芳賀町民会館ホール
● 今年の秋季演奏会は再びベートーヴェンに戻って,2011年に続く“ベートーヴェンチクルス”。これだけ間をあけたものをチクルスと呼んでいいのかという疑問はさておき,ともかく会場へ。
開演は午後2時。チケットは800円。当日券を購入。
● 曲目はレオノーレ序曲と交響曲の4番,5番。チクルスとしても佳境に入ってきた感じ。指揮は石川和紀さん。
● 何度か聴いているオーケストラの演奏にオヤッっと思うことがある。必ずあるというわけではないけれども,これまでに何度かはあった。
要するに,こんなに巧かったかと思う“オヤッ”なんだけれども,この楽団については,今回がその“オヤッ”の日になった。特に4番は全身で堪能することができた。
● どうしてこういうことが起こるのかはわからない。冗談でなく天気のせいもあるのかもしれないと思うほどなんだけど,一方で,ぼくの“耳違い”の可能性もある。その可能性がどこまで行っても消えない。
● 5番は以前にもこの楽団の演奏を聴いたことがある。5番を初めて生で聴いたのがそのときだった。したがって,その印象は今でも鮮明だ。
こちらも聴き手として多少は成長していると思いたいところだけれども,今回はどうだったか。
● 第4楽章で弦に要求されるスピード感は聴いている側としては小気味いいものだが,よくあのスピードについていけるものだな(ただし,弓の引き幅を小さくして小器用にまとめる向きも散見された。仕方がないとは思う)。
オーボエをはじめとする木管陣もエェッと思うほどに安定しつつ,素速く動くべきところに動く。満を持して参入した(かどうかは知らないけど)トロンボーンの溌剌さ。
● 気がこもっていて,訴求力の高い演奏になった。全編にみなぎるベートーヴェンのすさまじさ。空から隕石が降り注いでくるような逃げ場のない迫力。それが客席に充満した。
以上を要するに,アマチュア・オーケストラがここまでやるかと思うほどに出色のできばえだったと評しておく(偉そうに!)。
● ここが“オヤッ”の所以。無礼千万なことながら,ここまでやれる楽団だとは思ってなかったわけですよ。
思ってなかったこちらの耳の問題なのか。そうではなくて,120パーセントの力が出てしまうってことがあるものなのか。
ぼくとしては,8割方そういうことがあり得るのだと思っているんだけど,2割はオレの耳がダメなのかと思うわけですね。
● CDではこうはいかない。心地のいいグッタリした疲れは味わえない(演奏する方はもっと疲れるんだろうけど)。
いや,そう言ってしまうと間違いなのかもしれない。完全防音の部屋を作り,とびきり性能のいいアンプとスピーカーを揃え,相当な大音量でCDを聴くことができれば,同じ感覚を味わえるのかも。
だが,同じことだ。それを実行に移すだけのお金も度量もぼくにはないのだから。
● だからライヴに行く。行って,そうした満足感を味わえると,この人生,まんざら捨てたものでもないよな,と溜飲をさげる。
何回,溜飲をさげられるか。それは人生の幸福度を決める大きな尺度のひとつだと,マジで思っている。
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