2020年12月31日木曜日

2020.12.27 宮田 大 チェロ・リサイタル

栃木県総合文化センター メインホール

● 栃木県総合文化センターのリニューアルオープン記念と銘打って,4月1日に,たぶん華やかに,開催される予定だったもの。
 チェロ・リサイタルなのにサブホールではなくメインホールを会場にしたのは,宮田大さんの集客力に期待したのだろうし,チケット料金を1,000円に設定したのも,セレモニーにふさわしくメインホールを満席にしたかったからだろう。
 そうした思惑をコロナが吹っ飛ばしてしまった。が,中止ではなく,ともかく年内に開催できることになったのは慶賀に耐えない。
 4月1日には知事挨拶を含めたセレモニーも予定されていたようなのだが,それは延期ではなく中止になった。けっこうなことだ。そういうラッキーもある。


● 延期が決まったあと,ホール側からチケット代金払戻しの連絡があった。余計かつ面倒な仕事ができてしまったなと同情申しあげるが,相手がコロナでは文句の持って行き場がない。
 が,払戻しを受けずに12月末までチケットをホールドすることを選んだ人が多かったのではないか。ぼくもその1人だ。そうするだけの価値があると考えたというより,これは当然そうすべきものと端から疑うことがなかった。

● 曲目も当初とは変更になった。次のとおり。
 サン=サーンス 白鳥
 ファリャ(小林幸太郎編) バレエ音楽「恋は魔術師」(チェロとピアノ編)
 ラフマニノフ チェロソナタ


 (アンコール)
 加羽沢美濃 デザートローズ
 ピアソラ オブリヴィオン
 加藤昌則 花詠み人


● 開演は午後2時。自由席。これは当初の設定がそうなっているので,そのまま引き継ぐしかなかったわけだろうが,座席数分,ほぼ完売しているのではないか。
 したがって,ぎっしりと席が埋まることに・・・・・・でもなく,それなりに空席があった。ここのところのコロナ感染者数の急増で,外出を控える人が増えているのだろう。
 このコロナ感染の拡大はそのほとんどが季節要因によるものかと思うが,外出を控えるという判断は少なくとも間違ってはいない。と,外出しまくりのぼくが言うのも変なものだが。


● 
1階の左翼席で聴いた。ここがお気に入り。視野の収まりがいい。
 ピアノは西尾真実さん。宮田大さんの実力と知名度は天下に隠れもないところだけれども,西尾さんのピアノもね,才能と若き日の鍛錬の継続が作ったもの。ちょっとやそっとではここまで来れない。
 というわけで,この2人はチェロとピアノでの栃木県の最終兵器。これでダメだったらもう仕方がない,諦めてよね,ということだ。


● 最も印象に残ったのは,メインのラフマニノフ「チェロソナタ」。こんなに分厚い曲だったのかという驚き。CDを聴いているときは気がつかなかった。
 だから音を紡ぎだしているところが見える生演奏を聴くべきだよ,視覚情報がいろんなことを教えてくれるよ,と言いたいのが半分。あとの半分は,聴く人が聴けば,CDだけでもその分厚さがわかるはずだよなぁということ。
 管弦楽曲に比べれば室内楽曲は生演奏とCDの差が少ないうえに,クラシック音楽愛好家の多くはCDを聴いてわかる人たちだろうから。自分の耳の悪さが恨めしいという,ちょっとした愚痴になってしまうわけだが。


● 加羽沢美濃「デザートローズ」は,当初はプログラムに組まれていた曲目。
 加羽沢美濃さんといえば,堺雅人と宮﨑あおいが夫婦役で主演した映画「ツレがうつになりまして」の音楽を担当した人。他にも色々と活躍しているのだけれども,ぼく的には「ツレがうつになりまして」の音楽担当者ということになっていて,佐藤直紀さんなんかと同じ並びにある。

● 普段はあまり音楽を聴かないけれども,今回は宮田大さんだからという理由で来ていた人もけっこういたかもしれない。そんな感じを受けた。
 本だって,普段は本を読まない人にも買わせるのでなければベストセラーにはならない(買っただけで読まない人がかなりいるはずだ。ベストセラーの読者数は購買者数をかなり下回っている)。
 それと同じように,普段は音楽を聴かないという人に来てもらわないと,メインホールをいっぱいにすることは難しいだろう。どの世界でもスターが待望されるものだが,その理由はそういうところにあるのだと思う。

● 昨日から川崎のホテルに泊まっている。今夜は横浜に移る。その途中で宇都宮に舞い戻ったのだが,この迂回移動はやらなければいけなかったなと思えるコンサートだったのはありがたいことだ。
 いやいや,このコンサートでは舞い戻らざるを得ない。1,000円くらい捨ててもいいや,という話ではない。

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