宇都宮市文化会館 大ホール
● 開演は午後2時。チケットは1,200円。全席自由なんだけど,栃響のチケットだけは必ず前売券を買っている。当日券だと300円ほど高くなるというセコイ理由もあるんですけどね,正直。
● 今回の曲目は次のとおり。
フンパーディンク 歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲
チャイコフスキー バレエ「眠りの森の美女」組曲
マーラー 交響曲第4番 ト長調
● 注目はマーラーということになる。この日は小山市に誕生した日本交響楽団の第1回目の演奏会もあって,そちらも小森谷巧さんのヴァイオリンでメンデルスゾーンの協奏曲を聴けるという美味しいプログラムだった。
だけど,栃響がマーラーをやるとあっては,やはり,こちらに足が向いてしまったよ,と。
● マーラーって万人向けではない(万人向けの作曲家なんていませんな。モーツァルトくらいか)。が,好きな人はやけに好きって感じ。
で,ぼくもマーラーが嫌いじゃない。おまえにマーラーがわかるのかよと訊かれれば,わかるって何?と返したい。
● 理由はといえば,カントリーチックなところ。垢抜けない。ゴツゴツしている。でも,重戦車のような力強さがある。道なき道を行く。こっちへ行くと決めたら,道があろうとあるまいとこっちへ行くのだ。
実直。不器用。でこぼこ。好き勝手。つぎはぎ。突っぱり。怪力。道草。粘着。
マーラーを聴いてて,ぼくが思い浮かべるイメージはこんなものだ。ただ,不思議なんだけど,それを間近ではなく遠くから眺めると,整ってる感じがする。
● ただね,とんでもなく長いから,なかなかCDでも聴ききれないんですよね。BGM代わりに流しておくような曲じゃないし。無理やり聴かされないと,最後まで通して聴くことがない。ま,ぼくの場合は,だけど。
そういう曲こそ,ライヴで聴きたい。といって,大がかりになるからなかなか演奏される機会がない。4番が「マーラーの全交響曲中もっとも規模が小さく,曲想も軽快」だとしても,それでもなかなか地元で聴ける機会はない。
● だから,これまで1番,2番,5番しか聴いたことがない。ゆえに,今回の栃響の4番は貴重な機会。その機会を得られただけでも,ぼく的にはありがたい。
これは絶対,聴きに行くぞ。というわけで,前売券を買っておいた,と。
● 指揮は三原明人さん。ソリスト(ソプラノ)は平井香織さん。指揮者にもソリストにも文句のあろうはずがない。管弦楽の栃響にも文句はない。
栃響って,指揮者にとってはけっこう楽しい場になってるんじゃないかと推測する。素直そうだし,一生懸命だし,何だかんだ言っても(言われても)技量は栃木県を代表するものだし。
● マーラー4番は静かに糸を引くように,余韻を残して終わる。その余韻が退くまで拍手が起きなかった。客席のレベル,高い。
っていうか,余韻が退くまでは演奏は終わらないってのを,指揮者がオケに徹底させたってことだね。あるいは,指揮者に言われるまでもなく,オーケストラも先刻承知だったってことですね。指揮者も力を抜かなかったし,奏者も構えを崩さなかった。
● こうした終わり方のあとに,アンコールはヨハン・シュトラウスの「春の声」。もちろん,平井さんのソプラノが入った。華麗に明るく盛りあがって終曲。
この終わり方が,やはり一番かなぁ。客席も満足するしね。
● というわけなんだけど,ぼく的に最も印象に残ったのは,1曲目の「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲の出だし。
ホルンで始まる。このホルンがね,何というのか,ここは言葉を選ばなければいけないところなんだけど,意外だったんですよ。いい意味で意外だった。
このホルンで気分が良くなってしまって,それが終演まで続いた感じ。あのホルンは大きかった。
● それと今回はコンマス。第2のソリストのようなものだものな。趣味でずっとやってきたっていうんじゃなく,ヴァイオリンに集中した数年間があるんでしょうね。まったく危なげがなかった。
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