● 何度か吹奏楽を聴いて,吹奏楽も楽しいものだと了解できたんで,今回は小山市交響吹奏楽団の定期演奏会にお邪魔することに。
チケットは前売券が500円,当日券が700円。当日券で入場。開演は午後2時。
● この小山市交響吹奏楽団は「1980(昭和55)年,当時の間々田中学校吹奏楽部の卒業生により間々田青少年吹奏楽団として結成され」た。現在は「高校生から40歳代までの幅広いメンバーで毎週日曜日,間々田市民交流センターにて楽しく活動してい」るとのこと。
いろんな仕掛けを作って,客席サービスに努めていた。地元密着というか,ひとつのコミュニティができあがっているというか。ステージと客席が地元紐帯で強く結ばれているような感じ。
開演前に市長のあいさつもあった。当然,市民に向けた内容だった。
よそ者が紛れこんでは申しわけないような気もした。ところかまわず行きゃいいってもんでもないかも。
集団で来ていた中学生や高校生を除くと,来場者の平均年齢はかなり高い。いい悪いではなく,現代日本の縮図。今の日本は年寄りしかいない国。
● 前半の第1部は次の4曲。
イントラーダ「S-S-S」(鈴木英史 作曲)
勇者のマズルカ(三澤慶 作曲)
漁り火は波に戯れ(福島弘和 作曲)
エル・カミーノ・レアル(リード 作曲)
● 合間に指揮者の原進さんが,曲の解説をした。これが解説にとどまらず,ほとんどトークになっていて,そのトークが巧いのに一驚。
声質がいい。邪魔にならない声なんですな。しゃべりのテンポもいい。職業を間違えたんじゃないかとまでは思わなかったけれども,羨ましいね,こういうふうにできる人。
ちなみに申しあげると,彼,なかなかのスタイリストでもあるようだった。
● 「漁り火は波に戯れ」を作曲した福島弘和さんが会場に来ていて,その福島さんと原さんの掛け合いは,聞きものだった。これだけでチケット代の元は取ったかな,と。
福島さん,小学校でトランペットを始め,中学校でオーボエに転じた。「漁り火は並に戯れ」は青森の下北吹奏楽団からの委嘱で作曲したそうなんだけど,漁り火の情景ではなくて,漁り火を見ている人たちがどう感じているかを想像して,曲を作ったという意味のことをおっしゃっていた。
音楽とは気楽に長くつきあってもらいたい,と。聴きたくなければ聴かなければいいんだし,また聴きたくなれば聴けばいいんだし,演奏したくなれば吹奏楽団に入ればいいんだし,と。3つめはなかなか簡単にはいかなそうだけど,理屈としてはよくわかりますな。
● というわけで,特別なことを聴いたわけではないんだけれども,実直な人柄が伝わってくるような。都会的な原さんに対して,カントリージェントルマンといった感じで。
問題は,このトークのために,演奏中も視線が指揮者に集中してしまって,奏者を見れなくなることだね。
● 後半の第2部は,「サウンド・オブ・ミュージック」と「ハウルの動く城」のメドレー。カーペンターズの「青春の輝き」とメンケン「魔法にかけられて」。映画「タイタニック」に使われた「MY HEART WILL GO ON」。
最後は,ワーグナーの「ローエングリン」から「第3幕への前奏曲」「婚礼の合唱」「エルザの大聖堂への行列」の3曲。
第2部の司会は井ノ上京子さん。
● その第2部のタイトルは「愛と青春が織りなす旋律たち」っていうんだけど,コピーとしてはベタに過ぎるような気がする。じゃあ,おまえ考えてみろよ,っていわれると,何も出てこないんだけどさ。
愛とか青春って,今でも訴求力のある言葉なのか。
いや,そこで斜に構えて,フンッと鼻をならす方が下品だな。いいんだろうな,このタイトルで。
● アンコールで原さんのトランペットも聴かせてもらえた。限界まで巧い。
唯一,気になったのは,赤ん坊の泣き声が間欠的に聞こえていたこと。泣き声はこちらが我慢すればいいことなんだけど,首の座らない乳児をこの音量に晒すってのは,ほとんど虐待じゃないのかなぁ(そうでもないのか,考えすぎか)。
乳飲み子を虐待にさらしてまで聴くに値する音楽は,この世に存在しない。あるいは,そうまでして果たさなければならない義理も,この浮世にはない。
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