那須野が原ハーモニーホール 小ホール
● 「カルテット・ローエ」とは都響の楽員4人によるストリングス。田口美里さん(ヴァイオリン),小林久美さん(ヴァイオリン),小林明子さん(ヴィオラ),江口心一さん(チェロ)の4人。今回は,これにハープの山崎祐介さんが加わった。
開演は午後2時。チケットは2,000円。
● プログラムの副題は「ハープの魅力を極上のストリングスと一緒に!!」というもの。誇大表示ではなかった。このメンバーの演奏を2,000円で聴けるのはお得っぽい。映画1本分+αの金額と交換でこういう時間を過ごせるとは,何といい時代に巡り合わせたことかと思う。
のだが,お客さんの入りは6割程度だったか。けっこう空席が目立っていた。室内楽だとこんなものですか。
● まずは,ヘンデルの「ハープ協奏曲 変ロ長調」から。
軽妙で腹にもたれない。山崎さんの説明によれば,この曲はヘンデルがロビーで休憩中のお客のために作ったもの。
主役はハープになるわけだけど,ハープの独奏の間,じっと楽譜を見つめている4人の姿が印象的。なんかさ,いいんですよね,その姿がね。
● 次は,ハープのソロ。ダマーズの「アダージェット」と「タンゴ」。いずれも短い曲。
山崎さんはダマーズと何度か会ったことがあるそうで,一緒に呑んだときのエピソードなどを披露。
● 次は田口さんのヴァイオリンとハープで,マスネ「タイスの瞑想曲」。
今回の演奏会で最も印象に残ったものをひとつあげろと言われれば,これ。
曲じたいが甘美で文句を言わせないわけだけど,田口さんのヴァイオリンにうっとりというわけでした。ほとんど目をとじて演奏していた。
CDは吉田恭子さんのしか持っていない。何の不満もないんだけど,いくつか聴きくらべてみたくもなった。ま,そういうときはYouTubeでいいんだけどさ。
● 次は,サン=サーンスの「白鳥」。
江口さんのチェロとハープで。チェロが好きな人にはたまらなかったろう。
山崎さんによれば,サン=サーンスはこの「白鳥」を含む「動物の謝肉祭」を世に出すつもりはなかったらしい。友人が勝手に出してしまった。今となっては,その友人に感謝ですな。
● 再び,カルテットとハープで,グランジャニー「ラプソディー」。
これまた山崎さんの解説によれば,グランジャニーはハープの神様のような人。ピアノならホロヴィッツ,チェロならカザルスに相当するような。
また,敬虔なカソリック信者でもあったらしく,ラプソディー(狂詩曲)なのにグレゴリオ聖歌を下敷きにしている,と。
この曲は一度も聴いたことがなかった。CDも持っていない。
● と,ここまでずっと山崎さんのトークが展開されてきた。このトークってのも上手下手があって,下手なトークを聞かされるのは閉口だ。黙って演奏だけしてろよと言いたくなる。
山崎さんはなかなか上手なのだった。もちろん,ハープ演奏のプロではあってもトークのプロではないわけだから,的確に笑いを取るとか,自由自在に聴衆を操るというわけにはいかない。
のだが,間合いとか話題転換とか上手なものだ。慣れているのかもしれない。
最も大事なのは声質じたいがいいことだ。素人のトークは声質が一番モノを言う。山崎さん,声質がいいんですな。高すぎず低すぎず,ボリュームをあげなくてもよく通る声なんでした。
● 15分間の休憩の後,「カルテット・ローエ」の4人でベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第9番」。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を生で聴くのは,たぶん初めて。っていうか,CDでもあまり聴いたことがない。ほとんどないか。
ベートーヴェンといえば,どうしたって交響曲だし,ピアノ曲やヴァイオリン・ソナタも多少聴くことがあるんだけど,弦楽四重奏曲はどういうわけか聴かさんない。ぼくの場合は,ですけど。
● 弦楽四重奏曲を知らないでは,ベートーヴェンを語る資格がない。語るつもりもないから,資格なんかなくたっていいようなものだけど,これを聴かないまま人生を閉じるのは,やや口惜しい。
であるからして,今回のような機会をそれこそ機会にして,CDに親しめればいい。
● で,どうだったかというと,ぼくの水準ではやや難解かもしれない。かもしれないじゃくて,はっきり難解だ。良さを良さと感じとれていないと思う。
だが,しかし。たぶん,今日以降,CDを聴いていくことになると思う。そういう意味では,今回,このコンサートを聴いた甲斐はあったんじゃないか,と。
● 問題はCDの聴き方なんですよね。多くの人がiPodやスマホで聴いているんじゃないかと思う。それだけってことはないにしても,それがメインの聴き方になっているんじゃないか,と。
ぼくもそのひとりなんだけど,これって削がれる音がどうしたって出てしまうし,雑踏の中で聴くことになるから,音楽以外の音も聞こえてしまう。あまりいい聴き方じゃないですよね。
● かといって,これをやらないでってことになると,聴く時間の確保が難しい。さらに加えて,恥ずかしながら(本当は恥ずかしいとは思ってないんだけど),オーディオ環境も貧弱を極めている。出せる音量も限られてくる。住環境の然らしめるところだ。
なので,やむを得ない。リッピングしてスマホに転送しました。
● アンコールはマスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。もちろん,ハープも入って。
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