宇都宮市文化会館 大ホール
● 昨年,デビューコンサートがあった。本格派オーケストラが栃木県のクラシック演奏界に加わったと思った。これは聴くでしょ,聴かなきゃダメでしょ。
と思って2回目の演奏会に出かけていきましたよ,と。
● 黄金週間と夏に行われる高校生の演奏会には興味を惹かれるものが多い。5月の宇都宮北高と作新学院の吹奏楽,夏は鹿沼高の管弦楽の演奏会がある。
が,今年はそれらをすべて聴き逃している。理由はいたって単純で,その時期に東京に遊びに行くようになったからだ。黄金週間に出かけるなんてバカがやることだと疑わなかったんだけれども,そのバカを自分がやるようになってしまった。
何とかしなければと思わぬでもない。が,何ともならない。なぜなら,催行主が奥様だからだ。したがう以外の選択肢はないのだ。
● けれども,この演奏会はそこから逃れて聴くことができた。自分のために喜ばしい。やっほいほい。
開演は午後2時。入場無料。これも前回と同じ。違ったのは,会場に昨年より空席が多かったことだ。これは理由がよくわからない。
しいて言うと,同じ時間帯に小ホールでも邦楽の魅力的なコンサートがあった。正直,どちらにしようかとぼくも少し迷った。小ホールはおそらく満席だったはずだ。そうしたことも影響しているのかも。
● 曲目は次のとおり。
デュカス 〈ペリ〉へのファンファーレ
デュカス 交響詩「魔法使いの弟子」
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
サン=サーンス 歌劇「サムソンとデリラ」より“バッカナール”
ハンス・ジマー パイレーツ オブ カリビアン
メンケン リトルマーメイド
ホーナー タイタニック メドレー
チャイコフスキー 荘厳序曲「1812年」
● 第1部では,デュカス,ラヴェル,サン=サーンスと,フランスを並べてきた。何らかの意図があったのかなかったのか。
「亡き王女のためのパヴァーヌ」が印象に残った。と言ってしまっては不正確。自分の好みに合致したというだけのことだ。
元々はピアノ曲。ラヴェル自身が管弦楽版を編曲した。パヴァーヌとは「16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの宮廷で普及していた舞踏のこと」。
● それだけ知っておいて,それ以外の予備知識は持たずに聴くのがよいと思う。ステージから届く調べにどこまで自分の気持ちを乗せることができるか。そこは聴き手の問題。
ホルンとオーボエのためにある曲かと思ってしまいそうになったが,もちろんそうではない。フルートが“幽玄”を奏でるし,弦のピチカートも聴きどころでしょ。
この楽団の演奏で「ボレロ」を聴ける機会があればと思った。
● 第2部。こういうのは観客サービスなのだと思っていた。クラシックばかりではお客さんが飽きてしまうだろう。だから,サンドイッチのように,間に食感が良くて楽しめるものを挟んであげよう。
そうじゃないのかもね。自分たちが楽しみたいからかも。楽しそうに演奏するからね。楽しそうに見えるように演技しているわけじゃないんだろうから。
● 最後はチャイコフスキー。ほぼ,完璧。
大きな事故がなかったというにとどまらない。気が入っている。楽譜を大過なく演奏に翻訳するという水準を超えて,ちゃんと自分たちを通しているというか。うまく言えないけれども,演奏が曲に負けていない。
音にキレがある。ということは雑味がない。ビールにたとえているようで申しわけないけれども,ともかくキレがある。
● どういう練習をすればここまで到達できるのか。知りたい人は多いだろう。
大学生なら学業を放擲して,部活にのめり込む人が昔もいたし,今もいるだろう。単位を取り損ねて留年する人もいるかもしれない。
が,高校生の場合,学業を放擲するというのはねぇ。あってもいいと思うけど,やる人はいないだろうし,やろうとしてもなかなかさせてもらえない仕組みになっている。
● 要するに,練習に費やせる時間は限られている。1日は24時間しかなくて,1年は365日しかないのだ。加えて,学業第一が貫徹するのだ(少なくとも建前はそうなっているはずだ)。
枠は限られている。その枠を余さず使っているんだろうか。放課後の他に,朝練,昼練と。
あるいは,宇女オケだけの卓越した練習メソッドがあるんだろうか(→そんなもの,あるわけないやねぇ)。
● アンコールで末尾を飾ったのは「情熱大陸」。昨年も同じ曲を最後に持ってきていたと記憶しているのだけど,昨年とは少し趣向を変えていたような。
オーケストラ,七変化。基本的な技術が高いから,こういう小技が決まる。
● 演奏とはまったく関係のない話なんだけど,プログラム冊子の“パート紹介”を見ていて,不思議に思ったことがあった。
宇女高にはたしか制服はなかったはずだ。ところが,制服っぽい格好をしている生徒が多いのだ。タータンチェックのスカートをはいている子がとても多い。それにネクタイを合わせていたり。まさか中学の制服をそのまま着ているわけではあるまいなと思うほど。
ひょっとして,制服を着たいという潜在願望があるんだろうか。あるいは,それが目下の流行なんだろうか。
僕も聴きにいきましたが、オーボエの人はすごくうまいと思いましたね。
返信削除また、ファゴットの人とちょっと交流があったのでファゴットに注目して聴いていたのですが、ファゴットもあちこちで効果的に入っていましたね。
弦もパーカッションも相当なものです。感覚というのか感性というのか,取り込むのが巧いという印象です。
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