2016年12月19日月曜日

2016.12.17 真岡市民交響楽団 第54回定期演奏会

真岡市民会館 大ホール

● クラシックの演奏をライヴで聴いてみようかとふと思って,初めて聴いたのが真岡市民交響楽団第41回定演だった。そこで何だこんなものかと思っていれば,その後はなかった。
 現在まで続いているのは,ぼくにとってはこのうえない幸運だったけれども,それもこれもあのときの演奏が熱演であって,何も知らなかった自分の何かを捕らえたからだと思う。
 曲はブラームスの2番だった。けれども,別の曲であっても,結果は同じだったはず。曲ではなくて演奏がぼくを捕らえた。この曲ではダメだったろうと思える曲なんて,探す方が大変だ。
 というわけだから,この楽団には個人的に格別の恩義を感じている。

● しかし,ここのところ,やむを得ない事情からなんだけれども,この楽団の演奏会に行けないことがしばしばあった。真岡じたいから遠ざかっている。
 なんだか,真岡がアウェイになってきた感がある。去る者日々に疎し,といったところ。何とかしないといけない。

● 1年ぶりになる。春の演奏会は都合がつかなかった。
 開演は午後6時。チケットは500円。当日券で入場。指揮者は佐藤和男さん。曲目は次のとおり。
 ベートーヴェン コリオラン序曲
 ハチャトゥリアン 組曲「仮面舞踏会」
 チャイコフスキー 交響曲第1番「冬の日の幻想」

● ハチャトゥリアン「仮面舞踏会」は先週も聴いたばかりだ。こういうことってわりとあるね。確率の偏りというか,同じ曲がある時期にドッと演奏されるってこと。
 音楽として見れば,第1曲の“ワルツ”を聴ければ8割を聴いたことになるっていう感じ(素人の感想だと思う)。“ノクターン”のコンミスのソロも聴かせどころではあるんだけど。

● ぼくはチャイコフスキーの6つの交響曲も,CDはカラヤンで聴いている横着者だ。しかも,スマホ+イヤホンでしか聴かない。
 となると,CDについて語ってはいけないことになる。と言いながら語ってしまうんだけど,カラヤンだろうとムラヴィンスキーだろうと,CDでチャイコフスキーを聴いても隔靴掻痒の感がある(しっかりと道具立てを揃えて聴けばそんなことはないのだろうか)。何かが足らない。

● 音しかないからだ。音があれば充分だろうと言われるかもしれない。が,それで充分だと思えるのは,聴くことにおいて相当な水準に達した聴き巧者に限られるのではないか。聴き巧者の多くは実際に演奏する奏者(もちろん指揮者を含む)でもあるだろう。
 ぼくはダメだ。音だけではその演奏についてのイメージを作るのに,まったく情報不足だ。
 視覚が欲しい。奏者が演奏している様が目の前で展開するという状況で初めて,その曲に対する感想を形作ることができる(それでもできない場合もある)。

● 「冬の日の幻想」とはチャイコフスキー自身が付けた標題であるらしい。ロシアの冬だ,日本の冬とは寒さの質が違うだろう。幻想など見れるような寒さではないんだと思うんだけど,家の中で外を見ながらってことなんだろうか。ロシア人の寒さへの耐性っていうのは,ぼくらとはまるで違うんだろうけどね。
 ま,本質とは何の関係もない話。

● 今回の演奏で最も印象に残ったのは,第2楽章のオーボエ。最初に主題を歌うところ。
 こういうところでオーボエは真骨頂を発揮する。そのように作曲家が組み立てているんだろうけれど,“真骨頂を発揮する”と感じさせる演奏だった。

● ティンパニを担当していた女性奏者は何者? あたりを払うような存在感があった。ただ者ではない感を発散していたというか。
 コンミスの踏みこみの良さ。女だてらに(あるいは女なればこそ)果敢に斬りこんでいく様が小気味いい。
 というわけで,今回も演奏そのものに不満はなかった。

● アンコールもチャイコフスキー。「眠りの森の美女」より「ワルツ」。この曲をこれだけの人数で演奏すると,チャイコフスキー自身が構想した曲とは別のものになっているのかもしれない。
 が,そうであっても,いいものはいいということでしょうね。

● 指揮台にスコアはない。佐藤さんは暗譜で振る。今回に限らない。いつもそうだ。
 個々の指揮者によってそれぞれの流儀があるのだろう。どれが良くてどれが悪いという問題ではないはずだ。

● 団員の確保に苦しんでいるようだ。ヴァイオリンやヴィオラでエキストラが過半に達している。東京だとアマチュアオーケストラは毎年増えているという印象があるんだけど,地方ではそうじゃない。
 想像をたくましくすれば,地元在住で地元で働いているという団員はあまりいないのだろう。多くは転勤族(あるいは,その夫人)で,たまたま真岡(あるいは,その近隣地)に通勤しているからその間はオケ活動をやれるけれども,転勤して真岡を離れてしまうと,団員であることもやめざるをえない,となるのかも。
 となれば,これは真岡市民交響楽団のみならず,どこでも同じ問題を抱えているはずだ。

● 栃木県でアマオケの活動拠点になっているのは,真岡のほかに,宇都宮,足利,栃木,鹿沼,大田原,小山,野木だったか。
 今だと宇都宮でも団員確保の苦労から免れているとは考えづらい。こういうところでも地方の苦労というのはあるのかもなぁ。
 こうすれば解決するという処方箋などあるはずもない。地道なリクルートを継続するほかないのだろう。

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