2012年9月25日火曜日

2012.09.23 那須フィルハーモニー管弦楽団「名曲コンサート」

那須野が原ハーモニーホール大ホール

● 那須フィルハーモニー管弦楽団の「名曲コンサート」は,例年,この時期に開催される。
 ただ,昨年は東日本大震災があって,3月13日に予定されていた定演は当然中止になった。それを秋に順延したので,この「名曲コンサート」が開催されることはなかった。ので,「名曲コンサート」としては2年ぶりということになる。

● チケットは500円。もちろん自由席。
 ぼくはかなり前に入手しておいた。なぜなら,ソリスト(ピアノ)が仲道祐子さんだったから。500円で彼女のピアノが聴けるなんてと購入者が殺到し,早々にチケット完売ってことになったら困るからね。
 ま,実際は当日券もあったんですけどね。とはいえ,客席はほぼ満席。開演は午後2時。

● 曲目は次のとおり(演奏順)。
 ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
 ヨハン・シュトラウス トリッチ・トラッチ・ポルカ
 佐藤眞 児童合唱,混声合唱及び管弦楽のための組曲「美しい星に」から第4曲「粉雪けって」
 フンパーディンク 歌劇「ヘンゼルとグレーテル」から「夕べの祈り」
 ヨハン・シュトラウス  ワルツ「美しき青きドナウ」
 ガーシュウィン ラプソディ・イン・ブルー

● このコンサートでは指揮者の大井剛史さんの解説がある。それが楽しみでもある。もっとも,うるさいと感じる人もいるかもしれない。
 今回は,ベートーヴェンの5番について,なぜ運命と呼ばれるようになったか,日本以外ではそのように呼ばれることはあまりないという紹介のあと,ふたつのことを念頭に置いて聴いてほしいと言われた。

 その1。冒頭のダダダダーンという旋律が何度も何度も繰り返される。その繰り返しが生む緊張感を感じてほしい。ひとつの旋律はどうってことなくても,それが何百回と繰り返されることで巨大な何かが構築されることを味わってほしい。

 その2。楽章ごとの展開。1楽章は厳しい演奏になる。が,2楽章は穏やかなものに変わる。厳しいものと穏やかなものが戦った結果,2楽章は穏やかが勝った。けれども,この曲に主人公がいるとすれば,その主人公はそれに満足しなかった。3楽章以降どうなっていくか。

 それと,楽器の紹介。ピッコロとコントラファゴットとトロンボーンは4楽章まで出番がない。途中で寝ないかどうか見張っててくれ,と。
 もちろん,笑いを取りにきたわけだけど,おまえらも寝ないで聴けよってことだったか。

● で,その5番。
 充分に堪能できた。ぼくはハードな人生を生きているわけでは全然ないけれども,これでしばらく生きていけるなと思いましたね。
 いや,そこまで言うとさすがに大げさなんだけど,何とったらいいんでしょう。なにほどのこともない日々の句読点にはなりますよね。
 ガソリンスタンドで自分に給油した感じといいますか。満タンにしてもらったっていうね。問題は,ぼくという機械の燃費があまり良くないことなんだけどね。

● ひとつには,演奏している人たちの表情や体の動きが,近くで見えることの効果だと思いますね。この視覚効果って相当に大きいのじゃないかなぁ。
 ステージから懸命さと集中が伝わってくる。小さなミスはたぶんあったと思うんだけど,そんなものはこちらが演奏に集中することをまったく妨げない。
 大編成のオーケストラだってこともあるかも。迫力はすごいですよね。

● 15分間の休憩の後,ヨハン・シュトラウスの「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。トリッチ・トラッチというのは,女性のおしゃべりの擬態語のようなものだとは,大井さんの解説。トリッチ・トラッチを早口で言うと,なるほどと思うわけです。
 ここから那須野が原少年少女合唱団が登場。

● 児童合唱,混声合唱及び管弦楽のための組曲「美しい星に」は,那須野が原ハーモニーホールが10周年を迎えたときに,佐藤眞氏が記念に作った曲だとのこと。知らなかったのも道理。

● 最後はガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。この曲にジャズ成分が濃いことはぼくにもわかるが,もともとガーシュウィンがジャズ曲として作ったものを,別の人がオーケストラ曲にしあげたもの。これも大井さんの解説で知ったこと。
 ここで仲道祐子さんが登場。美貌のピアニストっていう言い方をされるのは,たぶんご本人がいやがるのじゃないかと思う。しかし,ステージがグッと華やかになったことはたしか。

● 彼女がアンコールでガーシュウィンの「プレリュード」を演奏したあと,合唱団も登場して,全員でスーザ「雷神行進曲」を。盛りあがるわけだよね。
 こんなバラエティがほかで聴けるかい? 終演後,出口に向かう爺さまたちが,「いや,なかなかでしたねぇ」と言い合っていた。満足そうだった。
 でも,やっぱり「運命」かな。名曲中の名曲っていいますか,今さらだけど。この曲がこの世界にあるってことね。あるとないとじゃ大変な違いだぞ。

● その「運命」をスマホにつないだイヤホンで聴きながら,雨の中を西那須野駅まで歩いた。ちょうど駅に着いたときに聴き終えたのは, 小さなラッキーだった。
 でもね,こうして歩きながらベルリンフィルの演奏を聴けるってのはすごいことだと思う一方で,さきほどの興奮はこの聴き方じゃぜんぜん甦ってこないのだった。当然なんだけどね。

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