2012年12月24日月曜日

2012.12.23 第30回宇高・宇女高合同演奏会(第九「合唱」演奏会)

宇都宮市文化会館大ホール

● 開演は午後1時半。会場に到着したときにはすでに長蛇の列。開演直前には文化会館の大ホールが文字どおりの満席となった。生徒の父兄や家族だけで大ホールが埋まるとは考えにくいから,ぼくのような部外者もけっこう来てるんでしょうね。チケットは800円。

● この演奏会を初めて聴いたのは3年前。当時1年生だった生徒もすでに卒業している。まことに光陰矢のごとし。高校生たちはこの3年間で身体も精神も大きく成長して卒業していったに違いないが,こちらはそんなこともないわけでねぇ。ま,こういうのは順繰りだけどね。

● 両校とも栃木県を代表する名門。自分の息子や娘が宇高・宇女高に入ってくれれば,親御さんにしてみれば自慢の息子・娘ってことなんだろうなぁ。
 ただね,こういうご時世ですからね,名門校がその後の安寧を保証してくれるわけじゃないからね(じつは時世に関係なく,いつの時代もそうだったと思うんだけど)。これから先,何が起こるかわからない。
 ゆえに。ご油断めさるな,宇高・宇女高生諸君。くさる必要はないぞ,宇高・宇女高を望みながらも別の高校に入学せざるを得なかった諸君。
 っていうかさ,いい高校とは何かと問われれば,自宅に一番近いところにある高校のことだと,ぼくなら答えるぞ。

● 問題は,しかし,油断していなくても,起きるときには起きる。この世はままならぬとはそういうことだ。
 ぼくなんぞはここで思考停止してしまう。すなわち。今を楽しめ。後のことは考えるな。現在を将来の犠牲に供するな。人生は目先の連続。目先良ければすべて良し。

● まず宇女高合唱部,次に宇高合唱団,両校合同の合唱があって,管弦楽の登場。
 スタートはスメタナの「モルダウ」。さすがに相応のたどたどしさが窺える演奏だったけれども,これはこれで可愛らしいともいえる。
 もちろん素晴らしく巧い子もいる。中学のときに吹奏楽部でみっちり練習してきたか,小さい頃から習っているかでしょうね。
 この年代の若者は短時日でグンと伸びることがあるんじゃないかと思っている。ゆえに,中高年は高校生の集中力とノビシロに対して畏れを持っていなければならないというのが,ぼくの変わらぬ信念だ。短時日で伸びた直後の,その香りを味わってみたいものだ。

● 次に合唱団も加わって,ヘンデルの「ハレルヤ」。2年生の音楽選択生も入るから大合唱団となる。
 そして,この演奏会の標題にもなっている「第九」の第4楽章に移る。単純に聴く側からいえば,第4楽章しかない「第九」は「第九」ではない。かといって,この演奏会にそれを求めるのは典型的なないものねだり。
 両校の合唱部(団)は1週間前の栃木県楽友協会の「第九」本番でリハーサルをすませているんだったな。その成果のほどは訊いてみないとわからないけれども,押しだしのいい(つまり,おっかなびっくり声をだしていない)演奏で,客席も大いに満足した(に違いない)。3年前は男声が幼いと感じてしまったんだけど,今回はそんなこともなくて(3年前の自分の感覚を叱ってやりたい),迫力充分。
 音楽選択生が「ハレルヤ」のみならず,「第九」までカバーする。これが並じゃないことくらい,ぼくにも想像できる。時間をどうやりくりしているのか。

● で,話が前後するんだけど,最初の宇女高合唱部。3年前には部員が少ないことにちょっと驚いたんだけど,その部員も増えたようで,まことに慶賀の至り。プログラムに載っているOG会長の挨拶文によれば,8月の県合唱コンクールで金賞を取り,関東大会に出場したそうだ。
 今回は,クリスマスソングをいくつか。乙女たちによる聖なる調べ。
 ずっと不景気で,閉塞感におおわれて,社会全体が縮こまっているようなきらいがなくもないんだけど,彼女たちを見ていると,日本はぜんぜん大丈夫なんだと思えてくる。型にはまった言い方で申しわけないんですけどね。安心感を与えてくれる少女たちでしたね。

● 宇高合唱団で圧巻だったのは「秋のピエロ」と「齋太郎節」。「秋のピエロ」って詞もいいしね。「身すぎ世すぎの是非もなく」かぁ。しみじみするなぁ。
 もう過去のことになったんだろうけど,「自分探し」ってのが流行したじゃないですか。言葉だけが流行ったのかその実態があったのか,ぼくはよく知らないんだけど,もし後者だとすれば,どんだけ暇なんだよってことだよねぇ。
 もし「自分探し」にはまれば,死ぬまでそれを続けなくてはならなくなるはずだ。そんなことができるのは,要は暇だから。思慮深いからではなくて,愚かだから。丁寧な性格だからではなくて,グズだから。
 「秋のピエロ」を聴きながら,そんな埒もないことを考えた。

● 「第九」終了後に「ふるさと」を歌った。ここでの男声の奮戦が印象的だった。
 これだけのボリュームの演奏会を,これだけの水準で客席に提供できる。たいしたものだ。感嘆しつつ敬意を表する以外に,対応する術を知らない。
 すごいね,君たち。

● 問題はやっぱり客席にあるね。写真撮影は個人情報の侵害になるからやめろと何度も放送しているのに,ビデオを回し続けているのや,フラッシュをたくやつが最後までいたもんな。
 自分の子供や孫を写しておきたいのかもしれない。気持ちは当然わかるんだけれども,それがそのまま許される時代は過ぎた。窮屈といえば窮屈なんだけどさ。
 あるいは,YouTubeに動画と音声をアップするつもりなのかもしれない。そんなものは君がやらなくても,他の誰かが必ずやってくれる。それを見,それを聴けばいいじゃないか。どうせ素人のやることだ。誰がやっても大差ないって。
 というと,それならおまえが書いているこの文章だって,きっと誰かも書いているはず,それを読めばいいじゃないかと返されそうで,ちょっと具合が悪いことになるんだけどね。

2 件のコメント:

  1. 第九の合唱を体験したのは、娘が学んでいたT女子高の第九に一般人として参加したときでした。初心者も入っているはずの高校生のオーケストラ部が第九を演奏しちゃうのですから、子供、若者の能力ってすごいな、と感心しました。

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    1. まったく同感です。
      いったんスイッチが入れば,とんでもなく伸びる可能性を秘めているという印象ですね。

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