2017年3月14日火曜日

2017.03.12 室内合奏団ベルベット・ムジカ記念公演-珠玉のグラン・パルティータ

栃木県総合文化センター サブホール

● 「ベルベット・ムジカ」,初めて聞く名前だけれど,「栃木県内の管楽器奏者の有志で結成された室内合奏団」なのですね。今回は,クラリネット奏者の磯部周平さんを迎えての,お披露目の記念公演ということ。

● 開演は午後2時。チケットは2,000円(前売券)。曲目は次のとおり。
 R.シュトラウス 13管楽器のためのセレナーデ 変ホ長調
 ベートーヴェン 管楽8重奏のためのロンディーノ 変ホ長調
 磯部周平 きらきら星変奏曲Ⅲ
 モーツァルト 12の管楽器とコントラバスのためのセレナーデ 変ロ長調

● シュトラウスのこの曲が初演されたとき,シュトラウスは18歳。この分野には天才がキラ星のごとく,雲霞のごとく,存在している。
 科学者にも天才はあまたいるだろうし,ぼくなんぞが見ると,囲碁や将棋の世界には天才しかいないと映る。が,音楽の世界は天才の天才性が際だっているというか。

● セレナーデは小夜曲と訳される。が,13もの楽器を使う小夜曲って何? って感じがするね。これだけの楽器が入ると,華やかだし賑やかだ。
 小夜というイメージではなくなる。小夜という字面に引きずられすぎかなぁ。

● この合奏団の設立の中心になったのは神長秀明さんのようだ。メンバーも彼が指揮者や副指揮者を務める,鹿沼フィルや栃木フィルのメンバーが多い。
 作るは易く,継続は難し。たぶん,そういうものなのだ。このくらいの人数ならば,まとまっていけるのではないか。と,外部の人間は勝手な感想を持つんだよね。

● ベートーヴェン「管楽8重奏のためのロンディーノ 変ホ長調」はWoO 25となっている。つまり,ベートーヴェン自身は自身の作品としての番号は付けなかった。小品ゆえだろうか。
 ベートーヴェンの若い頃の作品。苦悩を通して歓喜に到れ的な重さというか,深さというか,そういうものはこの曲にはない。演奏時間が6分の曲だからということではない。“苦悩を通して歓喜に到れ”を6分で表現することは,たぶんできる。
 が,ベートーヴェンはそればかりの作曲家ではないってことなんでしょ。

● 磯部周平「きらきら星変奏曲Ⅲ」は面白かった。じつは,これが一番印象に残った。軽妙で。
 オーボエ,クラリネット,ファゴットの3人で演奏。木管三重奏とも言う。
 おそらく,今回の曲目は,吹く方も大変だろうけど,聴く側にもそれなりの鑑賞能力を求めるものなのだ。ので,なかなか付いていけないところがあった。でもって,この曲は箸休め的なというか,気分転換の役割を果たしてくれた。

● プログラム冊子の曲目紹介によれば,「きらきら星」の旋律はヨーロッパに古くから伝わるもので,モーツァルトの独創によるものではないらしい。
 「英語圏では「ABCの歌」,フランスでは「ああ,お母様」,ドイツでは「サンタクロースは明日来るよ!!」として広く歌われて」おり,「このメロディーを少し変えると「子狐コンコン」になり,「オーボエ四重奏曲の終楽章」になり,「イスラエル国家」になり,スメタナの「モルダウ」にも,サッチモの「この素晴らしき世界」にもなって,時代,国境を越えて,愛され続けています」ということ。
 なるほど。眼から鱗が3枚は落ちた。

● 最後は,モーツァルト。7つの楽章,演奏時間が50分を超える大曲。じつに「グラン・パルティータ」なんだけど,いよいよこれがセレナーデなのかという思いも。
 ぼく的には,セレナーデといえばアイネ・クライネ・ナハトムジークがその代表という思いこみがあって,なかなかその思いこみから自由になれない。

● モーツァルトが生きていた頃,こうした曲は貴族の館で演奏されたのだろう。聴くのも高等遊民というか,人の働きを掠めて喰うことが許されていた貴族たちだった。
 で,その貴族たちの,こと音楽に関する造詣の深さはただものではなかったはずだと思われる。自身で演奏もし,作曲もするというレベルのやつがかなりの数,いたに違いない。そうでなければ,この楽曲をホイホイと楽しめたはずがない。

● 最初の響きは,ベートーヴェン「管楽8重奏のためのロンディーノ」よりもベートーヴェン的というか。
 天才はそれぞれに天才で,他と交わるところはないと思う。だから,どうしてもモーツァルトとベートーヴェンの間に線を引きたくなるんだけど,そういう区分をしてしまうのはあまり高級な態度ではないようだ。すべては連続体と考えた方がいいのでしょう。

● アンコールは「魔法の笛」。日本では「魔笛」と呼ばれている。が,「魔笛」と言ってしまうとおどろおどろしさが勝って,あるいはユーモアが減じてしまって,この歌劇の内容を推測させるタイトルとしては上出来ではなくなるきらいがある。
 「魔法の笛」と直訳(?)した方がまだいくぶんいいと思うけど,“魔”を使わないですむ訳語がないかね。不思議な笛,っていうのも変だしねぇ。

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