● この演奏会を知ったのは,6月に聴いた上智大学管弦楽団の定演でチラシが配られたから。指揮者が同じ汐澤安彦さんだった縁でしょうね。
じつはOBOGの4文字を見逃していて,附属高校の生徒たちの演奏会だと思いこんでたんでした。入場時にパンフレットをもらってやっと気がついた。
● 開演は午後2時。チケットは2,000円。いくら音大の附属高校とはいえ,高校生の演奏で2,000円も取るのかと思ったんですよ。それでも聴くに値すると踏んでいたわけですが。
OB・OGだったのか。それなら納得。というか,安い。セコくて申しわけないのだが。
● 曲目は次のとおり。
ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より“第1幕への前奏曲”
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調
ドヴォルザーク 交響曲第8番 ト長調
● この日のために編成されたオーケストラ。N響をはじめプロのオーケストラに属している人も多いし,そこは音大附属高校卒の俊英なのだから,巧さはわかりやすく伝わってくる。
マイスタージンガー前奏曲で,あ,響きが違うわ,的な印象。これはお得だぞと,再びセコいことを思ったんでした。
● ラフマニノフのソリストは金子三勇士さん。東京音大が生んだ日本を代表するピアニストの一人。っていうか,帰国して東京音大の附属高校に編入したときには,すでに俊秀だったわけだが。
金子さんのピアノは2012年6月に一度聴いている。栃響の定演にソリストとして招かれたとき。そのときの印象はじつはあまり輪郭がはっきりしていない。体調が悪かったのかそれ以外の理由があったのかはよくわからないが。
しかし,今回はそんなこともなし。ホームだとかアウェイだとかは,彼ほどになると関係ないのかもしれないけれども,それでも今回はホームもホームで,楽しくやれたんですかねぇ。
● アンコールはリストの「ラ・カンパネラ」。栃響のときも同じ曲をアンコールに選んでいて,その記憶だけは鮮明だったりする。
金子さん,この曲に特別な思い入れがあるんだろうか。
● ドヴォルザークの8番。奏者全員のベクトルの向きが揃っているというか,乱れというものがまるでない。
このメンバーで練習できた時間は相当に短かったはずだと想像する。にもかかわらず,ここまでのレベルに持って来れたのは指揮者の功績なのか,コンマスのリーダーシップなのか。
● 特に第3楽章の舞曲の冒頭。スィーティーなメロディだなぁと思っていたんだけど,スィーティーなだけじゃなかったんだ。ドヴォルザークはここでも技巧を加えているんだねぇ。
CDでも気づかなかったんだが。自分は今まで何を聴いていたのかと思った。どうもいけない。いや,こういう発見があるから面白いのだとも言えるんだけど。
● 陳腐な表現で申しわけないけれども,幸せすぎる2時間を過ごさせてもらった。よくぞこの演奏会を拾ったものだと自分の選択をほめてやりたい。
練馬文化センター |
そういうおまえはどうなんだよと言われるとちょっと困るんだけどね。ま,自分を棚にあげたうえでの話だ。
● 今回は客席も東京音大附属高校の関係者や卒業生が多かったのだろう。客席に安心感があった。
私語やプログラム冊子をめくる音,プログラム冊子を落とす音,はなはだしい場合は飴玉の包装紙をはがす音が聞こえてしまうことがあるんだけれども,そういうことは一切なし。フライング拍手もなし。ろくろく聴いていなかったくせに,いの一番にブラボーを叫ぶバカもなし。これだけの演奏は,客席との合作でもあったろう。
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