2021年4月30日金曜日

2021.04.29 東京藝術大學同声会栃木県支部演奏会 第4回『上野の森の響き』コンサート

栃木県総合文化センター サブホール

● この演奏会,昨年はコロナで中止になった。チケットを買っていた人に対して,事務局が確認の電話を入れたようだ(ぼくのところにも電話があったから)。払い戻しますか,それとも来年に繰り越しますか,と。当然,来年に繰り越すことにした。2月の末に今年のチケットが郵送されてきた。
 まったく余計な手間を発生させてしまって,申しわけなかった。昨年のチケット購入時点では,ここまで甚大な影響があるとはとても予想できなかった。

● 開演は13時30分。入場料は,1年前に払っているわけだが,2,500円。プログラムは次のとおり。
 山木検校 松風
  近藤有里子 長岡園美咲 山下紗綾(山田流箏曲)

 シューマン 愛の歌 ズライカの歌
 平井康三郎 うぬぼれ鏡
 ヘンデル オペラ「リナルド」より “私を泣かせてください”
  中山眞理子(ソプラノ) 細田秀一(ピアノ)

 ベートーヴェン 交響曲第7番 第1楽章(ピアノ連弾)
  新井啓泰 新井祐子(ピアノ)

 サン=サーンス オーボエとピアノのためのソナタ
  小林知永(オーボエ) 西村京一郎(ピアノ)

 ベルク 七つの初期の歌
  小高史子(ソプラノ) 大山秀子(ピアノ)

 ベートーヴェン ピアノソナタ第29番より 第1,第2楽章
  田中あかね(ピアノ)

● 会場はほぼ満席の状態。1席おきにはしていない。自由席で席数分のチケットを販売したようだ。これだけ入るとは正直,意外。
 最初の「松風」が目当てでやって来た人たちだろうかとも思ってみた。曲目情報を事前にネットで知る方法があるにはある。けれども,それをやってそうな人たちではなさげなんだが。
 「松風」が終わったあとに席を立った人が数人はいたけれど,大半は最後までいた。大入りの理由はよくわからない。

● 普通の大学,法学部とか文学部とか,最近だと国際ナントカ学部とか総合ナントカ学部とか,を卒業した人は,大学で学んだことなどすぐに錆びつかせる。使わないからだ。
 大学の専攻などにこだわっているようでは戦線から脱落するだろうから,錆びざるを得ないし,錆びてもいいわけだが,とにかくすぐに錆びつく。外語大学で英語を専攻したという人も,その英語を錆びつかせているかもしれない。そんなものだろう。
 大学の4年間はそれだけで完結していてかまわない。その前後とは切れていていい。卒業後の数十年とつながっているようではむしろ問題だ。卒後の数十年が若い頃のたかだか4年間に拘束されている,ということでもあるからだ。

● が,音大卒の場合はどうなのだろう。基本は同じだと思うのだけれども,こういう演奏会を聴いてみると,錆びつかせないで維持している(あるいは,さらに進歩させている)のかと思える。
 同声会支部の演奏会で演奏するのは,藝大卒業生の中でも一部なんだろうか。音楽を職業か準職業にしている人たちに限られる? 同声会に加入しているのも卒業生の一部にとどまっているんだろうかね。

● ともあれ。さすがは藝大ということ。最初の「松風」にしたって,これだけのものを単独で聴こうとしたら大変でしょうよ。大変っていうか,そもそもその機会を見つける術がないっていうかさ。それこそ,藝祭(藝大の学園祭)に行くよりしょうがない。
 ベートーヴェンの7番をピアノ連弾で聴くのも然りで,テレビかラジオをつけたらちょうどやっていたっていう偶然に恵まれることはあるかもしれないけれども,事前にどこで誰がやるという情報を取るのは,インターネットがある現代でも難しそうだ。ネットに告知しないのがずいぶんあるんじゃなかろうか。

● 小高さんの「七つの初期の歌」もグワッと来る。グワッと来てガシャッと掴んで,サーッと去っていく。
 特に驚いたのが,最後に登場した田中あかねさん。ベートーヴェンのピアノソナタ第29番。第1&2楽章のみ。全部やったら40分かかるから仕方がないんだけれども,全部聴きたいと切に思った。

● さて,これだけのコンテンツを盛った演奏会のチケットはいくらが適当でしょうか? 1万円くらいかな。
 が,1万円にしたんじゃ聴きに来る人がいなくなる。どんな場合でも妥協は必要だ。といって,2,500円は笑っちゃうほど安いと思った。

● しかし,残念なこともあった。ここからが書きづらいのだ。
 開会時刻がだんだん迫ってくるにつれて期待が高まってくる。どんな演奏を聴けるんだろうか。プログラム冊子には目を通した。こうでもあろうか,ああでもあろうか,と想像(妄想)する。それがマックスに達したときに演奏が始まるわけだ。
 ところが,そこでステージに出てきたのが爺さまで。同声会の会長が挨拶に出てきたわけだ。しかも,その挨拶が長い。気が滅入ってくる。
 一番困るのが,高まっていたテンションがストンと落ちてしまうことで,これを立て直すのは至難だ。不可能に近い。

● 演奏以外のものをステージに登場させてはいけない。演奏がすべてを語るのだから,言葉による補足は要らない。
 まして,年寄(しかも男)を出してはダメだろ。演奏会で絶対にやってはいけないことの筆頭がこれだ。年寄りの出番を作ってはいけない(彼が演奏するなら別)。今は昭和じゃないのだぞ。犬も歩けば爺婆にあたる令和の御代だぞ。
 終演後も同じ爺さま(つまり会長さん)が挨拶に立った。これはかまわない。終演後なら好きなだけやってもらっていい。

● もうひとつは観客で,こちらは婆たちだ。何人かで来ているのだが,休憩時間の15分間を黙って過ごすことができない。喋りっぱなしに喋る。
 このご時世,口はケツの穴より汚い排泄器官だと心得てもらわないと困る。排泄器官だからこそ,マスクで隠しているのだ。15分間,のべつ汚物を撒き散らすとはどういうことか。

● あなた方に感染させないために,若者たちは不自由を我慢しているのだ。若者たちにとっては,コロナなど風邪と同じかそれ以下だ。あなた方がいるから,彼らは不自由を強いられている。
 しかるに,あなた方は何をしている? 大勢で固まって出かけて,ところ構わず,のべつ幕なしに唾を飛ばす。たった15分間,ピタッと口を閉じる程度のことがなぜできない?
 というわけで,後半は汚物まみれの席で聴かなければならなかった。その害たるや,受動喫煙どころではない。ホールにも主催者にもまったく責任のないことであるが。

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