● 3月の定演は聴けなかったので,1年ぶりの那須フィル。ハーモニーホールに来るのも久しぶりな感じ。開演は午後2時。チケットは500円。当日券を買って入場。
● 那須フィルは,市民オケの中では,たぶん全国でもトップクラスの恵まれた環境にある。田中祐子さんを音楽監督に迎えて,パートごとにトレーナーが付き,その費用はホール側が負担してくれるのだ。チケットも自分たちでモギらなくていい。ホールスタッフがやってくれる(この演奏会はホール側の主催行事になっている)。
しかも,練習でもこのハーモニーホールを使えるらしいのだ。他の市民オケからすれば垂涎の的ではあるまいか。
● が,それを手放しで喜んでいいのかどうかはまた別の問題であって,行政がどこまで関わるのがいいのか,関わらないのがいいのか。
金は出すが口は出さないというのはあり得ない(金は出さないくせに口だけ出す,ってのはありそうだけどね)。けっこう,微妙な問題がありそうな気はする。しかし,ホール側が那須フィルを大切なものとして捉えていることは間違いないように映る。
● 曲目は次のとおり。指揮は那須フィルの顔として定着して久しい田中祐子さん。
ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調「イタリア」より第1楽章
ロッシーニ 歌劇「セビリアの理髪師」より 序曲
ロッシーニ 歌劇「セビリアの理髪師」より「今の歌声は」
ヴェルディ 歌劇「運命の力」より 序曲
レスピーギ 交響詩「ローマの松」
今回はイタリアでまとめたようだ。ちなみに,アンコール曲もイタリアの作曲家,マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲。
団員の入れ替わりはあるようだけど,着実に進歩していると思える。
● 最も印象に残ったのは,ロッシーニ「セビリアの理髪師」序曲。次が,ヴェルディ「運命の力」序曲。「今の歌声は」では,アリアの部分を岩下美香さんのマリンバで。
けれども,上手いなと思ったのは,メンデルスゾーンのイタリア。少し弾けたようなイタリアの明るさ,開放感を感じることができた。
● と,上から目線で気楽に語っているけれども,団員たちはこの活動を続けるために,捨てているものがたくさんあるはずなのだ。家族サービスを捨てている人もいるだろうし,昇進や昇給を捨てている人もいるかもしれない。ひょっとしてひょっとすると,恋人を捨てた人もいるかも(いないか)。
プログラム冊子の館長あいさつで,「仕事を持ちながら参加している人も多く,常日頃熱心に取り組んでいる姿は感動的でもあります」と語っているけれども,決してリップサービスではあるまいと思う。
そのおかげで,地元でこうして生の管弦楽を聴けるわけだ。彼ら彼女らが捨てたものを,巡りめぐってぼくらが受け取っているという言い方もできるだろう。
● 同じ館長あいさつに,「(アンケート結果から)入場者を見ますと,関東1都6県のほか,福島県や遠く熊本県からも来場されています」とあるんだけど,これは正直,言われないとわからないことだ。
福島県はわかるんだよね。ここから百歩ほど北に歩けば福島県だから。熊本っていうのは何だろうね。わざわざそのために熊本から(たぶん,飛行機と新幹線を乗り継いで)那須まで来たってのは,いくら何でもないだろうからなぁ。栃木以外の関東からってのも意外だもん。
● 田中さんの指揮を見にきているんだろうか。たしかにね,地元で彼女の指揮ぶりを見れるぼくらはラッキーだ。
その田中さん,音楽監督の契約期間は3年だったと記憶する。が,すでに4年目に入っている。ホール側が七重の膝を八重に折ってお願いしたんだろうかな。
● すっかり那須フィルの広告塔。彼女の魅力は指揮にとどまらない。指揮もできるピン芸人というかね。つかみが上手だよね。間もいいし。落語のCDを聴いてたりするんだろうか。頭の回転もいいんでしょ。でなきゃ,指揮者は務まらない。
指揮以外でも身体のキレがいいから,鍛錬もしてるんだろうな。ナマるという言葉は彼女の辞書にはないようだ。
● 次は3月に定演。ブラームスの4番。となれば,聴かずばなるまい。
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