2012年9月17日月曜日

2012.09.16 橋本陽子エコール ドゥ バレエ 宇都宮スタジオ創立45周年記念公演

栃木県総合文化センター メインホール

● バレエを観に。「ジゼル」全幕。席はA・Bの2種。A席が3,000円でB席が2,500円。A席を取っていた。プログラムは別売で1,000円。開演は午後2時。

● 「ジゼル」の前に,言葉は悪いけれど,前座があった。この学校の生徒さんたちの発表会といった意味合いのものでしょう。
 ただし,侮ってはいけない。ぼくには充分に面白かった。っていうか,これで満足してしまったせいか,「ジゼル」の印象がやや薄くなった。

● モダンダンスというのかコンテンポラリーというのか,男女ふたりによる「Connect」。楽しめた。ちょっとシュールっていうか,あ,現代ってこんな感じだよな,って。ま,現代に限らず,若者っていつの時代でもこんな感じかなぁ。
 もちろん,そんなのはこちらの勝手な解釈で,そういうことを狙ったダンスではないんだろうけどね。

● 「みにくいあひるの子」もまとまっていた。お母さん役のダンサーが印象に残りましたね。可愛いかったからね。

● トウシューズを履いてつま先立ちができるってだけで,ぼくにしたら驚異。なんでそんなことができるのだ。
 その状態で細かく歩いたり,クルクル回ったり,小さくジャンプするんだからね。無茶なことするなぁと思うんだけどね。
 足の甲を極端に外側に向けるのもそう。バレエってダンサーに不自然な動きを強いる。
 でも,その不自然な動きがきれいなんだよねぇ。不自然な動きがダンサーをきれいに見せる。美は自然にありってのは,嘘だなぁ。自然にしてたんじゃきれいにならない。

● さて,「ジゼル」。ひと言でいえば,豪華絢爛。こういうものを宇都宮でも観ることができるんですな。ありがたいね。
 主演ダンサーの遅沢佑介さんは,宇都宮の星。彼のようなスターが出てくれると,バレエ全体が盛りあがっていくんでしょうね。少なくとも栃木県ではバレエ界に追い風が吹いている,と。いや,そんな単純なものでもないのかな。

● 第2幕を観ながら感じたこと。ソロやデュエットの「超絶技巧」よりも,女性ダンサーの群舞の方をぼくは好むようなんです。なぜかというと,女性美の極致のひとつが,わかりやすく展開されるからかなぁ。
 あのね,女性美ってつまるところ,セクシーさなんですよ。間違っているかもしれないんだけど,今のところはそう思っている。ま,男性が創りだす美もまた同じかもしれないんだけどさ。

● 「極致のひとつ」というと,極致が複数あるのかよと突っこまれそうだな。極致はひとつだとしても,その表現方法は複数ありますよね。
 たとえば,日本舞踊。日本舞踊にはバレエのようなダイナミックな動きはない。静かにゆっくりと動く。でも,その過程でゾクゾクするようなセクシーさを感じることがある。そういうことです。

● で,バレエの表現なんですけど。
 女性美=セクシーならば,裸で踊ればいいじゃないかなどと,マヌケなことは言わないでくれよ。裸で踊ってセクシーを表現できるんだったら,苦労はないって。
 先にも書いたけれども,美って反自然的な動きに宿る。天然の世界に美はない。リアルではなくヴァーチャルなもの。放っておかれると消えてしまうもの。

● そのヴァーチャルな美を生身の身体で表現しようとするところに,バレエの真骨頂がある。
 そのためには,長年にわたって鍛えあげた身体と,その身体を使った高い表現能力がどうしたって必要だ。考え抜かれた演出と振付も要るのだし,架空の舞台も設定されなければならないのだ。
 って,何をホザいてるんだか,オレ。

● チャイコフスキーのような例外はあるにしても,バレエ音楽って音楽だけ聴いてもあまり面白くない感じ。
 オペラもそうだけれども,バレエのストーリーもたいては大雑把で単純,かつ荒唐無稽なもの。
 要するに,音楽や物語ではなく,メインはステージ上のダンスにある。あたりまえすぎるほどあたりまえのことだけど。

● であるならば,ダンサーは個としても美しくなければならない。そうであるために,ダンサーたちは涙ぐましいまでの努力をしているものだろう。
 もし,ぼくがとんでもない身体能力の持ち主であったとしても,バレエのステージに立つことはおそらく許されまい。

● なおかつ,プロスポーツと同じで,第一線で活躍できる期間は,自ずと限られるだろう。
 ゆえに,バレエのステージにはある種の儚さが漂うはずだ。そういうものに人生を賭けた人たちの覚悟と哀感。アマチュアが好きでやっているのなら,話は別だけれど。
 今回の公演で,その哀感を感じることはなかったけれども,それを感じたがっている自分がいることは感じた。そんなのはおまえだけだよって言われるかもしれないんだけどさ。

● すべての公演が終了したのは午後6時。二度の休憩をはさんで,4時間の公演だった。
 プログラム代を含めて4千円でこの4時間を過ごせれば,まずもって文句はないです。世間の憂さを忘れてファンタジーに身をまかせるって,相当に気持ちがいい。
 次回は12月23日に,同じ県文センターでクリスマス・チャリティー公演がある。

2 件のコメント:

  1. 見てくださってありがとうございます。私もコールドの美しさが大好きです。

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    1. コールドっていうんですね。きれいなものですよねぇ。

      こちらこそ,長い文章を読んでいただいてありがとうございます。
      どうぞ,ご精進ください。

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