2014年12月16日火曜日

2014.12.14 第7回栃木県楽友協会「第九」演奏会

栃木県総合文化センター メインホール

● 開演は午後2時。チケットは1,500円。管弦楽は昨年から栃木県楽友協会管弦楽団という名前になっているけれども,実質は栃響
 指揮者が変更になっていて,三原明人さん。

● まず,ブラームスの「悲劇的序曲」。さすが栃響で,手堅く仕上げているなぁという印象。
 ただね,ちょっとおとなしい感じがしたんですよね。素直に指揮者の言うことをきいてる感じがする。そして,控え目に応えているっていう。
 急遽登板した指揮者がここまでリキをいれてくるんだから,もっと踏みこんで応えてもいいんじゃないかと思った。本番では無理だとしても,場合によっては反抗的に応えるってこともあってもいいのでは,と。

● 栃木県にいれば,何だかんだいって栃響なんですよ。もし栃響でダメだったらしょうがないねってこと。
 ゆえに,ないものねだりをしたくなったりもする。いや,ひょっとすると,ないものねだりにもなっていなくて,頓珍漢なことを言っちゃっているのかもしれませんけどね。

● で,「第九」。最初から合唱団が登壇。第3楽章の前に入ることが多かったかと思うんだけど,やはりこれが本筋なんでしょうね。
 できれば,ソリストも最初からいた方がいい。そこまでやるのはなかなか厳しいんだろうけど。

● ぼくは第1楽章が好きで,「第九」の8割は第1楽章にあると思っている。もちろん,「楽聖が晩年になって達した,枯淡の境地」と言われる第3楽章や,クライマックスの4楽章の合唱も素晴らしいんだけど,得体の知れない何者(何物)かの胎動を思わせるような第1楽章がいいなぁと思っていて。
 でね,この第1楽章を決めるのは木管とホルンなんですよね。中でも1番ホルンが大事だなぁと思っていましてね。目立たないんだけど,ここがこけたらどうにもならない。

● 見事な第1楽章だった。「悲劇的序曲」で感じたおとなしさのようなものが,「第九」になると影をひそめた。指揮者とオケの間にスキマがない。渾然一体。
 じつは,オーケストラは何も変わっていなかったので,どうにもこちらの印象がいい加減っていうか,デタラメっていうか,そういうことなんでしょうねぇ。
 あるいは,もう何度も演奏していて,手の内までわかっているよってことなんですか。

● 栃響クラスになれば,弦は巧くてあたりまえという前提がこちらにある。その前提をさらに突くような,純度の高い弦の響きが気持ちよかった。一番目立つ位置にいるコンマスの技量の高さもよく伝わってきた。
 1番フルートの巧さは何事であるかと思うほど。オーボエも4楽章のピッコロも印象に残りましたね。
 以上を要するに,文句なし。

● 重箱の隅をつつくようなことを申しあげれば,4楽章でファゴットとクラリネットのかみ合いがどうだったかと思わせる箇所があった。ネジの歯車のかみ合いが,0.2ミリほどずれたかというような。
 ミスではない。瑕疵というにはあたらない。
 第5回の演奏があまりに素晴らしかったので,その記憶をさらに自分で持ちあげてしまっているところがぼくの側にあるのだと思う。その地点から見てしまうっていうか。

● 合唱も堪能させてもらった。生で「第九」を聴くことの醍醐味のひとつは合唱にある。そのことにもとより異議はない。人数は今回くらいでいいんじゃないかと思う。
 ソプラノで相当に巧い人が二人,いませんでしたか。一方,先走りが身についてしまったかと見える人が男声陣の中にいて,そこが唯一,惜しまれる。
 しかし,それも許容範囲だったと思う。何といっても,それじゃおまえやってみろよと言われれば,ぼく的には完全にお手あげなわけだからね。

● というわけで,すこぶる満足度の高い「第九」を聴かせてもらった。いい気分になって酒場をハシゴして(終演は3時半だったんだけど,こんな時間帯からビールを飲ませるお店があるんですねぇ),だいぶ酔っぱらってしまった。

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