栃木県総合文化センター メインホール
● 開演は午後2時。入場無料。プログラムは別売で300円。バレエのステージを拝見するのは,けっこう久しぶり。昨年の8月以来になる。
● バレエ学校の発表会なのだから,客席もその関係者がほとんどだろうし,主催者側もその前提でコンテンツを決め,準備を進め,当日の進行にあたるのだろう。
そういうところへ,さえないオヤジが一人で出かけていくのは申しわけないようなものだ。山を賑わす枯れ木にもならない。
なので,他のお客さんの邪魔にならないように,そっと後ろの方の席に着座した。
● バレエを見ているのは楽しい。が,自分がバレエを習ったことはないし,バレエの歴史だとか,現代の舞踊全体の中でバレエがどう位置づけられているのかといった,基本的なことを,ぼくはほぼ知らない。
そんなものは知らなくても,見る楽しさが損なわれることはないと思うんだけど,知らないがゆえの気後れのようなものがなくもない。
● 演しものは「Coppélia」。その前に,オープニングのダンスがあった。最後の「Esistenza」がすごかった。何がすごいかというと,速度だ。
コンテンポラリーって言うんですか,モダンダンスって言うんですか。動き(変化)の振幅が大きくて,しかも速い。目が追いついていかないくらいだ。その速度が見る者に快感をもたらす。
● Esistenzaとは,存在とか生存という意味のイタリア語らしいんだけど,意味を知っても仕方がない。というか,このダンスには別の名前を付けてもいいだろう。
抽象画のようなもので,どんなタイトルでもそのように見ようと思えば,そのように見える。「無題」でもいいと思う。
● 「Coppélia」はバレエの古典。ストーリーは頭に入っている。マイムがあるにしても,無言劇であるわけだから,ストーリーが予めわかっていないと,けっこう辛いものがあるもんね。
回転や跳躍で気持ちを表現してるんだよと言われても,解釈の余地がありすぎて,意味を特定することはたぶんできない。ストーリーがわかっていないと。
● 主役スワルニダの演者は幕ごとに交替したようだ。フランツ役の男性ダンサーはずっと同じ人。
見せ場がきちんと見せ場になっている。その見せ場が何度もある。
ぼくのような素人が思うのは,人形のコッペリアを演じるのは大変だろうなってこと。動いちゃいけないんだからね。じっとしていないといけない。じっとしているためにはエネルギーが要る。動いている方が楽なんじゃないかと思うんだけど,実際のところはどうなんだろう。
● スワルニダがコッペリアと入れ替わる場面では,人間と人形をパパッと切り替えていて,その様子も面白い。
「Coppélia」って見どころの多い演目なんですね。コミカルで軽いのもいいですな。
● バレエって究極のところは何なのだろう。音楽も美術も,究極をたずねれば官能に行きつくと言われることがある。官能という言葉に抵抗があるのであれば,生命への信頼と言い換えようか。
芸術とはつまるところ,官能の表現なのだとすれば,セクシーさを湛えていないものは芸術ではない。静物画だってそうだ。
● バレエはストレートな身体表現だから,そこのところはわかりやすいんだけど,他にはないバレエの特質っていいますかね,それって何なのだろうな,と。
人体が生みだす人工美の表現っていう,ありきたりのことしか思い浮かばないんだけどね。
● バレエの動きは反自然の極み。人体の自然に美は宿らない。喰いたいものを,喰いたいときに,喰いたいだけ喰って,ブヨブヨになっている輩は,豚に喰われよ。
・・・・・・ワォッ! 喰われてしまったよぉ。
● 終演は5時20分だった。3時間20分のロングラン。これで無料。ありがたいですな。そのコストは,このバレエスクールに子供を通わせている親御さんが負担してくれているのだろう。
ありがとう存じます。感謝申しあげます。
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