栃木県総合文化センター メインホール
● 前年度のコンセール・マロニエ21の優勝者をソリストに迎えて行われる演奏会。今回のソリストは戸原直さん(ヴァイオリン)と秋本悠希さん(メゾ・ソプラノ)。
曲目は次のとおり。
メンデルスゾーン 「真夏の夜の夢」序曲
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
ワーグナー ヴェーゼンドンクの五つの歌
R・シュトラウス 歌劇「ばらの騎士」組曲
● コンセール・マロニエ21は,ピアノ,弦楽器,木管,金管,声楽の5部門で構成される。2部門ずつの開催なので,この演奏会のソリストも原則二人が登場する。
それに合わせてプログラムを構成するから,結果,かなりユニークなプログラムができあがる。今回のプログラムも,普通の演奏会ではまず出てこないものではあるまいか。
この美味しそうなプログラムで入場無料。開演は午後2時。
● 客席はほぼ満席。2階席の奥の方に少し空きがあったけど。
後期高齢者が多い。この傾向はたぶん,全国的なんだろう。特に地方では。
若いお客さんの開拓が急務だってことは誰だってわかることだけれども,しかし,これが難しい。若い世代に属する人たちの総数が急減しているわけだから。
● 休日に何をして過ごすか。徹底的に各人の自由だ。その自由は神聖にして侵すべからず。
それでもって,楽しいことはいくらでもある。映画を見るもよし。買いものもよし。ディズニーランドに遊びに行くもよし。スポーツに興じるもよし。家でマッタリするもよし。クラシック音楽のコンサートに行くだけが能じゃない。
観客数がこれからどうなるか。自ずと収まるところに収まっていくのだろう。っていうか,ぼくが心配してどうにかなるようなものでもないわけでね。
● メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で,戸原さん登場。髪をオールバック気味にして,燕尾服を着用。若き芸術家っていう感じ(まさにそうなんですけどね)。
体も細いので,全体的な印象がシャープ。聴き手は,こうした外見からも影響を受けてしまう。ぼくだけかもしれないんだけど。
● ぼく程度の耳しか持っていない者が,こういう物言いをするのはいかがなものかと思うんだけど,この1年間で確実に進歩されているような。充実した1年間を過ごされたのではなかろうか。まだ学部の3年生。いったいどこまで行くんだか。
この時期って,身体的にも変化が大きいから,そっち方面から誘導されての印象になっているかもしれない。1年前のコンセール・マロニエのときとは,たたずまいからして違っていたからね。
● アンコールはバッハの無伴奏ソナタ第3番の第3楽章。たっぷり聴けて,ぼくもだけれど,客席も納得したようだった。ここでも拍手は盛大でしたね。
● 栃響にしても,メンコンは今年2月の定演でも演奏している。自分たちの負担を軽くしようっていう選曲でもあったのかねぇ。
だとしても,ぜんぜんOKだ。当然だと思う。栃響って,実際,よくやっているなぁと思いますもん。
● 15分間の休憩後,秋本さんが登場。紺色のドレス。これほどの美人なら何を着ても似合ってしまうんだろうけど,今回は妖艶さが付け加わった感じ。何ともミーハーな言い方で申しわけないんですが。
今月7日の藝祭でも彼女のステージを聴いてるんだけど,あのときは表情も構えも固さを崩さなかった。演奏したのが「オラトリオ長崎」でしたからね。それでニコニコしてたんじゃ顰蹙ものだもんな。
今回は柔らかさも出してた。地が美形なうえに,妖艶と柔和が加わるんだから,天下無敵。世界は私のもの。
● ワーグナーのこの曲は初めて聴く。ワーグナーの並外れた生命力には敬服するしかない。次から次へと愛人を作れば心理的にも消耗するだろうに,と凡人は思うわけだけど,そんなのは彼には通用しない。
これも愛人の詩に曲を付けたもの。彼が残した仕事の質量の膨大さとともに,感嘆する以外にありませんな。
● アンコールは日本の「ふるさと」。この間,客席からはしわぶきひとつ聞こえなかった。曲と詩のアピール力。日本人なら誰でも知っているし,誰もが心の琴線をマッサージされたと感じるに違いない。
これをアンコールに持ってくるのはルール違反じゃないかと思いつつ,秋本さんの歌唱の説得力に圧倒される快感。
● 最後は栃響だけで,組曲「ばらの騎士」。ハープも2台入る大編隊。
この楽団の生産性の高さは,なんだかんだいって,たいしたものだ。そのあたりは,お客さんもわかっているのだろう。拍手に温度があるように思われた。
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