栃木県総合文化センター サブホール
● 半世紀近く続いている卒業演奏会。昨年も一昨年もあったわけだ。が,事前に察知できたのは今回が初めて。総合文化センターのホームページを見て知った。たまたまだ。
一般に開放されているとはいえ,学内行事だろう。それほど熱心にPRしているわけでもないようだ。観客のほとんどは生徒・学生の保護者,卒業生,在学生といった学校関係者だから,外部へのPRする必要もさほどない。
だからといって,ぼくのような純部外者には居心地が悪いかというと,そんなことはまったくなく,ごく普通の演奏会と同じ。
● 開演は午後5時半。入場無料。終演は8時になった。
平日のこの時間帯をこんなふうに過ごすのは,ぼくの中ではいわゆるひとつの理想型。すこぶる上質な2時間余になった。タダでこういう時間を持てるんだなぁ。
この短大と高校は,栃木県における音楽の集積基地。その総決算ということだからね。
● 出演者の全員が女子。それ以前に,卒業生のほぼ全員が女子。
まずは電子オルガン。ステープラーをホチキスと言うがごとしで,ヤマハの製品名であるエレクトーンが電子オルガンの代名詞になっていますか。
大型スピーカーをふたつつないで音をだす。立体的な音になる。自分で曲を作るときには便利な楽器かも。
いろんな音を出せるからひとりオーケストラも可能だろうけど,長く聴いているのはちょっとつらい感じ。
高校生の演奏が面白かった。面白かったというか,へぇぇと思うことが多かった。
● 電子オルガンを別にすると,ソプラノが3人,ピアノが3人,フルートが1人。
ステージドレスで登場する彼女たちは,すでにレディの趣をたたえている。すぐにでも社交界にデビューできそうな。
● 印象に残ったのは近藤きららさんのソプラノ独唱。マスカーニ「友人フリッツ」より“わずかな花を”。
まず豊かな声量。エンジンにパワーあり。技法的な部分はこれからに期待できる。とにかく,まだ若いんだから。
ピアノでは最後に登場した川口真由さん。女王登場の趣があった。演奏したのは,シューマンの「幻想曲 ハ長調」の第1楽章。
この先,いくつかは待ち受けているであろう落とし穴にはまって,自ら成長をとめてしまうことがない限り,さてさて,どこまで行くものやら。
● 短大の卒業生はピアノが2人。小堺香奈子さんがドビュッシーの「喜びの島」。ドビュッシーを聴くときは,どれだけ頭を空っぽにできるかだと思う。タイトルも忘れるくらいがいいんじゃないか,と。
そのように聴けた自信はぜんぜんないけれども,何となくいい感じ。小堺さんの粘着質でない演奏のおかげかも。美女にはドビュッシーがよく似合う,というのも発見。
髙橋奈々美さんはショパン。ソナタ第3番の第4楽章。ショパンって繊細で華麗なイメージだけども,力強くもある。ピアニストには力が必要だ。髙橋さんのショパンはその力があると思った。
● あと,研究科の神山有理さんのフルート。トゥルーの「グランソロ第5番」。もちろん,今回初めて聴かせてもらう曲なんだけど,トリを飾るに相応しかった(と思う)。
要は上手だなぁってことなんだけど。フルートを吹く身体になってるっていうか。技術の巧拙とは別のところで,客席を自分に集中させる魅力がある。
● というわけで,先に書いたとおり,上質な平日の夜を過ごさせてもらえた。
客席の雰囲気もよかった。お客さんの粒が揃っている印象。変なことをする人もいないし。さすがは音楽科の演奏会で,それは客席にもうかがうことができた。こちらも,それなりに気を遣うようになる。
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