● 新大久保で室内楽コンサート。新大久保と室内楽が結びつかない。おまえは東京の奥深さを知らないな,と言われるのかもしれないけどね。
その結びつかなさに惹かれて,出かけてみたわけなんですが。
● 会場の「スペースDo」は管楽器専門店「ダク」の地下。モグラになったような気分になるほどではないけれど,階段がやや狭いからか,地底の世界に降りていく的な感じ。これがスナックやバーやクラブだったら,ボッタクられるかと思っちゃうところだ。
最初から演奏用のホールとして作られたものか,倉庫か何かだったのを転用したのか,そこはわからないけれど,便利に使えそうだ。
● オーケストラ・パレッテがどういう楽団かというと,「若手アマチュアにより構成されるオーケストラで」「首都圏の様々な学生オーケストラの出身者で構成され」ているらしい。
出身者にとどまらず,現役生もいるようだ。平均年齢は20代半ばではないか。
● 開演は午後2時。入場無料。曲目は次のとおり。
ドヴォルザーク ピアノ五重奏曲第2番より 第1楽章
ボロディン 弦楽四重奏曲第2番より 第1楽章
ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第4番「街の歌」より 第3楽章
ネリベル Trio for Brass
サン=サーンス 七重奏曲 変ホ長調
エルガー 愛の挨拶
チャイコフスキー 「くるみ割り人形」より “花のワルツ”
トマジ 田園風コンセール
黒うさP 千本桜
スペースDoの入口 |
一生懸命さとやりたいことをやっている天真爛漫さ。若い頃の自分にはなかったもので(愚かなことに,やりたいことではないことを部活に選んでしまったのだ),何がなしの羨ましさを感じる。
● 気になったのは乳幼児を連れて来ていた人がけっこうな数いたことで,演奏中も赤ん坊の泣き声が遠慮なくホール内に響き渡った。演奏中に幼児が席を渡り歩く光景も見られた。
これでは演奏しづらかろうと奏者に同情した。のだが,これは折込済みなのかも。ファミリーコンサート的なものなのかもしれなかった。
● というのも,「愛の挨拶」はヴァイオリンではなくて,オタマトーンで演奏したからだ。あたかも,乳幼児をあやすような感じ。
そっか,これは乳幼児を連れて来てもかまわないコンサートなのだ,と,とりあえず思っておく。
● 「花のワルツ」は8本のチェロによる演奏。チェロってかなり高い音も出せる。出せるけれども,チェロにはやっぱり中低音のバリトンの響きが似合うと思う。イライラしているときとか,ウツウツとしているときには,チェロの音色が一番の癒やしになる。気持ちを落ち着かせる。
そのチェロのみによる「花のワルツ」。違和感はまったくない。そりゃそうだ。
● ベートーヴェンの「街の歌」。この曲にはベートーヴェンが作品番号を付しているわけだから,自分の作品として後世に残ってもよいと判断したのだろう。
ベートーヴェンといえば重厚で地響きがするようなイメージなんだけども,これは弾むように軽い。ベートーヴェンにもこういう曲があったんだねぇという発見。
● という感じで過ぎて,再び,新大久保の雑踏に身を置くと,またもや妙な感覚が襲ってきた。おれ,今,ドヴォルザークやボロディンを聴いたんだよな,あれは幻覚や幻聴ではなかったんだよな,という。
新大久保のこのアジア的景観は,日本人も基本アジア人なんだなとわからせてくれる。ごく狭いエリアではあるんだけれど,そのエリアにクラシック音楽を容れる場所があることの不思議。
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