日経ホール
● 今日は特に行こうと決めていたコンサートはなかったんだけど。“オケ専”を見ていたら,明治大学OB交響楽団がブラームスの4番を演奏するコンサートの案内があった。
この1曲だけなのか,それでもいいか,と思って「休日おでかけパス」で東京駅に降り立ったわけなんでした。
● ところが。受付でプログラム冊子をもらって,表紙に記載されているプログラムを見ると,ありゃりゃりゃ。とんでもなく盛りだくさんというか,盛りだくさんすぎるというか。
プログラムは次のとおり。休憩を含めて4時間半の長丁場。開演は午後2時半。入場無料。
千代田フィルハーモニー管弦楽団
ボロディン 交響詩「中央アジアの草原にて」
チャイコフスキー 交響曲第2番「小ロシア」
化学オーケストラ
ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
明治大学OB交響楽団
ベートーヴェン コリオラン序曲
ブラームス 交響曲第4番
Musica Promenade
富貴晴美 大河ドラマ「西郷どん」テーマ
ヨハン・シュトラウスⅡ 美しく青きドナウ
ボロディン 歌劇「イーゴリ公」より “序曲” “だったん人の行進” “だったんの娘たちの踊り” “だったん人の踊り”
グリエール 偉大なる都市への賛歌
● 日経ホールは初めて。オーケストラを乗せるためのホールではない。ステージもオーケストラを乗せるには少し手狭かもしれない。
音響はどうか。悪いと言うつもりはないけれども,良いとも言えない。基本,直接音の世界のように思えた。
● さて。そういうホールで,まずは千代田フィルハーモニー管弦楽団。指揮は和田一樹さん。絵に描いたような市民オケ。というのは,まず年齢のばらつきがかなりある。“演奏したい”人たちが集まって時間をかけてひとつの曲を仕上げているのだと思う。
にしては,定演は年2回の開催だし,定演以外にも今回のような演奏会をはじめ,いろいろと動いているようだ。
● チャイコフスキーはやはり後期の3曲が聴き応えがある。今回の2番は玄人受けする曲なんだろうか。生でも何度かは聴いていると思うんだけど,あまり記憶に残っていない。
金管に出せるだけの迫力を出させるのが,ロシアの伝統なのか。金管の前に座っている木管奏者の鼓膜は無事だったのかと余計な心配をしたくなった。
● 化学オーケストラ。「音楽好きの日本化学学会会員が中心となって,2002年に結成されたオーケストラ」とのこと。若い学生もいる。ので,こちらも年齢のバラツキがけっこうある。
といっても,働き盛りの人は,なかなかオケ活動を継続するのは難しいのだろう。若い人と60歳を過ぎた人がいて,中間がいないという印象もある。極端にいえば,なんだけど。
● でも,こういうオーケストラがあったとは,まったく知らなかった。一般向けの定期演奏会などはやっていないようだ。
化学者というからには女性は少ないかといえば,そうでもあり,そうでもなし。普通にある市民オケと比較すると,女性の占有率は低い。が,弦に限れば女性が多い。
● 指揮は宮野谷義傑さん。指揮者っていうのは,体力と運動神経が生命線ではないかと思っているのだけど,下半身が使えないとなると,それを補うための工夫,本人が工夫と思わないでやっていることを含めて,が詰まっているはずだ。
それはたとえばどんなことなのか。そこまではわからなかったけれど,特注の車椅子を使って指揮をする姿は,悲壮感とかそういうものを微塵も感じさせない。ここに至るまでに,人には言えないようなことを含めて,内面の戦いがなかったわけがないのだ。それらの始末をすべてつけて,今あるようにここにある。
● 明治大学OB交響楽団。この楽団の演奏は一度聞いている。冒頭に申しあげたとおり,この楽団のブラ4しかない演奏会だと思っていた。で,それを聴くためにここに来たということなのだ。
そのブラームスの4番。指揮は夏田昌和さん。満足した。
少しもの悲しい旋律で始まり,それが多彩に展開していく。それを担うのは主には弦なんだけれども,ヴァイオリンの流れるような,たゆたうような,そして時に弾けるような,身を預けるのにちょうどいい調べが連続する。
● 生で聴く以外には,ぼくはもっぱらウォークマンで聴いているんだけども,何を一番多く聴いているかというと,以前はモーツァルトのクラリネット協奏曲だった。今はブラ4かもしれない。
カルロス・クライバー+ウィーン・フィルで聴いている。なんかね,気がついたら聴いているという感じね。
● Musica Promenade。これも初めて聞いた名前。指揮を務めている瓦田尚さんが2003年に立ちあげた。瓦田さんは釜石の出身。となると,東日本大震災を思いだすわけだけれども,この楽団が結成されたのは,大震災が発生するずっと前だ。
その瓦田さん。都立高校の社会科の先生らしい。大学も音大ではなくて早稲田。高校の先生というのは,長時間労働を旨としている職業人の代表だと思っている。それで,オーケストラを主宰するというのは,いかなる魔法によるものか。
● ならば,オーケストラも音大抜きのメンバーで構成されているのかといえば,どうもそうではないようだ。
“だったん人の踊り”が特にそうだったと思うのだが,気が入った演奏。
● 終演は午後7時。ダブルヘッダーで聴いたようなものだ。こういう“フェスティバル”があったんですねぇ。
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