2020年12月31日木曜日

2020.12.27 東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団 第44回定期演奏会

すみだトリフォニーホール 大ホール

● 今日はダブルヘッダー。宇都宮で宮田大さんのチェロを聴いてから,錦糸町にやってきた。すみだトリフォニーで東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団の定演。
 開演は19時。全席指定の事前申込制。A席が1,500円でB席が1,000円。これまでは入場無料でカンパ制だったが,このご時勢だから対面でカンパを募るのを避けた。
 ぼく的にはコロナが収束したあとも有料チケット制を維持してもらいたいと思っている。楽団の事務処理もその方が楽になる。申込者に無料チケットを郵送する手間とコストは省きたいところではないか。


すみだトリフォニーホール
● ぼくの奥さまは,只今現在,横浜のホテルにいらっしゃる。当初は彼女と晩餐会? の予定だった。ラウンジで酒を飲みつつ,見め麗しい料理を静々と口に運んでいるはずだった。
 のだが,この演奏会のチケットを買ってしまった。もちろん,詫びを入れてはいるんだけれど,してはいけないことをしてしまったかなぁとも思っていてね。薄い氷の上を沖に向かって歩かされているような気分,っていうかさ。彼女は1人でラウンジにいるはずだから。


● ともかく,指定された3階の右翼席に着座。かなり早めに来たので,プログラム冊子に目を通して,そこに書かれているコンテンツ(?)を脳内メモリにコピーする作業を始めた。
 この楽団は東大の冠を被ってはいるけれども,他大学の学生や社会人も加わっており,東大の現役生は少数派だ。高校生もいる。ヴァイオリンパートに日比谷高校の生徒が3人。名前から察するに男子が1人,女子が2人。
 本番のステージでその高校生を特定しようと試みたが,できなかった。演奏会用のドレスに身を包まれると,高校生女子はすでにれっきとした淑女であって,男の眼では見分けがつかない。いや,ぼくのような爺の老眼では見分けがつかない。


大ホール
● 昨年もそうだったが,奏者の中にはヴァイオリンに奥村愛さんがいて,ヴィオラに須田祥子さんがいて,オーボエに山本楓さんがいる。藝大や武蔵野音大の現役生もいる。
 ズルいんじゃないのと言いたくなるくらいのものだが,ズルいくらいの演奏を聴けるんだからラッキーというものだ。
 奥さまとの晩餐会を蹴ってでも聴きに来たくなる気持ちをわかっていただけると,ぼくとしてはとても嬉しい。特に,奥さまご本人にわかっていただければ,これ以上の幸せはない。

● 曲目はベートーヴェンの2番とブラームスの2番。指揮は原田幸一郎さん。
 今年はベートーヴェン生誕250年のベートーヴェン・イヤーだったが,年末の第九が消えた。正確に言えば,主にはプロオケが主催する第九がいくつか開催されてはいる。ただし,合唱団は16人とか20人とか,きわめて限定された数になっていて,市民参加型の第九は今年に限っては存立の余地がない(今年限りであってくれればいいのだが)。
 という中でのベートーヴェンの2番。細密画を見るような,精緻かつ正確なアンサンブル。
 しかし,機械的ではない。“気” が充満している。精緻でありながらエモーショナルでもある。プロの技とアマチュアの心意気が同居している,とでも言いますか。一粒で二度美味しいとはこういうことだ。


● 第九なしでもぼくの2020年は締まった感じ。もう何にも要らない。と思っているところへ,ブラームスの2番。
 ステージそのものが動いているような錯覚を覚える躍動感。コーダに向かって上り詰めて行き,ついに頂に到達すると,その頂きをも突き抜けるような勢いで終結する第4楽章。
 
いやいやいや,大変な演奏でしたよ,これは。賛助会員はこの演奏を録音したCDをもらえるんだっけな。ホールの空気まで録っているような録音ならば,これはお得でしょう。

● やってはいけないと言われているのに,ブラボーがかかった。確信犯なのだが,どこかに甘えがあるだろう。これならブラボーをかけても奏者も観客もホール側も許してくれるだろう,という。
 ブラボー禁止の是非は議論の余地がありすぎるほどにあると思うけれども,禁止とわかって客席にいるのだから,この種の振舞いは唾棄すべきものと,ぼくは思う。問答無用で摘みだすくらいでちょうどいい。

錦糸町駅前
● アンコールはブラームス「ハンガリー舞曲第2番」。
 この楽団の演奏を聴けばこういう気分になるだろうと思っている,その予想どおりの満ち足りた気分で,錦糸町から横須賀線に乗り入れる総武線の列車に乗りこんだ。
 錦糸町から横浜まで乗換なしで行けるのはありがたいのだが,果たして奥さまのご機嫌やいかに。

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