2014年5月18日日曜日

2014.05.17 とびやま古城の音楽会 「邦楽ゾリスデン」コンサート

飛山城史跡公園

● 飛山城って中世のお城なんだけど,実際は城というよりは砦だったんでしょうね。っていうか,もともと城っていうのは砦のことだったんだろう。
 で,言っちゃ何だけど,普通の人が,ここの史的価値を理解するのは,まぁ無理でしょうよ。もちろん,ぼくにもわかりません。

● そういうことより,ナラ,シイ,クヌギ,クリなどの広葉樹林っていうんですか,それがこれだけまとまって残っている所は珍しい。秋にはキノコ狩りもできるんじゃないかね。
 眺望もいいですな。眼下に鬼怒川。その向こうに宇都宮の市街。市街地の背後には日光連山と塩原,那須の山々が切れ目なくつながっている。空ではトンビが悠々と滑空している。

● この時期,天気さえよければ,森林浴で体を喜ばせ,眺望をながめて目を喜ばせるのに,ここは恰好の場所だ。宇都宮の中の小軽井沢とでも申しましょうか(軽井沢に行ったことはないんだけど)。
 と,言いながら,ぼくがここに来るのは二度目。つまり,昨年のこのコンサート以来ってわけで,まぁ普段は来ない。近いんですけどね。今日も自転車で来てるくらいだから。
 休日には休日の生活経路というのがあって,そのルートにないところには気合いを入れないと行かさんないものですな。

● さらに言いつのると,体を喜ばせたり目を喜ばせたりするには,もっといいものがあるもんね。それが何かは人によって違うわけだけどね。
 そうではあるんだけど,来てよかったと思いましたよ。開演までに2時間ほどもあったんだけど,ぜんぜん退屈しなかった。

● 今年もここで「邦楽ゾリスデン」のコンサートが開催された。開演は午後2時。入場無料。
 ぼくもだけれども,会場でお客さんの話を聞いていると,二度目の人も多かったようだ。
 
● 今回も 「邦楽ゾリスデン」の福田智久山,前川智世,津野田智代のお三方による箏と尺八の演奏。「邦楽ゾリスデン」の中でもこの三人で活動する機会が多いんですか。“智世代”というユニット名を作ったようだ。チセダイと読むらしいんだけど。
 最初,主催者が言葉遊びをしてみせたのかと思ったんだけど,そうじゃなかった。

● 前半で印象に残ったのは,宮城道雄の「水の変態」。全部ではなく,いくつかを抜粋しての演奏。前川さんの説明によれば,宮城道雄14歳の作とのこと。
 Wikipediaの解説には「8歳で失明し,生田流箏曲の二代菊仲検校に師事するも,その後兄弟子菊西繁樹の紹介により二代中島検校に師事して11歳で免許皆伝」とある。神さまが箏をやらせるために,8歳の彼から視力を奪ったんだろうな。そう思うしかない天才。
 こういう人には,たとえば発達心理学でいう発達区分なんてのは,まるであてはまらないのだと思う。

● その天才の早期の作品を,名手の演奏で聴く。贅沢ですよねぇ。これを贅沢といわないとすると,この世に贅沢なんてさほどないってことになる。
 今回はこの贅沢を味わうのに要するコストはゼロだ。毎回無料ってわけにはいかないけれども,贅沢を味わうためのコストって,世間で言われているほど高額ではないよな。少し以上にノーテンキな言い方になるかもしれないけれど,ぼくらはいい時代に巡り合わせている。

● 後半の白眉は長沢勝俊「二つの田園詩」。現代邦楽。これも前川さんの説明によると,洋楽の作曲家は箏を演奏したことがないものだから,こういうメロディラインにすると奏者の動きはこうなる,というのをわからないで曲を作る。この曲もそうで,演奏する側はかなり大変だ,と。
 で,実際に大変なんだと思うんだけど,名手が弾くと,その大変さが表にでない。ピアノでもヴァイオリンでもそうですね。弾く人が弾けば,超絶技巧が超絶技巧に見えない。

● ほかに「長等の春」など古いものや,彼らが作曲したオリジナル曲(オゾン,アモール,月花)も披露された。2時間のコンサート。
 こうして何度か聴いていると,彼らの素もちょっと見えてくる。っていうか,演奏を離れれば普通の若者ですよね。こういうキャラクターは自分の職場にもいるかな,と思うような。そりゃそうだ。同じ時代の空気を吸ってるんだもんな。
 ただし,キャラクターが同じだからといって,中身がみな同じってことにはならない。彼らに限らず,誰についても言えることだけど。

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