が3回目の演奏会なので,できてさほど経っていない。ヴァイオリンとヴィオラは自前で何とか揃うけれども,チェロとコントラバスはすべて賛助出演を仰いでいた。
● 指揮者兼トレーナーに白井英治さん。神奈川在住で,読売交響楽団などを経て,現在は東邦音楽大学の准教授のかたわらアマオケの指導などをしているそうだ。
今回はチェロのソリストを招いており,本橋裕氏が登場。プラハ音楽院などで修行し,現在はセントラル愛知交響楽団に所属しているプロのチェロ弾き。前回はヴァイオリンの天満さんをソリストに招いているそうなんだけど,この少数の楽団にこれらの人を呼ぶ力があるとはおそれいった(→後日,団員の息子さんであることを知った)。
● 白井さんの紹介によれば,大人になってから楽器を始めた人が多いんだそうだけど,演奏会の前はきちんと合宿もしているとのこと。腕前もなかなかのもの。
ま,ぼくの耳だからあまりアテにはならないんだけれども,2月に総文センターで聴いた「ベッラ・プログレッソ」(栃響のメンバーが過半を占める)と比べて,見劣りがするとは思わなかった。
● 曲目は次の4つ。
パーセル ロンド
ハイドン チェロ協奏曲第1番
ブリテン シンプル・シンフォニー
レスピーギ リュートのための古風な舞曲とアリア組曲第3番
● パーセルの「ロンド」は情緒的というか甘美というかロマンティックというか,甘いメロディー。短い曲だけれど,印象に残った。
パーセルが16世紀に生きた人で,バロックの前に活躍した人だとは白井さんの話の受け売りである。
● メインはハイドンの「チェロ協奏曲第1番」になるだろうか。本橋さんの登場。バックに管弦楽(このときだけオーボエとホルンが入った。オーボエは鹿沼フィルを指揮している神永秀明さんが務めていた)が控える形の演奏でハイドンを聴くのは,これが初めてだ。
● ブリテンを生で聴くのは初めてのこと。レスピーギは昨年9月に栃響の演奏で「ローマの松」を聴いた。あのときは大きなホールで圧巻の音量だったけれども,こういう小さな演奏もいいものだなと思った。
● というわけで,初めての那須室内合奏団,満足した。これを無料で聴いては申しわけない。しかも,CDで聴いてみようと思える曲にも出会えた。
● 早めに着いたので,開演前に,ロビーに置かれているパンフを見たり,7月のコンサートのチケットを買ったり,椅子に座って読書をしたり,贅沢な時間を過ごさせてもらった。このホール,こういうところも含めて相当いいですよ。
これが宇都宮じゃなく大田原にあるっていうところが偉い。たぶん,バブル期の産物なんだと思うんだけど,これだけのものが那須にあるっていうのがいいねぇ。
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