泊まったところが竹芝なので,銀座なら近い。ちょうどいいや,と思った。
● 銀座ブロッサムに行くには昭和通りを渡らなければならない。この大動脈で銀座は分断されている。っていうか,昭和通りの向こう側はもはや銀座ではない。
こっち側が華だとすれば,向こう側は鄙。下町的な雰囲気も漂いだす。
その代わり,地方からのお上りさん(たとえば,ぼく)や中国人観光客は絶えて見ることがなくなるから,スッキリと落ち着いた感じでもある。中国語が聞こえてこないとこんなに静かなのかと思う。
● 厄介なのは昭和通りを横切る方法だ。1丁目から歩いていくと,歩道橋を渡るしかない。登って降る。歩道橋というのは歩行者にとっては暴力的な装置で,だから歩道橋はそちこちにあるけれど,利用する人はほとんどいない。
だけど,それしかないんじゃ,それを使うしかない。こうした些細なことがこっち側と向こう側の行き来を阻害する。昭和通りが見えない巨大な壁になる。
● さて,演奏会。開演は午後2時。入場無料。
この楽団は「東京労災病院を練習拠点とする市民アンサンブル」ということ。練習場所が一ヶ所で,しかも間違いなく確保できるというのは,楽団にしたらありがたいに違いない。
っていうか,病院の職員が中心になって発足したのだろうね。それだけでは人数が足りないから,外にも呼びかけているのだろう。
団員は約30名とのこと。今回の演奏でも賛助出演者が過半を占めていたようだ。
● プログラムは次のとおり。奇をてらわないオーソドックスな陣容。指揮は室賀元一さん。
シベリウス フィンランディア
グリーク 「ペール・ギュント」第1組曲
シベリウス 交響曲第2番
● 東京には数えきれないほどのアマチュア・オーケストラがある。そのうえ,新しい楽団がどんどん生まれている。新陳代謝が激しい。中には惚れ惚れするほど上手な楽団がある。
この楽団はどうかといえば,そうしたセミプロ級のアマオケとは少々違う。音大崩れは少ないようだ。
● 何というのか,健全なアマチュアのオーケストラだという気がした。
自分たちが出遅れていることはよくわかっている。もっと早い時期に始めていなければ,届かない到達点があることも当然知っている。
けれども,それはそれだ。音楽の楽しみ方は技術的到達点の高さがすべてではない。
● という見極めがあって,そのうえで自分たちが到達できるところには到達しよう,可能ならば到達点の措定位置を引きあげよう,という真摯さのようなものを感じさせる。
以上を要するに,アマチュア・オーケストラのひとつの範例たり得る楽団だと思われた。
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