江東区文化センター
● この夏は,いくつかのオペラをまとめて聴く機会に恵まれて,ちょっと嬉しい。この日はLa Primavera によるベッリーニ「ノルマ」。
開演は午後6時。チケットは3,500円(自由席。指定席という名の不自由席は4,000円)。
● 出演者は次のとおり。指揮は苫米地英一さん。演出は奥村啓吾さん。
ノルマ 森田雅美
ポリオーネ 秋谷直之
アダルジーザ 巖淵真理
オロヴェーゾ 大澤恒夫
フラーヴィオ 飯島竜也
クロティルデ 安倍宏枝
● 予備知識は何もない状態で臨んだ。最初,ガリア人の兵士が登場するので,ガリア対ローマの争いがメインテーマで,ノルマは邪馬台国の卑弥呼よろしく巫女さんを演じるのかと思った。
当然,そうではなくて,ノルマ,ポリオーネ,アダルジーザの三角関係が綾なす,諸々のドロドロや情念や相剋がテーマなんでした。
● で,こうなると,男性の大半は物語には入っていけないものでしょうね。女性は,その点,没入できるからすごい。
ノルマやアダルジーザに感情移入できるんでしょうからね。生身の女はとてもそんなものじゃないと,自分が女なんだからよくよくわかっていながら,それが感情移入を妨げない。すごいですよね。いや,皮肉じゃなしに,女性のここがすごいと思うんですよ。
● ノルマとアダルジーザの顔と体型がよく似ていて,ふたりが一緒に登場するまでは,ぼくには区別がつかなかった。アダルジーザが登場したところで,なんでここでノルマが出てくるんだといぶかることがあった。
こちらの視認能力に問題あり。ここも女性だったら問題なく区別できるに違いない。
● 舞台下に管弦楽団がひかえるわけだけど,ピット用に掘りさげられてはいなかったので,音が水平にまっすぐ客席に届く。くぐもることがない。奏者の様子もよく見える。いいんだか悪いんだか,微妙なところ。
● オペラの醍醐味というのが,まだよくわからない。じつはそんなものはなくて,ひとりひとりがそれぞれ好きなように楽しめばいいのだとも思う。
劇に酔うか歌に酔うか,それぞれお好きにどうぞ,っていうものなのだろう。ストーリー重視もよし,アリアを聴くのがすべてでもよし。言葉でいえばそういうことなんでしょうけどね。
● 森田さん,秋谷さん,巖淵さんと,聴かせどころではきちんと聴かせてくれて,まったく何の不満もなし。
今回感じたのは,合唱の水準が高かったこと。特に,男声。気持ちが良かった。
● プログラムのキャスト紹介によると,大澤さんは小劇場からオペラに移ったとのこと。こういう人もいるんですね。イタリアで基礎から勉強した。
大学は工学部。オペラのスタートが少し遅れたことになるんだけど,そこまでさせるものって何なのだろうねぇ。舞台って相当な快感を与えてくれるものなのか。
● 以下,余談。
田舎者が東京に出ると,移動は電車になる。JR,私鉄,地下鉄の路線網が東京中を埋め尽くしているので,電車だけで何とかなると思っている。
で,実際,何とかはなるんだけど,こちらが早とちりをすることがある。今回の江東区文化センターは地下鉄の最寄駅は東洋町(東西線)。JRで錦糸町に出て,半蔵門線に乗り換えればいいのだと思っていた。ぜんぜんそうじゃないですよね。
しかも,江東区文化センターって一度行ったことがあるんですよ。にもかかわらず,こういう早とちりというか,勘違いをしてしまう。少々,泡を喰っちまいました。
結局,錦糸町から会場までは四ツ目通りを行けばいいので,都バスに乗って向かった。
● 東京ではとバス以外の乗合バスに乗るのは,たぶん初めてのこと。乗り方も田舎のバスとは違うんですな。乗るときに運賃を払う。全区間均一運賃であって初めて可能なこと。200円でした。安いのか高いのかはわからないけど。
で,思うんだけど,バスって地元で生活している人のためのものですよね。あたりまえなんだけどさ。よそから来たばかりの人が路線バスを乗りこなすのは無理だもんね。地理に精通してないと,どのバスに乗ればいいのかわからないもん。
今回は,行き方があまりに単純だったので,ぼくも迷うことなく乗れたわけで。
● 帰りは,錦糸町まで歩いてみた。歩道を自転車がたくさん走っているのが,歩行者としては難。だけども,この道路状況で自転車は車道に降りろとは,ちと言いづらい。
ちょっと入ってみたくなる呑み屋さんもありますな。さすがは東京で,土曜の夜でも活気があるんでした。今度は昼間歩いてみたいと思った。
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