2014年12月29日月曜日

2014.12.28 東京大学歌劇団第42回公演 マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」&プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」

三鷹市公会堂 光のホール

● 本格的な,たとえばローマ歌劇場やウィーン国立歌劇場の来日公演を見に行って,豪華な舞台装置や衣装に度肝を抜かれたいと思う。思うんだけど,料金がねぇ。S席だと5万円を超えてくるもんなぁ。
 そのくらい出せよ,それだけの価値はあるだろうよ,お金は小出しに使うな,まとめて使うもんだよ,と自分に言ってやりたいんだけど,言われても困るよっていう,もう一方の自分もいるわけでね。

● そこで,折衷案というか,現実を踏まえてというか,市民歌劇団がプロの歌い手を招いて催行するオペラを昨年は何回か観に行った。
 これならまぁまぁ出せる金額。財布にやさしい。そのうえ,オオーッと驚けるところもいくつも出てくる。ぼく程度の聴き手なら,それで充分すぎる。

● なんだけど,今年はそういったものに一度も行かずに終わった。その理由は自分なりに分析はしているんだけど,要は飽きてしまったようなんですね。
 で,残ったのは,プロがいなくて,100パーセント学生手作りの,この東京大学歌劇団の公演ですよ,と。

● 面白いんですよ。今回は2本立てだったんだけど,どちらもかなり面白かった。かけているエネルギーの総量なんでしょうけどね。それが伝わってくるわけで。
 玩具のオペラなんだと思うんですよ。設えだってチャチイんです。学生たちがやってるんだもん。お金,ないんだもん(親はお金持ちかもしれないけど)。

● ただし,歌い手も管弦楽の奏者も指揮者も本気で遊んでいるわけだよね。遊びに本気になっている。
 しかも,将来,自分がどこまで伸びるか,どうなっているか,なんてのは考えていないと思う。「今ここ」に集中している。
 本気で遊ぶって,なかなかできないよ。至高の境地かもしれないと思いますよ。
 その若い本気さが直球で客席に届くわけで,その結果が面白くないわけがない。

● 設えのチャチさだって味わえる。衣装が揃わなくて,それぞれの私服で出ているのだって。
 つまり,そういうことって,本気の邪魔はしないから。

● ともあれ。第38回,39回,41回に次いで,4回目の拝聴というか拝観というか。開演は午後3時。入場無料。カンパ制ってことですね。
 「カヴァレリア・ルスティカーナ」は男女の愛憎がらみの最後は悲劇の結末。「ジャンニ・スキッキ」はコミカルな喜劇。

● 両者に共通するのは,登場人物たちの住んでいる世界が閉じられていること。一方は,はるか昔のヨーロッパの田舎村。生活も人間関係もその村の中で完結している。
 もう一方は貴族の館。登場人物たちは館の外に住んでいるわけだけれども,劇中ではそこが世界のすべて。
 世界を閉じなければ,物語を動かせないんでしょうね。変数を制限しないと,とりとめがなくなってしまうんだろう。

● 過日,一部を駒場祭で観ているんだけど,今回の印象はそれとはまったく異なるものだった。
 駒場祭での印象記は全部削除したくなった。穴があったら入りたい。なかったら掘ってでも入りたい。

● 「ジャンニ・スキッキ」で標題役を演じた井出さんだけは,プロというか声楽の専門家で,彼の力量があってこそ,コミカルが成立した。歌の技量が表現の幅と深さを作る第一要因であることは,どうしたって動かしがたい。
 「カヴァレリア・ルスティカーナ」でも,同様の理由で,サントゥッツァとアルフィオのやりとりが一番聴きごたえがあった。お見事というほかはない。

● 何気に存在感があったのが「ジャンニ・スキッキ」のツィータ。プログラム冊子で確認したところ,これを演じていたのは20歳のお嬢さん。
 学生がやっているんだから,20歳で何の不思議もないんだけど,あの妖気(?)と色気は何事ならん。

● 終演は5時45分頃だったか。冬の日はとっぷりと暮れているわけだけど,寒さはさほど感じなかった。

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