2020年12月17日木曜日

2020.12.05 第11回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 国立音楽大学・洗足学園音楽大学

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 1週間ぶりのミューザ川崎。音大フェスの3日目。
 今回の席はS席中のS席。演奏を「視る」のに絶好の位置にある。この席で聴くと,ホールも演奏の重要なパートであることが実感できる。
 コロナ感染対策のために,座席は半分しか指定していない。自分の隣は空いている。左右も前後も。主催者には辛いところだろうけれども,聴く側とすればこれもありがたい。カンファタブルの度合いがまるで違う。


● 国立音大はマーラーの1番。指揮は飯森範親さん。飯森さんがこの音大フェスに登場するのは,ぼくの知る限りでは今回が初めて。
 彼の指揮には過去に3回ほど接している。1回目は2010年の8月,那須野が原ハーモニーホールが年1回の定例開催にしていた東京交響楽団の演奏会
 2回目は同じ年の10月,山形交響楽団と宇都宮の総合文化センターにやってきて,ベト7を演奏した。「のだめ」の余韻が濃く残っていた時期ね。
 3回目は2011年12月の宇都宮市文化会館。宇都宮第九合唱団の第九だった。オーケストラは日フィル。


● さて,その飯森さんの指揮で演奏する国立音大のマーラー。指揮者の要求に答えられる力量を持ったオーケストラということでしょうね。ギリギリを突いていく渾身の演奏。緊迫感に満ちたマーラーになった。
 ギリギリを突いていくんだから,ノーミスですむわけはない。いくら音大生であっても,そんな神様のようなマネはできない。が,そのリスクを取って(という意識はないのかもしれないが)あえて踏みこんでいくという,その小気味良さがゾクゾクするほどの快感をもたらしてくれる。
 弦はもちろんだが,木管の響きが素晴らしい。とりわけ,フルートに注目した。


● こういう演奏を750円で聴いていいのかという素朴な疑問。ありがたすぎて涙が出そうなほどなのだが,自分の子どもよりも若い学生さんたちにここまでしてもらっていいんだろうか,っていう申しわけなさも感じてしまうんだよね。

● 洗足学園はエルガー。「コケイン」とエニグマ変奏曲。指揮は秋山和慶さん。
 御年79歳でこの端正な体型を保っているのが,まず凄い。さすがに指揮台に登るときには階段を使っているけれども,全体から感じるのは清々しさだ。どういうわけだ?
 指揮という行為に要求されるのはまず反射神経で,それを支える体力が必要。カラヤンやカルロス・クライバーをはじめ,指揮者にはスピード狂が多いらしいのも頷ける。
 フィジカルなトレーニングも必要なんでしょう。バーベルを使ったウエイトトレーニングはかえってマイナスかもしれないけれども,ストレッチを欠かしてしまっては指揮者としては自殺行為なのではないだろうか。と,素人ながら思っているのだが,79歳の秋山さんもそういうことをしているんだろうか。
 それとも,年を取れば取ったで,少ない動きで(たとえば,眉を動かすことだけで)多くのものを伝えることができるようになったりするものなのだろうか。

● 変奏曲というと自ずと繊細さを纏うことになるんだろうか。最初の主題がどこに残っているんだろうかという聴き方をすると,自分の耳の悪さに溜息をつくことになる。
 この曲を生で聴ける機会はそうそうないだろう。これが最初で最後になるかもしれない。そうした曲を聴けることもまた,この音大フェスティバルの功徳(?)のひとつに数えていいだろう。

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