2012年6月24日日曜日

2012.06.24 東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団第27回定期演奏会


すみだトリフォニーホール大ホール

● 東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団。その実力はすでに承知している。そのフォイヤーヴェルクの定期演奏会に行ってきた。開演は午後2時。チケットは無料。

● 2010年はこの楽団の賛助会員になっていた。年会費6千円は決して高くないと思うのだけど,結局,1年しか続かなかった。
 理由はふたつあって,ひとつは年2回の定期演奏会のうち,12月末に開催される演奏会には行けなかったこと。この時期は家族サービスを優先せざるを得ないんだよね。
 もうひとつは,地元に沈潜したいと思ったこと。地元で開催される演奏会だけを聴いていこうと考えたわけです。
 というわけで,2年前のこの時期に開催された演奏会を聴いたあとは,このとんでもなくレベルの高い楽団の演奏会から遠ざかる結果になった。

● けれども,最近また,ポツポツと東京に出るようになった。その理由はやや不純。このブログを作ってから,ブログの更新頻度をあげるために演奏会に行くという,本末転倒的な気配が出てきているんですね。地元開催の演奏会に絞ってしまっては,更新が間遠くなる。
 正直,ここのところ,オーバーペースかなと思っている。特に,2週連続で東京に出ると,けっこう疲れる。若いときは何でもなかったのに,年を取ると翌日まで疲れが残るようになった。オーバーペースを続けてしまうと,ホールの客席で開演を待っている間も気持ちがときめかなくなりそうだ。
 この程度でオーバーペースというのも情けない限りなんだけど,無理は禁物ってことですね。個人財政への負荷もバカにならないしね。
 ま,でも,そのあたりはあまり考えないことにして,ね。

● 曲目は次のとおり。
 ロッシーニ 歌劇「タンクレディ」序曲
 モーツァルト 交響曲第39番 変ホ長調
 ベートーヴェン 交響曲第7番 イ長調

● 「タンクレディ」で軽くご挨拶。モーツァルトの39番は比較的少人数で演奏。端正という言葉が浮かんできた。
 でも,まぁ,すごかったのはベト7。この曲の特徴って流れだと思うんですよね。1楽章から4楽章まで流れるように続いて,その流れが大きくなったり小さくなったり,高くなったり低くなったり,速くなったり遅くなったり,緩急自在なわけですね。その流れが淀むことがないんですよ,この楽団が演奏すると。
 4楽章ではオーケストラは全力疾走を強いられるはずなんだけど,何て言うんですかね,余裕こいて全力疾走してるって感じなんだなぁ。

● 指揮者は鷹羽弘晃氏。客席に向かうときは笑顔を作って,深々とお辞儀をする。
 アンコール曲は,昨夜も聴いたブラームスのハンガリー舞曲第5番。

● 女性奏者のカラフルなドレス姿もこの演奏会の魅力のひとつ。ステージで花たちが咲きほこっている様を見るのは,じつに気持ちがいいものだ。マジ,その様を見るためだけに会場に足を運ぶ人がいるんじゃないだろうか。
 もれ聞くところによると,結婚したがらない女性が増えているらしい。結婚はしたくないけれども結婚式はあげたいのだ,とも。なぜなら,一世一代のお洒落ができるから。
 でも,この楽団の女性奏者は,年に2回,結婚式なみのお洒落をする機会を持っているわけだ。となると,いよいよ結婚に向かう動機は薄まることになる?
 ただね,2年前の定演に比べると,おとなしくなってる感じがしましたね。もっと派手に。どんどん派手に。派手でこそ花ではないか。

● この演奏会,チケットは無料なんだけど,当日,会場に行けばいいというわけではない。事前申込み制だ。あらかじめ申し込んでおいて,チケットを送ってもらう。
 これって,主催者にすれば大変というか面倒だよね。かりに1,500人から申し込みがあれば,チケットの郵送料だけで12万円かかる計算になる。しかも,いちいち封筒に入れて宛名を書いてっていう手間もかかる。
 たぶん,そうでもしないと,せっかく来てくれたのに会場に入れないお客さんが出てしまうかもしれないからってことなんでしょうけどね。
 それだけ,この楽団の力量を知っている人がたくさんいるってことなのだろうね。

2012.06.23 ベルリン交響楽団-3大交響曲

栃木県総合文化センター メインホール

● 栃木県総合文化センターに今年は3つの海外オケが来る。その2つめがベルリン交響楽団。その演奏を聴きに行った。
 チケットはソールドアウト。かくもあろうかと思って,発売開始日の2月4日に買っておきました。S席を奮発。5千円。週に8千円のこづかいから,これをまかなうのはそれなりに大変ではありますけどね。
 だが,しかし。ベルリン交響楽団はこのあと,サントリーホールでも演奏するんだけど,そちらのチケットは1万6千円なのだ(曲目は同じではないけど)。ホールの違いを考慮しても,わが総合文化センターの5千円は格安ではないか。であってみれば,買うでしょ,買わなきゃ損でしょ。
 開演は午後6時。座席は指定されているわけだけど,例によって早めに到着。

● 地元のアマオケの演奏会とは華やぎが違いましたね。まず,女性のお客さんのおめかし度が違う。音楽を聴く私,をちゃんと演出してるっていうか。
 地元のアマオケを聴きに来る人たちとは客層が違うのか,同じ人たちが違った装いで来ているのかはわからないけれど,華やいでいるのはけっこうなことだ。

 と書くことになるかと思っていたんだけど,そんなことはなかった。この時期ですからね,おめかしの自由度は限られますよね。
 セレブとかハイソとかいった雰囲気もない。ぼくの隣の女性グループは共通の友人の悪口で盛りあがり,後ろに座ったオヤジは床屋政談に没頭。要するに,ごく普通の人たちで客席は埋まっていた。
 かくいうぼくも,Tシャツに半ズボン,サンダル履きっていういでたちだったからね。サンダル履きはさすがに他にはいなかったかもしれない。景観を乱してしまったかも。

● この演奏会の副題は「3大交響曲」。したがって,演奏曲目はシューベルトの「未完成」とベートーヴェンの5番,ドヴォルザークの9番ということになる。
 その人なりの「3大交響曲」があるはずで,3つ選ぶならすべてベートーヴェンだろっ,とか,どうしてマーラーが入ってないんだよ,とか,ブラームスの1番はどうしたんだよ,とか,異論百出するはずのものでしょ。
 であっても,それじゃこの3つの中に聴きたくない曲があるのかと言われれば,ありませんと答えるしかないわけで,ぼくもワクワクしながら開演を待った。

● ただね,ぼく程度の聴き手だと,聴く前からベルリン交響楽団という名前に負けちゃって,巧いはずだ,感動するはずだって思いこんで,その思いに引きずられることになりはしないかなぁという不安があった。
 ベルリン・フィルやウィーン・フィルが世界のオーケストラの中で突出した存在かといえば,どうもそうでもない。クラシックといえばドイツ音楽が主流になっているけど,だからオケの技量もドイツがダントツかといえば,わりとそうでもない。そういう話も聞くんだけどね。
 音楽を聴くという体験は徹底的に個人的なものだから,思いこみだろうと何だろうと,感動した者勝ちでいいんだけどさ。

● 「未完成」からスタート。
 プロ,アマを問わず,ステージ上の奏者は,指揮者がタクトを振り下ろした瞬間に,本気モードに入ってしまうものだろう。今日は軽く流しておこうともし考えていたとしても,本番が始まれば気を入れてしまうものだろう。
 それを前提にすると,会場のスタッフに,この楽団が日本に着いたのはいつなのか訊いてみようかと思った。つまり,疲れが残っているのじゃないかと思えたんですよ。こんなものなの,って思えてしまったんですね。
 もちろん,ぼくの耳が悪くて,いいをいいと感じられなかっただけなのかもしれないんだけど。たぶん,そうなのだろうと思うんだけど。

● けれど,「運命」の後半から変わってきた(とぼくには思われた)。調子があがってきた。第3楽章の途中からトップギアに入ったなと思えた。
 最後の「新世界より」はその勢いを持続。こちらは,息をつめてステージを見守るって状態。オレ,ステージに支配されてるわ,って感じ。
 なんだけど,こちらの期待値が高すぎたのだろう,満たされない思いが最後まで残ってしまったのも事実。

● 東洋人の奏者が何人もいたし,ティンパニはおそらく南米から来ている人だろう。ユダヤ系もトルコ系もいる。ベルリン交響楽団だからといって,ゲルマン人だけじゃない。日本のオーケストラにも外国人奏者がいることがあるけれども,それよりもはるかに高い比率で多国籍。
 総じて,団員はリラックスしている感じ。リラックスと集中はむしろ相性がいいんでしょうね。

● コンマスは年配の男性。コンマスの隣,1stの2番奏者も渋い感じの男性だった。こちらはカラヤンを思わせるいい男っていうかね。このふたりが絵的にも面白くて,っていうか,様になっている感じがして,この二人を見ている時間が一番長かったですね。
 年をとっても絵になる男ってあんまりいないじゃないですか。生物学的にも,子育てを終えた男がなぜ生存しているのか説明がつかないなんて言われることがあるじゃないですか。こんないい具合に年を取ることもできるんだっていう実例を見ると,ホッとするっていうかね(ぼくはもう手遅れだけど)。
 もっとも,彼らは見かけより若いことが多いから,じつはぼくの印象ほどには年寄りじゃないのかもしれないんだけど。

● 指揮者はリオール・シャンバダール。指揮台にあがるのも大変なんじゃないかと思うほどに太っている。でも,その体型も含めて,まぁこの人も絵になること。
 演奏会のチラシでは「音楽への情熱が身体中から迸るマエストロ」という表現で紹介されている。それあればこそ絵にもなるんでしょうね。
 指揮者なんかやってると胃がいくつあっても足りないだろうなと思うことが多いんだけど,彼はオーケストラを支配してる感じ。おまえらが何を言っても一歩も引かないぞっていう。
 最後は日本語で挨拶。茶目っ気もある。
 どうでもいいんだけど,タクトを持つ右手の小指を立ててるんですな,この人。

● アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第5番。これで終わりかと思ったら,さらにあと2曲,あわせて3つも演奏してくれた。
 ステージを去るときは客席に手を振る団員が多かった。本国でも同じことをしているのかどうかは知らないけれど,ショーマンシップも旺盛だ。ここまでサービスしてくれると後味が良くなりますね。

● 客席も彼らに拍手を惜しまなかった。後半からがぜん良くなったのは(最初から良かったのかもしれないんだけどね),客席が彼らを乗せたってのも一因かなぁと思いますよ。

● できれば,バーにでも立ち寄って,生ハムにビールか,チーズをはさんだフランスパンをスライスしたもので白ワインでもやりながら,余韻を反芻したい気分だなぁ。しかぁし,それをできるだけの経済的な余裕はないんだよねぇ。

● ところで,「運命」の第2楽章だったかな,終わり頃にミャーという猫の鳴き声のような音が聞こえてきたんだけど,あれは何だったのだろう。

2012年6月18日月曜日

2012.06.17 東京大学フィルハーモニー管弦楽団第29回定期演奏会


練馬文化センター大ホール

● この日はもうひとつ,東京大学フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会も聴くことができた。開演は午後2時。入場無料。
 コンサートのハシゴをすると印象が散ってしまう。あまりよろしくない。それは実地に経験してわかっているのだけれども,せっかく電車賃をかけて東京に出たのだからっていうケチ根性が理性を上回ってしまうのだな。

● 池袋から西武線に乗り換えて,練馬駅で下車。文化センターは駅の目の前にある。今度は迷う余地がない。

● 楽団のホームページによれば,練習は週1回(3時間)にとどめているという。「オーケストラを愛する数多くの方々の中には,勉強や他のサークルなどもオーケストラと同じくらい頑張りたい,といった方も多いのではないでしょうか」ということからの措置とのこと。
 けれども,音楽好きの学生がこの練習で満足できるはずもないだろう。おそらく,多くの団員は他の楽団にも加わっているのではあるまいかと推測する。

● 本番の前に弦楽五重奏のミニコンサートがあった。本番で出番のない人たちが演奏しているのかと思いきや,各パートのリーダーが登場していたのだった。

● 本番の曲目は次のとおり。
 ワーグナー 歌劇「タンホイザー」より入場行進曲
 ベートーヴェン レオノーレ序曲第3番
 ラフマニノフ 交響曲第2番 ホ短調

● ラフマニノフの第2番が難曲であることは素人にもわかる。その難曲をきちんと砕いて消化して,作品に仕上げている。その過程で手を抜いていないっていうか。技術も充分だけれども,姿勢が真面目って感じですね。
 レオノーレ序曲は聴く側からすると,乗りやすい曲。たんに乗ってればそれでいいよね,っていう。で,充分に乗せていただきました。

● 指揮者は濱本広洋さん。若い人で,団員との距離もちょうどいい頃合いを保っているように思えた。ま,こういうのは外からはわからない事柄ですけどね。

● 入場は無料だけれども,カンパを募っていた。額は些少であっても,カンパには応じるのが年寄りの義務。
 まして,これだけの演奏を聴かせてもらった後とあっては,ありがとうの意思表示はしなければならないでしょうね。

2012.06.17 早稲田大学交響楽団特別演奏会(早稲田学生文化・芸術祭2012)


早稲田大学 大隈記念講堂

● Webサイトをサーフィン(死語?)してたら,早稲田大学交響楽団の演奏会があるのを発見。学内行事での演奏会らしい。無料で聴ける。
 早稲田大学交響楽団といえばヨーロッパに演奏旅行に出かけたりしてて,活躍は国内にとどまらない。最近も雑誌「音楽の友」にその記事が掲載されたのを読んだばかりだ。おそらく,最も知名度の高い大学オケなのではあるまいか。
 であるからして,この機会に早稲田大学交響楽団の生演奏を聴いてみたい。

● というわけで,栃木の田舎から鉄路千里,会場の早稲田大学大隈記念講堂に向かった。開演は11時なのだが,たぶん長蛇の列ができるだろうと思って,1時間前には到着できるよう,朝早くにわが陋屋を出立。
 高田馬場駅からは徒歩。地図は確認してこなかった。スマートフォンのナビに任せればいいと思って。だけど,このナビがあまり役に立たなくてね。
 この先200メートルを左方向ですと言うんだけど,左に行く道なんてない。半キロほども歩いたところで,またこの先200メートルを左方向ですと言ってくれる。この半キロは何だったんだよ。
 だいぶ遠回りをしてしまったようだ。右側に早稲田の森が見えてきた。と,ナビ君はまもなく左方向ですと言う。おいおい。

● が,予想に反して,行列はなかった。大隈講堂には最後まで空席があった。「早稲田学生文化・芸術祭2012」は学内でもマイナーな催しであるようだ。この日は同じ早稲田で国家公務員採用試験が行われていたくらいだから。

● この楽団は今年が創立100周年を迎えるようで,今年6月から来年3月にかけて5回にわたって「創立100周年記念演奏会」を展開する。毎回,曲目は変わる。同じ曲目を5回繰り返して演奏するのではない。
 団員は早稲田の学部生約300名とのことなんだけど,とんでもなく生産性の高い大学オケですな。

● 曲目は次のとおり。
 モーツァルト 交響曲第35番 ニ長調「ハフナー」
 ファリャ バレエ音楽「三角帽子」第2組曲
 ヴェルディ 歌劇「運命の力」序曲
 サン・サーンス チェロ協奏曲第1番 イ短調 より第1部
 ロッシーニ 歌劇「ウィリアム・テル」序曲 より「スイス軍の行進」
 レスピーギ 交響詩「ローマの松」より第4楽章「アッピア街道の松」

● すでに開催した1回目の100周年記念演奏会で演奏したものをダイジェストしている。ただし,サン・サーンスのチェロ協奏曲は次回の,「運命の力」序曲は次々回の記念演奏会にあげる予定のもの。
 指揮者は田中雅彦氏。この楽団の永久名誉顧問になっている。御年77歳。この年齢でこれだけ動けるんだからねぇ。

● 大隈講堂といえどもオーケストラを乗せる舞台としてはやや手狭。ステージ上に段差もないから,管楽器の奏者は顔が見えなかった。
 でも,昔は,今のようにそちこちに大きなホールがあったわけじゃないからね,こんな感じで音楽を楽しんでいたのかなぁと思いを馳せながら聴いていた。

● 「ハフナー」は破綻のない無難な演奏だなぁといった程度の印象で聴き終えてしまったのだが,「三角帽子」になって,この楽団の実力を思い知らされることになった。うねるように,退いては寄せる波のように,心地よく客席を揺さぶってくれる。
 チェロ協奏曲のソリストは,この楽団で首席チェロ奏者を務める實島咲さん。プログラムに掲載されているプロフィールによると,「第29回栃木県学生音楽コンクール弦楽器部門第1位」とある。栃木県出身の人なのかなぁ。とすると,栃木からもこんな美人が出るようになっていたんだねぇ。
 「ローマの松」では金管の別働隊がステージ下に登場。この春に入学したばかりの1年生とおぼしき男女。みな幼顔で可愛らしかった。これがあっという間に大人の顔になっていくわけだ。この時期の若者の変化にはまことに端倪すべからざるものがあって,だからこそ,年寄りは若さの前に謙虚でなければならないのだ。

● ぼくは,百回生まれ変わっても,早稲田の入学試験には合格できない自信がある。今,ステージで演奏している学生たちは,ガリ勉一辺倒でやってきたはずがない。音楽も続けながら早稲田に入ってきた人たちだろう。本来的に頭がいいのだろうねぇ。
 そういう眼で見るせいか,彼ら彼女らがまぶしく映るんですよねぇ。

● 1時間半で演奏会は終了。
 帰りはナビなしで駅に戻ろうとしたが,道に迷ってしまった。後刻,地図で確認したところ,途中で右折して北に向かうべきところを左折してしまったようだ。そもそも,迷うような道じゃないはずなんだけどね(地下鉄の西早稲田駅に出遭ったときは,救われた気がした。地下鉄で池袋に出た)。
 こういう状況に遇うと,自分が何者であるかを深く自覚することになる。あぁ,オレは栃木の山猿なんだ(念のために申しあげれば,栃木県人に山猿なんかめったにいないよ)。

● なお,この楽団の演奏会を聴きに行くのであれば,「ワセオケコンサート会員」になるのがお得だ。年会費5千円で「ワセオケ年間フリーパス」をもらえる。その都度チケットを買うよりだいぶ安くなる。

2012年6月10日日曜日

2012.06.10 栃木県交響楽団第93回定期演奏会

宇都宮市文化会館大ホール

● 6月10日は栃木県交響楽団の定期演奏会。会場は宇都宮市文化会館大ホール。チケットは1,200円(当日券は1,500円)。開演は午後2時。指揮者は三原明人さん。
 この楽団の会長に就任した須賀英之さんの姿もあった。律儀な人なのでしょう。宇都宮共和大学の学長の職にあってお忙しいだろうに。

● 曲目は次の3つ。
 ワーグナー 歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
 ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲
 シベリウス 交響曲第2番 ニ長調

● ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」でソリスト(ピアノ)を務めたのは,若干22歳の金子三勇士さん。アンコールでリストの「ラ・カンパネラ」を披露してくれたんだけれど,これが圧巻。これを聴けただけで1,200円の元は取れたと思った。
 この曲,フジ子・ヘミングが何度かCDに収録してますよね。ぼくも彼女のCDで聴いているんだけど,生で聴くと迫ってくるものが違う。

● プログラムの解説によれば,シベリウスの2番は,彼がイタリアに招かれたときに,「『魔法をかけられたような暖かい国』の印象を取り入れようと」して作曲したものだという。完成したのは母国フィンランドに戻ったあとだったらしいのだが。
 4楽章のクライマックスを聴いているときにぼくの脳内に浮かぶのは,寒冷な北欧の針葉樹林を吹き渡っていく吹雪のイメージだ(行ったことはないんだけど)。イタリアの温暖でちょっと猥雑な風景ではなく(行ったことはないんだけど)。シベリウス=フィンランドっていう固定観念が強すぎるのかもしれないんだけれどもね。

● ぼくは楽器をいじれないので,楽器を弾ける人って,それだけで無条件に尊敬する。
 聴いていると色々と思うところはある。けれども,自分が楽器を弾いていれば,また違った印象になるはずだ。(楽器をいじれないと)聴いていても気づけない盲点がたくさん出るはずだと思う。
 老境にさしかかって人生に悔いはいくらもあるけれども,楽器をいじる機会を逸したこともそのひとつ。特に,中学校に入学したときね。なぜ吹奏楽部に入らなかったのか,と。ま,今さらこんなことを言っても愚痴にしかならないんだけど。

● ステージで演奏している団員を見ててすごいなぁと思うのは,20年30年と演奏することを継続していることです。創立以来のメンバーもいるらしいから,もっと長く継続している人もいるわけだろう。
 自分が飽きっぽい性格だってことをわかっているので,ヴァイオリンにしろフルートにしろ,継続できている人を見るとすごいもんだなぁと思う。まして,栃響でやれているってのは相当すごいんですよ。

● アンコール曲は,シベリウスの交響詩「春の歌」。これをアンコールにもってくるってのも,サービス精神が旺盛というか,一曲分多く聴くことができたって感じになりますね。
 こういうサービス精神は客席側からすれば大歓迎なんだけど。

● プログラムの団員名簿に岡本潤さんの名前があった。一昨年のコンセール・マロニエ21(弦楽器部門)で第1位になった人。その彼がコントラバスに賛助出演してたんですね。

2012年6月3日日曜日

2012.06.03 古河フィルハーモニー管弦楽団第7回定期演奏会

小山市立文化センター大ホール

● 6月3日(日)は古河フィルハーモニー管弦楽団の第7回定期演奏会があった。開演は午後2時。会場は小山市立文化センター。チケットは1,000円。

● 今回は「名曲プログラム」と銘打たれている。まず,ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」を演奏した。休憩後,次の5つを演奏。
 シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」より導入部
 ストラヴィンスキー 組曲「火の鳥」より「カスチェイ王の凶暴な踊り」「子守歌」「終曲」
 シベリウス 交響詩「フィンランディア」
 ホルスト 組曲「惑星」より第4曲「木星」
 エルガー 行進曲「威風堂々」第1番

● この楽団はサービス精神が旺盛だ。今回は演奏の前に曲の解説を入れた。語るのは稗田遼子さん。朗読や語りで活動している人。
 ヘタに解説されるとかえって邪魔だと感じるものだろう。が,稗田さんの語りはさすがにそんなことはなくて,解説そのものを味わうことができた。
 和服で登場。叶うことなら洋装の彼女を見てみたかったという気もするんだけどね。

● ライブは耳だけではなくて,目の保養にもなる。眼福を得ることができる。要するに,演奏中の奏者って,格好いいんだよねぇ。見事に格好いいんですよ。見ほれてしまうんですよ。
 何でなんだろうねぇ。集中と緊張の然らしめるところというだけでは説明がつかないような気がするんですよ。音をだすことって,人間にとっての根源的な快楽というか,夢中にさせるものっていうか,いわく言いがたい何かがあるのかもしれないねぇ。
 もちろん,腹筋と背筋は鍛えているはずで,そのフィジカルな要素も預かって力あることは間違いないんですけどね。

● さて,「田園」。プログラムによると,「恣意的なテンポ・ルバートは極力避け,インテンポを尊重して演奏する」とあった。「一般的な演奏とは大分違うものになるかもしれないが」というのであるが,ぼくには正直わからなかった。
 ぼくが聴いているCDは,小澤征爾指揮,サイトウキネンオーケストラのものと,ネヴィル・マリナー指揮,アカデミー室内管弦楽団のものの2枚だけれども,残念ながらというか当然にしてというか,テンポの違いを感じ分けることができないのだった。
 けれども,そんなことはこの楽団の演奏を楽しむうえで何の妨げにもならない。初っ端から引きこまれ,彼らが紡ぎだす音の世界に没入することができた。

● ぼくは生まれてこの方,手抜きだけで人生を生きてきた。困難に挑戦するなんてことは,ぼくの辞書にはない言葉である。そうではあっても長年生きていればいろんなことがある。つけなくてもいい垢をつけてしまったりもする。
 ライブで音楽を聴いていると,そういったものが溶けていくようだ。音楽だけに浸っていることができる。そういう時間を持てるってのは,幸せなことなのだと思わないわけにはいかない。

● 帰宅後,エルガーの「威風堂々」を繰り返して聴いた。そういうキッカケをもらえることもまた,ライブの恩寵というべきだろう。
 次回は来年の1月20日。マーラーの1番に挑む。当然,行くでしょ。