なかのZERO大ホール
● 5月に聴いたマイクロソフト管弦楽団のファミリーコンサートのプログラムで,同団指揮者の山口琢也さんが立ちあげたクリビア管弦楽団のことを知った。その時点でこの楽団の演奏会に行くことを決めてましたね。
● ひとつには,山口さんのオーラといいますか,この人が立ちあげた楽団なら聴きに行って失望することはないだろう,と思ったことですね。
それと,演しものがドリーブのバレエ「コッペリア」であること。オーケストラの生演奏をバックに,ステージでバレエが展開される。バレエ公演って,音楽は録音を使うのが普通だと思う。オケピットにオーケストラがスタンバってるなんて,それだけでも贅沢だ。しかも,それを1,000円で鑑賞できるんですよ。お得でしょ。
開演は午後5時半。
● バレエはクリビアバレエカンパニー。演出・振付は主宰者の田中舞花さんが担当。
ぼくはバレエに関しては(関しても)無知蒙昧で何もわからないんだけど,彼女のあいさつに「アマチュアだからこそできるアツい舞台をどうぞお楽しみ下さい」とあった。アマチュアだからできることってたしかにあると思う。管弦楽だってそうだ。プロの無難に巧い演奏より,たどたどしくても記憶に残るアマチュアの演奏って今までにもあったもの。
記憶に残る理由が何なのかを言葉にできないもどかしさがある。演奏者の熱い思いとか,真摯な姿勢とか,鮮度を保った態度とかって言ってしまうと,そこからこぼれ落ちるものがある。それだけじゃないんだよねぇ。
● 客席はほぼ満席。この公演の贅沢さを大勢の人が知っているわけだろうね。
1階席の中程に座ったんだけど,次の機会があれば2階にあがろうと思う。要するに,オケピットの中が見える席。オーケストラが演奏している様子も見たい。
● 舞台の設営も素晴らしかった。アマチュアがここまでよくやったなって思う。軽くて明るくて,でもチャチと思わせない。お手本はあるのかもしれないけれど,細かい工夫を重ねたんでしょうね。
これねぇ,普通はもうちょっとゾンザイになるものなんだよねぇ。手抜きが見えるものなんですよ,アマチュアが自作するとね。しかるべき業者に任せたんだろうか。とすると,お金がかかっているはずだ。
そう,お金がかかっているなと思わせますね。本格的。照明や衣装も。これだけの環境を整えるって大変でしょ。ひとり1,000円の入場料だけで賄えるとは思えない。足りない分は誰が出したのだ。って,出演者が負担したに決まっているよね。
● 舞台上で繰り広げられるダンスも,ゲストダンサーを迎えて相当に本格的だった。賑やかで華やか。そして,軽やか。
いっぱいいっぱいのパフォーマンスなんだろうけど,傍目にはのびのびとやってる感じ。私,楽しんでやってますよ,ってのが伝わってくる。
これ,アマチュアの特権。特権を行使するのに遠慮があってはいけないよね。
● これだけの舞台を作れるものなんですね。主宰者の田中さんはもちろん,他の団員さんもモチベーションが高いんでしょうねぇ。手間ひまを惜しんでいない。陳腐すぎて申しわけないんだけれども,どうしたってこれが必要条件。
問題は,何が彼女たちをそうまでさせるのかってことなんだけどね。「好き」ってことですよと言われそうだな。それはそうなんだけれども,その言い方だけではこぼれてしまうものがあると思うんだよねぇ。
● 客席への違和感があった。公演が始まってもざわつきが治まらないとか,公演中に席を立つ人がけっこういるとか。
乳幼児を連れた親子連れが多いってのが理由のすべてだ。母親が子供をトイレに連れて行くわけだよね。その母親にスタッフのネームプレートを付けている人もいたから,それがイレギュラーなのだとも思いにくい。
バレエ公演って,そもそもそういうものなのか。
ただ,そういうものなのだと割り切ってしまえば,さほど気にもならない。違和感は違和感として,後半は舞台上の演技を観ることに集中できた。
● もしそういうものなのだとすれば,理由はたぶん次のふたつだろう。
ひとつは,管弦楽に比べると,バレエの場合,ステージ側が客席に対してフレンドリーだってこと。
管弦楽だと拍手するところも決められている。変なところで拍手なんかすると,白い眼で見られる。が,バレエはその辺の決まりごとが緩やか。というより,自由に拍手していい感じ。自分がオッと思ったところで拍手してもいい,と。むしろ,ステージは客席に対してそれを慫慂しているようだ。
もうひとつは,管弦楽には音しかないのに対して,バレエの場合はダンスという目に見える具象があるってことね。あるいは舞台がある。具体的な手がかりがある分,音だけの管弦楽よりわかりやすいかもしれない。
ご来場ありがとうございました。また是非いらして下さいませ。
返信削除はい。今度はオケピットが見える席で,ぜひ。
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