新宿文化センター 大ホール
● この楽団の演奏会に行くのは初めてのこと。なにゆえ今回は行くことにしたのかと言えば,モーツァルトの「フィガロの結婚」をほぼすべて,コンサート形式ながら聴くことができるから。
開演は午後1時。チケットは2,000円。
● 楽団のサイトには,「8型2管編成の比較的小さなオーケストラ」で,「後の作曲家に多大なる影響を与えたハイドンの交響曲を積極的に取り入れ,これを目標にしました」とある。
察するに,真面目で志の高いアマチュアオーケストラなんだろう。オペラを演奏するのはこれが初めてで,それなりに戸惑いもあったとプログラム冊子には書いてあるんだけど,それを感じさせることはなかった。
細工は流々,仕上げを御覧じろ,といったところか。
● キャストは,アルマヴィーヴァ伯爵が大川博さん,伯爵夫人に鈴木麻里子さん,スザンナが桐越麗さんで,フィガロが小鉄和広さん,ケルビーノに渡邉智美さん,マルチェリーナに有田真恵さん,バルトロは大塚博章さん。
合唱は慶應義塾ワグネル・ソサィエティー合唱団。
● オペラの真骨頂は,何だかんだ言っても歌唱。人間技とは思えない歌いっぷりに聴きほれる快感。
鈴木麻里子さんをはじめ,芸達者を揃えてきた。
● 「フィガロの結婚」って,要するにドタバタを楽しむものですか。たんなるドタバタではすぐに飽きられてしまうから,そこにちょこっと人生を考えさせるような要素を仕込んでおく,と。
いや,違うよな。そういうことではないんだと思いますね。
● “男と女”や“人生”って,リアリズムに徹してしまうと,どうでもいいっていう結論しか出てこない。たいていの大人はそう思っているのではあるまいか。おそらく,昔の人も同じだったろう。
かといって,どうでもいいとは認めたくないという機序もけっこう強烈に働く。
● その面白くもないものを面白く住みなすために何が必要かといえば,高杉晋作よろしく,“心なりけり”と言ってみたいわけで,そうした工夫がそちこちにある。
エンタテインメントが絶えた時代はない(戦争中にだってあった)。それそのものが,面白く住みなすための工夫だろうね。
● 伯爵夫人が浮き世離れした真面目人間。けれども,彼女がドラマの結節点になっているようだ。
ケルビーノも面白い役どころだけれども,彼を抜いてもストーリーは作れる。が,伯爵夫人を除いてしまうと,ストーリーを紡ぐのはかなり難しい。
ドラマを作るには,こうした浮き世離れが必須なのかもしれないなぁ。リアルだけだとどうでもいいっていう結論になるしかないんだから。
● エンディングを迎えて,梁塵秘抄の有名な一節が浮かんできた。遊びをせんとや生れけむ,戯れせんとや生れけん。
そういうことなんだろうなぁと思った。平凡な結論だけれども。
0 件のコメント:
コメントを投稿