2014年11月30日日曜日

2014.11.29 菅野祐悟・佐藤和男共演 オーケストラコンサート

高根沢町町民ホール

● NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」の音楽を担当している菅野祐悟さんの凱旋公演,のようなものですか。彼,高根沢町で育った人だから。
 指揮者の佐藤和男さんも,高根沢生まれの高根沢育ち。

● あいにくの雨で,主催者側が急遽,テントを設置した。早くから来て列を作る人が濡れないようにとの配慮。ぼくも早めに着いた口で,そのテントの中で並んだ。開場も15分間,早めてくれた。
 ハレの場,お祭り的な雰囲気が溢れていた。目立つのは婆さまたちのグループ。今日のためになれない化粧をして,身繕いを整えて来ている感じ。じつに子どもに返ったようなはしゃぎぶり。婆さまの着ぐるみを着た子どものようなというか。
 正真正銘の子どもたちも多かったけれど(未就学児童対象公演),総じてお客さんの平均年齢はかなり高かったようだ。40代なら貴重な若手といった感じだったか。
 男女比では圧倒的に女性が多い。これはどこでもそう。田舎だろうと都会だろうと。

● 開演は午後2時。チケットは2,500円(前売券)。完売御礼。が,この天気で外出を控えた人がいたのだろう,空席もないわけではなかった。
 このホールはオーケストラが乗ることは想定されていない。正面奥と側面に反響板が置かれた。当然,これでいいんだけれども,景観的にはあまり美しくないことになる。

● 開演前の館内放送にも,要らないくどさがあった。オーケストラが入場してから,プログラムに載せている出演者紹介を読みあげてみたりという。語るべきものはプログラムに語らせればよい。
 が,今回に関しては,これでよかったのかも。顧客満足はこの方が高かったかもしれない。手作り感にあふれていたともいえる。

● 演奏されるのは,すべて菅野さんが作曲したもの。ピアノも菅野さんが務めた。
 じつは,ぼく,テレビはまったく見ていない(今年の4月からだけど)。「軍師官兵衛」も一度も見たことがない。でも,そういうことは鑑賞の妨げにならないことは当然だ。
 一曲目の「新参者」の演奏が始まった瞬間に,客席のざわめきが消えた。生演奏の持つ吸引力。

● MCも菅野さんが担当。徹底的に主役。が,主役を張る以上は求められるものも相当なはずで,盛りあげると同時に仕切らなければいけない。起伏をつけて,時間内に収めなければならない。観客にとってMCは音楽の合間のリラックスタイムだ。それに応じながら次につなげる。
 要は場数を踏んでいるんでしょうね。見事な仕切りだったと思う。同時に,真面目でサービス精神に富んだ好青年という印象。

● その点,指揮者の佐藤さんはこうした場には不慣れなはず。喋りにはやや冗長に流れるきらいがあった。当然のことで,指揮をもっぱらにしながら,菅野さんなみのトークができたら,芸人の才能まであるということになる。
 佐藤さんの指揮には真岡市民交響楽団の演奏で何度か接しているんだけど,そこでの印象はおとなしくて内気な人じゃないかというものだった。トンデモハップン。陽性の人のようだった。
 中学校ではサッカーをやっていた由。失礼ながら,これも意外。が,運動神経と体力は指揮者にとって重要なリソースになるんだろうから,言われてみればしごく納得。

● 演奏はMCFオーケストラとちぎ。栃木県出身者,在住者のプロ奏者で構成されているオケ。常設のオケではない(と思う)。
 菅野さんが,栃木しばりでこれだけのオーケストラができるなんて素晴らしいとか,これだけのオケを東京で集めたらこんなコストではすまないとか,何度かオケを称賛していたけれども,リップサービスだったとは思わない。
 わりと前の方の席に座ったんだけど,このホールでこれだけの音が届くのかと思った。

● 必ずしも平均年齢が低いというわけでもなさそうだ。が,受ける印象は清新そのもの。できて間もないし,常設でもないから,場が若さを保っているのだろうと解釈しておくことにする。場が個に及ぼす影響って大きいもんね。
 女性奏者のドレスがカラフル。一度,山形交響楽団の演奏会で同じ様を見たことがあるけれども,ステージに立つ以上,外見を等閑に付すというのはあり得ない選択。花が花としてきちんと咲いているのは,見ているだけで気持ちがいい。ぼくが男性だからということでもなくて,女性のお客さんも同じ感想を持つのではなかろうか。

● いい曲とそうじゃない曲という区別は成立するんだろうと思う。が,一度聴いたくらいじゃわからない。ぼくには,だけど。が,好きな曲とそうじゃない曲というのは,すぐに区分される。
 テレビドラマの劇中で流れる音楽だから,大衆性を持っていないといけないんだろうし,かといって大衆をなめたらとんでもないことになるんだろうし,出演者やストーリーなどドラマの諸々の条件に制約を受けるのだろう。
 制約だらけのなかでこうした楽曲を作りだし,ドラマと切り離された場で演奏しても,しっかり届く。こういう曲を作りだせる頭脳っていうのは,ま,ぼくの想像の外にある。たぶん,頭脳だけではできないとも思うんだけどね。

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