2011年1月31日月曜日

2011.01.15 東京大学音楽部管弦楽団第96回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● さて,次は川崎に出なければならない。西に向かって南武線を使うことも頭をかすめたのだが,ちょっと遠回りになるようだ。素直に新宿まで戻ることにした。

● 川崎。通過することは何度もあるんだけれども,下車することはまずない街のひとつ。この街に降り立つのは30年ぶりだ。今回も演奏会の会場が川崎だったから来たわけで,そうでもなければまずもって訪れる理由がない。横浜にはしばしば行くんだけど。
 川崎というと,京浜工業地帯の中核都市と小中学校で習っていて,そのイメージが強すぎる。公害を連想させる地名でもある。現在の川崎は商業都市に変貌しているんだと思うけど。

● ミューザ川崎シンフォニーホールにも初めて足を踏み入れる。いや立派なホールだ。正面にパイプオルガンが設置されているのは当然として,すり鉢型で,大きさのわりに座席数を抑えている感じ。高級感あふれる仕様。
 東大音楽部管弦楽団って,前回は東京芸術劇場で今回はミューザ川崎。会場に相応しい力量と集客力を持っていることをぼくは認めるので,おまえら生意気だぞなんてケチをつけるつもりはさらさらないけどね。

● 指揮者は客演の高関健氏。日本を代表する指揮者のひとりといっていいだろう。現在は札幌交響楽団の正指揮者で芸大で教鞭も取っているそうだ。

● 曲目はショスタコーヴィチの交響曲第9番とマーラーの交響曲第1番。第2楽章から,クラリネット,フルート,ファゴットと管の独奏がとっかえひっかえ続くのだが,素人目にもこれに耐えるのはけっこうな技量がいると思う。その技量を持っているのだ。この学生たちは。

● マーラーをライブで聴くのは初めて。これがあったから,わざわざ川崎まで行く気になったのだと言ってもいいくらいだ。大編隊を組まなくてはマーラーにならない。その大編隊が息をピタッと合わせないといけない。
 ちゃんと形にして客席にどうだと投げてくるんですね,この学生たちは。
 参りました。わざわざ川崎まで来た甲斐があったと正直思う。今年も県外限定などやめて,時々は東京に来ることにしようかと思ってしまった。

● チケットはS席が2,000円,A席が1,500円。500円の違いしかないのであれば,S席の一択となる。
 ぼくの席は前から7列目。これほどステージの近くに座ったことはない。奏者の息づかいまで聞こえてきそうだ。ライブ感が強くなる。

● ところで,ここまで来る途中,『茂木健一郎の脳力のヒミツ』(中経出版)をいう本を読んでいたのだが,その中に,「脳科学の観点から言うと,いちばんいい成績や突出している成果が,その人の本当の実力なのです」という文章があった。
 主要5教科ともまんべんなく80点取る人よりも,数学は95点でほかは20点という人の方が,実力は上ってこと。
 ぼくでいうと,高校は315人中307番の成績で卒業しているとしても,世界史だけはできた。好きだったしね。2年生のときクラスで一番だった。推測すれば,学年でもたぶん一番だったろう。さらに想像を逞しくすれば,世界史だけで勝負させてくれるのならば東大くらいは合格できたかも。
 当時,社会科は地理,世界史,倫理社会,日本史,政治経済の5科目があった。ぼくができたのは世界史だけだ。あとの4つはダメだった。まして,社会科以外の英語や物理やその他諸々の科目はまるでできなかった。数学にいたっては0点以外は取った記憶がない。
 でも,ぼくは実力トップで高校を卒業したのだ。この考え方だと,トップで卒業した人が何人もいることになるが,それはそれでいいのだ。
 そして,ずっと東大生に対しては劣等感を抱いてきたんだけど,また,自分の学歴は二流(あるいは三流)であって,地頭もたいしたことない,佃煮のひとかけらにすぎないと思ってきたんだけど,そんなに卑下することもなかったのだ。
 と思えてきた。っていうか,思ってしまうのが吉。そのうえで,この演奏会の客席に座り,ステージ上で演奏している東大生を眺めると,どういう変化があるか。 ・・・・・・別に何の変化もないのでした。

● 通路をはさんでぼくの隣にいたオッサン。演奏が始まっても本を読んでいた。何だこいつ。そのうち本を閉じて目をつむった。目を閉じて音に集中しようとしているふうではない。寝ているのだ。ぼくも人のことをあれこれ言える筋合いはないんだけど,この珍獣の様子が気になって,演奏に集中できなくなってしまった。
 集中を妨げる想念は自分の中からも湧いてくる。オレはこれから普通列車で宇都宮に戻り,そこからは自転車を1時間ほど漕いで家に辿りつくんだそ,お前らのなかにそんなヤツはいないだろう,お前らの中で今現在一番お金を持っていないのはオレだぞ,と客席を見回して思ったりするわけです。

● どうしてそんなことを思ったのかというと,自分でもよくわからないんだけれど,おそらく客席の行儀の良さが一因かと思う。
 何となくセレブっぽいんですね。とり澄ました感じといいますか。演じてもいるんだろうけど,こぎれいなオバサマ方(ぼくよりは若い)が挨拶を交わし合ったりとかしているわけですよ。彼女たちへの反発があったかもしれない。幼いなぁ,オレ。

● 帰りにちょっと異変が。宇都宮に着いたら外が白い。まさかの雪だった。しかもけっこう積もっているではないか。
 ぼくの自転車も雪に覆われていた。が,迷う余地はない。普通に乗りだした。転けないように,地面に対して直角状態を維持する。車体を曲げてはいけない。そろそろと走った。慎重に慎重に。
 深夜の0時20分頃,無事にわが家に着いた。

● ちょっと酒を呑んで,風呂に入って,就寝。ライブを堪能したほかに,雪道を自転車で走ることもできた。充実した一日になった。

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