2013年8月19日月曜日

2013.08.18 ブラス・ファンタジスタ金管アンサンブル

那須野が原ハーモニーホール 小ホール

● 開演は午後2時。チケットは1,300円。
 なんだけど,今回はチケットはタダで手に入った。同僚がくれたんですよ。君にやるからありがたく拝領しろ,と。
 同僚は,ご招待券プレゼントってやつに応募して当選したらしい。自分の少ない運を使って手に入れたものだから,あだやおろそかに扱うなよと言うんだけど,実際に行ってみたところ,招待席と思われる席もすべて埋まっているわけではないようだった。
 要するに,全員当選するくらいの応募者しかいなかったのではあるまいか。というわけだから,安心しろ。貴君の運は1ミクロンも減ってはいないぞ。

● ブラス・ファンタジスタは金管五重奏のグループ。
 牛腸和彦さん(トランペット),尾崎浩之さん(トランペット),小林祐治さん(ホルン),渡辺善行さん(トロンボーン),本間雅智さん(チューバ)の5人。
 牛腸さんのトランペットのみ,今年1月の栃木県総合文化センター主催「フレッシュアーティスト・ガラ・コンサート」で聴いている。

● 第1部は公開クリニックと題して,大田原中学校吹奏楽部の演奏に対して,ブラス・ファンタジスタの5人がクリニックを行う。
 旨い空気を吸い,旨い水を飲み,旨い米を喰って(栃木だもん),スクスクと育ったとおぼしき嬢ちゃん(圧倒的多数)坊ちゃん(圧倒的少数)たちがステージに並んだ。
 曲は「南風のマーチ」(渡口公康)。まず通して演奏してから,順番にここはこうした方がいいというアドバイスを与えて,部分部分を再奏していく。
 で,最初の演奏がどうして立派なもので,別に直すところなんてないんじゃないの,と思ったわけだけど・・・・・・。

● まずはチューニングの際の注意。あまりチューナーに頼るなということ。機械の針が真ん中に来ることだけに気を取られるな,と。
 聞きようによっては,いい加減でもいいよ,とも取れる。もちろん,いい加減でいいんだよってことを言ったわけじゃないんだけどね。

● タンギング。中学1年生でダブルタンギングは早すぎるなどと考えないで,曲を見てダブルタンギングがいいと思ったら,そうするように。
 頭打ち・裏打ち。他の楽器の音をよく聴いて。
 メロディー。テンポばかりに気を取られるな。自分が音にどんな色をつけたいのか,そこを大切に。
 そして,トリオ。

● 総じて,テンポや縦の線を合わせることに気を取られ過ぎるな,まず楽しむ気持ちが大切だとか,何を伝えたいのか,どんな表情をつけたいのか,各自が勝手にそれをやると,かえってテンポやリズムが早く合ってきたりするものだ,という指摘が多かったようだ。
 中学生なんだからこんなものだろうという迎合はなかったようだ。しかし,一方で,中学生を慮っての大人の助言だなとも思えた。

● いろんないい音楽をたくさん聴くこと,というアドバイスもあった。これ,大事なことだと思う。即効性はなくても,ジワジワと効いてくるんだろう。
 問題は,中学生は忙しいってことだな。なにせ時間がない。勉強も部活もあるし,友だちづきあいもある。恋心も芽ばえる。関心の8割はそれだったりする。親の小言にもつき合わなきゃいけない。忙しいのだ。
 いい音楽をたくさん聴く時間,取れるといいんだけどね。

● で,初めと終わりの演奏を聴き比べてみて,なにか違いを発見できたか。先生方は良くなったっていうんだけど,ぼくの耳では知覚できなかったかな。
 ダメだね。っていうかですね,この公開クリニック,客席に対してもクリニックになっているところがミソですな。そのための公開なのかもしれないなと思ったり。

● 第2部はブラス・ファンタジスタのコンサート。
 カルメン前奏曲のあと,ケッツァー「子供のサーカス」。
 そして,クレスポの「アメリカ組曲第1番」。ただし,「ガウチョのサンバ」ははずして,「ラグタイム」「ボサ・ノヴァ」「ペルー風ワルツ」「メキシコの音」の4つを演奏。“演奏者にとってはかなりの難曲”として知られているらしい。
 が,この5人は難曲であることを感じさせませんね。超絶技巧を超絶技巧に見せないで演奏するっていいますか。横っ飛びに捕球すればファインプレーになるのに,サッと動いて体の正面で捕球して,何事もなかったように一塁に送球してる,っていいますか。

● ま,これ,聴いてる側(ぼくのことですが)の水準があまりにひどくて,超絶技巧を見せられても,それが超絶技巧であることに気づかないっていう可能性もありますけどね。うん,その可能性の方が大きいような気がしてきた。

● この5人,気持ち良さそうなんだよなぁ。最近,筒井康隆さんの「舞台に立つってのがそもそも大変な快楽ですからね。どんな役者さんに聞いても,セックスなんてどうでもよくなってしまうって言うくらいのもんですからね」(「笑犬楼の知恵」金の星社 p97)っていう文章を読んだんだけど,役者ばかりじゃなくて演奏者も同じなのか。
 一度やったらやめられなくなるくらいの快感があるのか。だとすれば,彼らがお客さんを大事にする理由がストンと納得できるんだけどね。

● 最後は再び,大田原中学校吹奏楽部にブラス・ファンタジスタの5人も加わって,「南風のマーチ」を演奏。
 さらに,生徒たちだけで「鳳凰」(鈴木英史)というのを演奏した。いたって難解に聴こえるんですけど。じつはそうでもないのか,実際に難解なのか。その辺がわからないのが,どうも情けない。
 でもねぇ,こういうのを中学生がやれちゃうんですねぇ。昔からそうでしたか。ぼくが中学生だった頃のブラスバンド部って,たぶんできなかったんじゃないかと思うんだけど。高校野球もそうだけれど,昔に比べると,諸事,レベルが上がってますよねぇ。

● アンコールは「栄冠は君に輝く」。これは5人も加わっての演奏。
 ここで顧問の先生が真面目人間であることを露呈しちゃった。口上で,作新が勝ち進んでいますが,と言っちゃったんだね。作新は,昨日,日大山形に敗れているんですよ。
 今日のことで頭がいっぱいだったんでしょうね。仕事熱心で真面目な人なんだと思う。

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