ミューザ川崎 シンフォニーホール
● 今年から上野学園大学が加わって,首都圏9つの音大の共演となった。今日はその1回目。開演は午後3時。
● まず,昭和音楽大学管弦楽団。ブラームスの2番。指揮は大勝秀也さん。
どの大学も同じだけれども,女子学生が圧倒的に多い。昭和音大も,ヴァイオリンなんか1stと2ndをあわせても,男子学生は一人しかいなかったんじゃないか。
が,だから何か支障があるのかといえば,そういうことは何もない。
● 第4楽章の怒濤のうねりの場面においても,力強さに欠けるなんてことは1ミリもなかった。ヴァイオリンの厚さと強さが印象的。
ひと頃,ハンサム・ウーマンという言葉が流行ったことがあったけれども,そのハンサム・ウーマンの女子学生たちが見事に支えきって終曲。
● この音大フェスは全4回で,ぼくは通し券を買っている。3,000円だ。1回あたり750円。それでここまでのブラームスを聴けるんだから,タダ同然と言っていいだろう。
● ぼくの場合だと,電車賃が5,000円かかる。新幹線の特急料金まで出すのは少々以上に厳しいので,在来線を利用している。
栃木の田んぼの村から川崎まで移動するとなると,ドラえもんの“どこでもドア”が欲しくなる? いや,あれはもしあっても要らないね。移動じたいがけっこう好きなんで。
瞬間的にどこにでも行けるのは,インターネット上の“情報”だけでいいんじゃないですかね。
● さて,次は東京藝大シンフォニーオーケストラ。チャイコフスキーの5番。指揮は尾高忠明さん。
冒頭のクラリネットが重要。難しくもあるんだと思う。音をどこまで絞ればいいものやら。このクラリネットを聴いて,期待が膨らんだ。
第2楽章のホルン。くっきりとした航跡を残しながら,ひとり天空を行く。その航跡はしかし,はかなく消える。“くっきり”が消えていく。その消え方が素晴らしい。
あとに続くオーボエもエネルギーを込めてか細さを出す。お見事という以外にない。
● 厚みがすごい。音が厚みをまとったまま,右に左に動き,宙を舞い,地に潜る。そうした印象を作る要因のひとつは,金管のキレの良さだったろう。
すべてが聴かせどころといっていいこの曲でも,どうしたって第4楽章。じつに変幻自在。
● おそらく。俊才揃いの彼ら彼女らにとっても,今回の演奏は快心の一作になったのではあるまいか。そうした演奏に立ち会えた喜びが全身に充ちてきた。
5,000円のモトを取って,多額のお釣りまでもらった感じ。即物的な言い方で申しわけないけれども。
● ライヴを聴くことは,イオン交換をするようなものかもしれないと思った。自分の体内のイオンを奏者のイオンと入れ替える。あるいは,温泉に浸かるようなものかもしれない。熱交換。
どちらも,交換後の効果がいつまでも続くわけではない。本を読むのだって,人に会うのだって,みんなそうだ。影響は受けるけれど,永続はしない。若いとき(子どものとき)なら知らず,ぼくの年齢になってしまえばいっそうそうだ。
が,時々は入れ替えたくなるし,一時的であってもその一時的な効果はある。
● 9大学の合同チームによる演奏会は来年3月に開催される。28日(ミューザ川崎)と29日(東京芸術劇場)。29日のチケットを買って,帰途についた。
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