2012年6月24日日曜日

2012.06.23 ベルリン交響楽団-3大交響曲

栃木県総合文化センター メインホール

● 栃木県総合文化センターに今年は3つの海外オケが来る。その2つめがベルリン交響楽団。その演奏を聴きに行った。
 チケットはソールドアウト。かくもあろうかと思って,発売開始日の2月4日に買っておきました。S席を奮発。5千円。週に8千円のこづかいから,これをまかなうのはそれなりに大変ではありますけどね。
 だが,しかし。ベルリン交響楽団はこのあと,サントリーホールでも演奏するんだけど,そちらのチケットは1万6千円なのだ(曲目は同じではないけど)。ホールの違いを考慮しても,わが総合文化センターの5千円は格安ではないか。であってみれば,買うでしょ,買わなきゃ損でしょ。
 開演は午後6時。座席は指定されているわけだけど,例によって早めに到着。

● 地元のアマオケの演奏会とは華やぎが違いましたね。まず,女性のお客さんのおめかし度が違う。音楽を聴く私,をちゃんと演出してるっていうか。
 地元のアマオケを聴きに来る人たちとは客層が違うのか,同じ人たちが違った装いで来ているのかはわからないけれど,華やいでいるのはけっこうなことだ。

 と書くことになるかと思っていたんだけど,そんなことはなかった。この時期ですからね,おめかしの自由度は限られますよね。
 セレブとかハイソとかいった雰囲気もない。ぼくの隣の女性グループは共通の友人の悪口で盛りあがり,後ろに座ったオヤジは床屋政談に没頭。要するに,ごく普通の人たちで客席は埋まっていた。
 かくいうぼくも,Tシャツに半ズボン,サンダル履きっていういでたちだったからね。サンダル履きはさすがに他にはいなかったかもしれない。景観を乱してしまったかも。

● この演奏会の副題は「3大交響曲」。したがって,演奏曲目はシューベルトの「未完成」とベートーヴェンの5番,ドヴォルザークの9番ということになる。
 その人なりの「3大交響曲」があるはずで,3つ選ぶならすべてベートーヴェンだろっ,とか,どうしてマーラーが入ってないんだよ,とか,ブラームスの1番はどうしたんだよ,とか,異論百出するはずのものでしょ。
 であっても,それじゃこの3つの中に聴きたくない曲があるのかと言われれば,ありませんと答えるしかないわけで,ぼくもワクワクしながら開演を待った。

● ただね,ぼく程度の聴き手だと,聴く前からベルリン交響楽団という名前に負けちゃって,巧いはずだ,感動するはずだって思いこんで,その思いに引きずられることになりはしないかなぁという不安があった。
 ベルリン・フィルやウィーン・フィルが世界のオーケストラの中で突出した存在かといえば,どうもそうでもない。クラシックといえばドイツ音楽が主流になっているけど,だからオケの技量もドイツがダントツかといえば,わりとそうでもない。そういう話も聞くんだけどね。
 音楽を聴くという体験は徹底的に個人的なものだから,思いこみだろうと何だろうと,感動した者勝ちでいいんだけどさ。

● 「未完成」からスタート。
 プロ,アマを問わず,ステージ上の奏者は,指揮者がタクトを振り下ろした瞬間に,本気モードに入ってしまうものだろう。今日は軽く流しておこうともし考えていたとしても,本番が始まれば気を入れてしまうものだろう。
 それを前提にすると,会場のスタッフに,この楽団が日本に着いたのはいつなのか訊いてみようかと思った。つまり,疲れが残っているのじゃないかと思えたんですよ。こんなものなの,って思えてしまったんですね。
 もちろん,ぼくの耳が悪くて,いいをいいと感じられなかっただけなのかもしれないんだけど。たぶん,そうなのだろうと思うんだけど。

● けれど,「運命」の後半から変わってきた(とぼくには思われた)。調子があがってきた。第3楽章の途中からトップギアに入ったなと思えた。
 最後の「新世界より」はその勢いを持続。こちらは,息をつめてステージを見守るって状態。オレ,ステージに支配されてるわ,って感じ。
 なんだけど,こちらの期待値が高すぎたのだろう,満たされない思いが最後まで残ってしまったのも事実。

● 東洋人の奏者が何人もいたし,ティンパニはおそらく南米から来ている人だろう。ユダヤ系もトルコ系もいる。ベルリン交響楽団だからといって,ゲルマン人だけじゃない。日本のオーケストラにも外国人奏者がいることがあるけれども,それよりもはるかに高い比率で多国籍。
 総じて,団員はリラックスしている感じ。リラックスと集中はむしろ相性がいいんでしょうね。

● コンマスは年配の男性。コンマスの隣,1stの2番奏者も渋い感じの男性だった。こちらはカラヤンを思わせるいい男っていうかね。このふたりが絵的にも面白くて,っていうか,様になっている感じがして,この二人を見ている時間が一番長かったですね。
 年をとっても絵になる男ってあんまりいないじゃないですか。生物学的にも,子育てを終えた男がなぜ生存しているのか説明がつかないなんて言われることがあるじゃないですか。こんないい具合に年を取ることもできるんだっていう実例を見ると,ホッとするっていうかね(ぼくはもう手遅れだけど)。
 もっとも,彼らは見かけより若いことが多いから,じつはぼくの印象ほどには年寄りじゃないのかもしれないんだけど。

● 指揮者はリオール・シャンバダール。指揮台にあがるのも大変なんじゃないかと思うほどに太っている。でも,その体型も含めて,まぁこの人も絵になること。
 演奏会のチラシでは「音楽への情熱が身体中から迸るマエストロ」という表現で紹介されている。それあればこそ絵にもなるんでしょうね。
 指揮者なんかやってると胃がいくつあっても足りないだろうなと思うことが多いんだけど,彼はオーケストラを支配してる感じ。おまえらが何を言っても一歩も引かないぞっていう。
 最後は日本語で挨拶。茶目っ気もある。
 どうでもいいんだけど,タクトを持つ右手の小指を立ててるんですな,この人。

● アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第5番。これで終わりかと思ったら,さらにあと2曲,あわせて3つも演奏してくれた。
 ステージを去るときは客席に手を振る団員が多かった。本国でも同じことをしているのかどうかは知らないけれど,ショーマンシップも旺盛だ。ここまでサービスしてくれると後味が良くなりますね。

● 客席も彼らに拍手を惜しまなかった。後半からがぜん良くなったのは(最初から良かったのかもしれないんだけどね),客席が彼らを乗せたってのも一因かなぁと思いますよ。

● できれば,バーにでも立ち寄って,生ハムにビールか,チーズをはさんだフランスパンをスライスしたもので白ワインでもやりながら,余韻を反芻したい気分だなぁ。しかぁし,それをできるだけの経済的な余裕はないんだよねぇ。

● ところで,「運命」の第2楽章だったかな,終わり頃にミャーという猫の鳴き声のような音が聞こえてきたんだけど,あれは何だったのだろう。

2 件のコメント:

  1. はじめまして。私もこの演奏会に行きました。未完成が物足りなかったこと、でも運命後半からは楽しめたこと、コンマスのお隣さんがカッコ良かったことなど同感することばかりです。
     追加するのはファゴットの2人の私語が目立ったこと(何を話ししてたんだろ?)、指揮者がデカくてフルートとオーボエが見えなかったことくらいです。
     管理人さんほどこまめではありませんが、宇都宮在住なので同じ演奏会に行くことになります。更新を楽しみにしております。
     追伸:確かに猫の鳴き声がしましたよねー。不思議だ!

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    1. ありがとうございます。
      そうでしたね。管の奏者の顔が見えませんでしたね。2階席の方がよかったかもしれませんねぇ。
      とはいえ,宇都宮でドイツのオーケストラの演奏を聴けるんですからね。そういう時代になったんだなぁと,老いの繰り言をつぶやいていますよ。

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