彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
● NIONフィルの5回目の定演。2013年8月の第2回,2015年2月の第4回に続いて,3回目の拝聴となる。
この楽団は浦和西高校管弦楽部のOB・OGを母体とするオーケストラで,ぼくは浦和西高とは何の関係もない部外者だ。にもかかわらず,5回のうち3回も聴きに来ているというのは,どういうわけなのか。
● まず,場所がいい。午後6時半からの開演の演奏会を東京でやられると,その日のうちに帰宅できないことになる。なぜなら,ぼくは栃木の在に居を構えているからだ。もうひとつ,貧乏性で新幹線に乗らないからだ。結果,最終の黒磯行きの電車に間に合わなくなる。
ところが,ここだとその電車に余裕で間に合う。ソワソワしないで最後まで聴いていられる。
● 開演が午後6時半というのもいい。昼間にひとつ聴いて,せっかく街場に出たんだからダブルヘッダーでもうひとつ聴いていくかと思うときに,合わせやすいということ。
ダブルヘッダーで聴くというのも,基本は貧乏性ゆえだろうけどね。
● もう一点,これが最も重要なところだけれど,この楽団には不思議な魅力がある。惹かれるものがある。その魅力はではどういうものか。そこが自分でもよくわからない。
結成してさほど経っていないこともあってか,団員の平均年齢がかなり若い。それが清新さにつながっていると思う。が,それだけではない。
● 何気に水準が高い。浦和西高は普通科しかない進学校のようで,管弦楽部はあくまで部活のはずだ。が,埼玉県内でも屈指の実力を誇っているようだ。入学前から個人レッスンをしていた生徒が多いのかもしれないし,音大に進む子もかなりの数いるのかもしれない。
あるいは,以外にそうでもないのかもしれないけれども,ともかくかなり巧い。そこに惹かれるというのもある。
でも,やはりそれだけではない。曰く言いがたい。
● 観客の多くは浦和西高の関係者のようだ。現役生もいるし,OB・OG,教員も。逆に,それら関係者を除いてしまうと,少々淋しいことになるかもしれない。
これだけの演奏をするんだから,もっと知られてもいいんじゃないかと思う。浦和西高が母体というのを前面に出しすぎているからだろうか。常連さん以外をはじいてしまう結果になっているのかなぁ。
● さて,本題。チケットは500円。指揮は平井洋行さん。彼も浦和西高校管弦楽部のOB。
演奏したのは,ハイドンの94番「驚愕」とベートーヴェンの3番「英雄」。
● この2曲を続けて聴くと,ベートーヴェンはイノベーターだったのだなとあらためて思う。
「驚愕」はひとつの曲を4つに分割しているのに対して,「英雄」は4つの曲を合わせてひとつにしている。したがって,曲想も4倍必要だし,楽章間のすりあわせや配置の落ちつかせ方など,雑用的な処理も増える。
ベートーヴェンに対しては,音楽に人生や哲学を持ちこんでしまったと言われることもあるけれども,以後の作曲家は(若干の例外はあるにしても)ベートーヴェンの敷いた路線を歩いてきた。
● 「驚愕」の由来とされるのは第2楽章の最初のフォルテだと,プログラムノートにも解説があるけれど,現代ではこれに驚く人はあまりいないだろう。
聴き手の感覚をハイドンの時代に巻き戻さなければならない。けれど,ほとんどの人にとってそれは不可能だ。
で,その感覚を変えたのもまた,ベートーヴェンなのだろう。
● 「英雄」はオーボエだなぁ。2楽章と3楽章が特にそうなんだけど,オーボエが主旋律を奏でることが多い。
オーボエの音色ってよく通るっていうか,遠くまで届く感じがする。そのオーボエが魅せてくれた。総じて,木管が素晴らしい。
● アンコールはない。スッキリ,アッサリと終了する。これも悪くないなと思う。
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